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第四十一話 初代公爵の大きすぎる遺産を見て無双できない。


「なんでこの世界にこんなものが……」


 貴也は驚愕に目を見開いていた。

 目は前にそびえ立つ物に釘付けである。

 この世界に来てまたお目にかかれるとは思ってなかった。


 貴也が恋い焦がれ、

 努力して、

 様々の人の手を借りて実現。

 そして、失った夢。


「なんで、ロボットがここに……」


 デザインは全く違う。

 全高は三、四メートル。

 体形は貴也が開発したロボットと違い足が短くズングリムックリで鈍重に見えた。

 だが、逆に重心が低い姿には力強さを感じる。

 胸部が開いており、そこには人が搭乗するスペースがある。

 目に付くところにレバーやペダルがないところを見ると、ロボットと言うよりパワードスーツと言う方がいいのかもしれない。

 自分の動きに合わせて動きをアシストしてくれるタイプなのだろうか。


 貴也はいつの間にかロボットの傍に近寄っていた。

 貴也はロボットに手を伸ばす。

 その時、肩を捕まれた


「貴也さん。どうしたんですか」


 アルの声にやっと我に返った。

 そして、アルに詰め寄る。


「なんなんだ。これは!」


「落ち着いてください。貴也さん」


「落ち着いていられるか。ロボットだぞ。ロボット」


 貴也は唾を飛ばして怒鳴っている。

 アルは迷惑そうに顔にかかった唾を拭った。


「これは初代が開発した『魔導アーマー』です」


 答えてくれたのはエドだった。


「魔導アーマー?」


「はい。魔力を動力として動く魔導兵器。初代が勇者との決戦のために開発したものです」


「これは動くのか」


「動きますが、動かせません」


 貴也は眉を寄せる。


「どういうことだ?」


 エドワードは不甲斐無さ気に視線を下げる。


「この兵器は初代が自分のために設計製作したもので、初代しか使えないのです」


「それは初代しか使えないようにセキュリティーがかかっているということか」


「いいえ。そう言うものは一切ありません。と言うより必要がないんです」


 いつの間にか貴也の口調は敬語ではなくなっていた。

 そんなことを気にしている余裕がなかったのだ。


 大きな力で踏みにじられた夢。

 その夢の残滓は貴也の胸の奥で燻っていたのだ。

 その炎がこの異世界で徐々に大きくなっている。

 ここでなら自由に夢を叶えられるのではないか。

 この世界には魔物がいる。

 強大な敵に自分が開発したロボットで立ち向かう。

 それは地球では絶対に叶えられない貴也の願いだったのかも知れない。


 貴也はエドに話の先を促した。

 エドの説明は続く。


「この『魔導アーマー』は魔力を動力としています。その消費魔力は莫大でとても一人で賄えるようなものではありません」


「エド様でも無理なんですか?」


「わたしもアルも起動は出来たのですが、制御が難しくひっくり返ってあわや大参事です」


 エドの話によるとCランクの魔力容量があれば何とか起動がさせることが出来るらしい。どれだけ燃費が悪いのだろう。

 そして、それ以上に制御が大変だそうだ。

 普通に歩こうにも足が上がり過ぎたり、上がらなかったりでとてもではないが動かせないらしい。

 ちなみに二人とも魔力制御はBランク。

 もしかしたら、魔力制御以外にもこつがあるのかもしれない。


 貴也は身を乗り出してコックピットの中を覗き込もうとして躊躇した。


「中を見ても大丈夫か?」


「はい。なんだったら、装甲を外しても問題ないですよ」


「いいのか」 


 貴也は目を輝かせていた。


「ええ、これは美術品ではなく実用品ですので。公爵家の方針としては初代の遺品は使えるものが現れればその者に引き渡すようにしています。必要がなくなったら回収しますがね。だから、興味のある人には自由に研究することも許可しています。まあ、元に戻せなくなったら困りますけど」


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと直すから」


 全然、大丈夫そうではなかったが、それに反論する者はいなかった。

 貴也は身を乗り出してまずはコックピット中を覗き込む。

 中には配線のようなものがむき出しになっていた。

 下を見ると足を入れる穴が開いており、奥にペダルが見える。


 あのペダルで推進力の調整でもするのだろうか?


 身体を出して外観を見るとふくらはぎの当たりに推進装置のようなものがある。

 これで何かを噴射して加速や姿勢制御をするのだろう。

 よく見ると、腕や背中、腰にも同じような装置が組み込まれている。


 貴也は顔をもう一度ツッコんだ。


 今度は腕の中を見る。

 腕の中にはレバーのようなものがあった。

 レバーには指が当たる位置に五つのボタンがあり、それ以外にもレバーの周りにはボタンがあるように見える。

 多分、色々なギミックを動かすために使用するのだろう。


 最後に、頭部を覗き込む。

 上がっている胸のカバーを下せばそのまま頭をスッポリと覆い隠せるようになっている。

 左右に冠を二つに割ったようなものがある。

 多分、これは頭に装着するものなんだろう。

 制御のために脳から直接思考を読み取るのか、それとも魔導アーマーの感覚を直接流し込むための物か確認しないとわからない。


 ちょっと見ただけで貴也はワクワクしてきた。

 どうやら、これを貴也が動かすことは難しそうだが、これを元に貴也が動かせる魔導アーマーを開発するのは不可能ではないかもしれない。


 いや、開発して見せる。


 貴也は時間を忘れて魔導アーマーと対峙していた。

 気付いた時にはアルは既におらず。

 エドも少し呆れている。

 貴也は頭を掻きながら照れ笑いを浮かべていた。


 その後、日が暮れ、夕食の時間になっても戻ってこないエドを迎えに戻ってきたアルに怒られるまで二人は魔導アーマーの前で語り合っていた。


 エドとは身分が違うが同じ技術者として上手くやっていけそうな気がしている。

 これが貴也の運命を変える出来事になるかはまだわからない。



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