第八十二話 魔王の一言で無双できない
祝三万PV
「それでお前はいつ帰るんだ?」
「なんでそなたは妾をそんなに追い出したがるんじゃ?」
逆に質問で返されてしまった。
そんなこと言わなければ分からないのかと貴也は溜息を吐きながら。
「まずは世間体かなあ。魔王がここにいるのがわかると非常に外聞が悪い。まだ、ジルコニアとトパーズホーンの問題は解決したわけじゃないんだ。ディアマンテ王国が魔王側についたなんて話を持ち出されたらシャレにならない」
「そっ、それを言われると辛いな」
「それに魔王がいる間はオレが世話役をやらないといけない。オレにも別に仕事があるんだ。それで迷惑している人も……」
「どうしたのじゃ?」
貴也が言葉を詰まらせて呆然としているのを見て魔王が心配そうに語りかける。
それで我に返った貴也が
「もしかして、オレの仕事、誰も変わってくれてないとか言わないよな。魔王が帰った後に溜まった仕事がどっさりなんて……」
いかにもあり得そうな未来予想図に貴也は冷や汗を垂らす。
貴也のやっている仕事は研修の一環で別にやらなくても問題にならない仕事である。
が、それでも最低限はチェック報告しないといけない書類はあるのだ。
そして、部員がたった二名の部署であり、貴也がいないとなると上司が一人だけ。
しかも、現在はジルコニアの件でどこの部署も大忙しだ。
応援を呼ぶ余裕などないだろう。
貴也は頭を抱えてしまった。
やっぱり、こいつには早く帰って貰わないとならない。
「お前、邪魔。マジで帰ってくれ」
「貴様、いくらなんでも無礼であろうが!」
思わず本音が漏れてしまった。
魔王も流石に怒っている。
だけど、そんなこと気にしている場合ではない。
こういう時は逆ぎれだ。
「ふざけんな。お前が帰ればオレは自分の仕事が出来るんだ。それにお前の相手をしてて趣味の研究が止まっているんだぞ。どうしてくれるんだ!」
「貴様! 妾は一国の王じゃぞ。それに魔王だ。貴様の下らぬ仕事や研究と妾の相手、どちらが大切だと思っておるのじゃ!」
「そんなもの趣味に決まってんだろ」
はっきりと言い切る貴也に魔王は歯軋りしている。
「そんな風に無礼な態度をとって妾と、魔王と、敵対するつもりか? このような国、妾なら滅ぼすことも出来るのだぞ。それでも妾に逆らうのか!」
「知るか、オレは異世界人だからこの国が滅びようが関係ないんだよ。悔しかったら異世界に飛んでオレの故郷を滅ぼすんだな」
「グヌヌ。貴様! 本当に故郷を滅ぼしてやろうか」
「異世界にあるのにどうやって滅ぼすというのだ」
もう、売り言葉に買い言葉で貴也は自分で自分の言動の収拾がつかなくなっている。
そんな子供のケンカの様相をきたしていた時だった。
魔王がとんでもないことを言った。
「お主の住んでいたところは地球の日本じゃったな。良し、行って滅ぼしてくれよう」
「何言ってるんだ。こことは別の世界にあるんだぞ。どうやって行くんだ」
「貴様こそ、何を言っておるのじゃ。異世界に渡る手段などいくらでもあるぞ」
「ほえ?」
貴也は唖然として視線を優紀に向けた。
実は優紀はさっきからずっといたのだ。
だが、貴也達のバカなやり取りをみて相手にするのが面倒だったのか、ソファーに寝転がってマンガを読んでいた。
そんな優紀が顔を上げて
「あれ? 貴也は知らなかったの? 日本に帰る手段ならあるよ」
「なんで最初にそれを言わねえんだよ!」
「だって、聞かれなかったし。それに普通は知ってるんでしょ、そんなこと」
いきなり怒り出す貴也を見て目を点にしながら優紀が言っていた。
「日本に帰る方法ってそんなに有名な話なのか?」
貴也は呆然としながら魔王に確認を取る。
「少し調べれば誰でもわかることじゃぞ。それよりなんで貴様は知らないんだ。妾はてっきり帰る為の資金集めにここで執事をやっていると思ってたのじゃが」
呆れた様子で肩を竦める魔王。
しかし、貴也はそれどころではなかった。
「日本に帰れる? 本当に?」
「疑いたくなるのも分かるがのう。日本から来るものは多いのじゃ。しかも、この世界に来るものは決まって変な才能や思考を持つ者ばかり。そ奴らの努力のおかげで日本の位置が判明した。次元を渡るのは容易ではないが不可能ではないのじゃ。位置が分かればなんとかなる」
「マジですか?」
「マジじゃな」
今までのオレの苦労は何だったのだろう。
貴也はこの世界で骨を埋める気でいた。
だけど、ここに日本に帰るという選択肢が生まれたのだ。
その時だった。
貴也の頭にあることが思い浮かんだのは
「おい、魔王。オレの願いを聞いてくれると言ったよなあ」
「ああ、言ったぞ」
「お前に出来ることならなんでもいいんだな」
「まあ、妾に出来ることならな」
「なら……」
そこで貴也はゴクリと唾を飲み込む。
そして
「オレを日本に帰してください」
膝を付いて土下座していた。
自分でも意外だったが、貴也は本気で日本に帰りたかったようだ。
額を床に擦り付けるように懇願している。
魔王はそんな貴也の腕を取って頭を上げさした。
「そんなことをしなくても良い。頭を上げよ」
「じゃあ、日本に帰してくれるのか?」
貴也が縋るような目で魔王を見る。
そんな貴也を見て魔王はニヤリと笑った。
「だが、断る!」
そう断言する魔王を貴也は何を言っているのか分からないのか呆然と見ていた。
祝三万PV。
思ったより早く三万PVを迎えることが出来ました。
これも読者の皆様が読んでくれているからです。
これからもよろしくお願いします。
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最後にこれから更新は月金になります。
代わりと言っては何ですが、新しい話を始めます。
『職業、読書家が異世界を読み解く』
です。
とりあえず、金曜日に5話投稿し、その後、年内は1日おきに投稿する予定です。
こちらもよろしければ読んでください。
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