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第二十話 行き倒れを拾うが無双できない。

「昨日は充実した一日だったなあ」


 あの後、家に帰った貴也はすぐにお昼寝。

 よっぽど眠りが深かったのかカインが帰ってくるまでグッスリだった。

 二時間ほどだったが、熟睡したおかげで完全復活である。


 妙に清々しかった。

 その所為か調子に乗った貴也はマリアの忠告を忘れて風呂場で水魔法。

 長時間遊んでいた為のぼせてしまった。

 

 決して魔力枯渇じゃないよ。


 こんなことがバレたらマリアに怒られてしまう。

 彼女にばれたらもう魔法を教えてもらえなくなってしまうじゃないか。

 本当に気を付けないと


 というわけで、貴也は昨日の休みを魔法三昧で楽しんだ。


 今日からまたルイズの店で戦わなくてはならない。

 よく厨房は戦場だと聞くが、あれは比喩ではなく本当に戦場だ。


 ああ、なんだか足が重い。

 このまま、帰ろうかな。

 体調が悪い。

 きっと病名は五月病だ。

 日本では深刻な病なんだよ。

 社会問題なんだよ。

 だから、もう一日、休日を。


 本音はもう一日、魔法で遊びたいだけなんだけどね。


 そんなバカなことを考えていた天罰なのか、目の前に大きな物体が落ちていた。


「おい。こんなところで寝てると風邪ひくぞ」


 物体は人だった。

 うん。どこからどう見ても人だね。

 なんか、面倒だ。

 今どきの都会人らしくここは気が付かないことにしよう。


「うん。返事はない。ただの屍のようだ。というわけで達者でな」


 貴也は手をひらひらその場を離れようとした。


「待って、お願いします。助けて」


「っち」


 貴也は舌打ちした。

 流石にクールな貴也でも助けを呼ぶ人を放っておくことはできない。


 っていうか、最初から助けるつもりだったし、

 困っている人を無視なんて出来るわけないじゃない。


 なんだよ。疑うなよ。


 貴也は天からの非難を華麗にスルーする。


「あのお。助けてください」


 うつ伏せのまま顔だけ挙げてこちらを伺う若者。

 歳は十代後半くらい。

 金髪碧眼の貴公子風。

 顔立ちに気品がありイケメンだ。

 よく見てみると着ている物も高級品ぽい。

 縫製がしっかりしているし生地がいい。


 あれ? こいつ助ける必要あるか? 

 そこはかと匂うイケメン臭がする。


 イケメンは貴也の敵だ。

 敵はすぐに排除した方がいい。


 貴也の殺気に気付いたのか、行き倒れの若者は怯える目を向けながら再度助けを求める。

 貴也は盛大に溜息を吐きながら。


「いったいどうしたんだ」


「気付いたら森の中にいて、モンスターに襲われたんです。命からがらこの村まで逃げ込んだんですが、飲まず食わずで」


 そうか、どこかで聞いたことのあるシュチュエーションだな。


 だが、そんなことはどうでもいい。

 飲まず食わずなら喉が渇いているに違いない。

 ここは覚えたての水魔法の出番だ。


 貴也は喜々として、コップを取り出し魔法で水を生み出していく。

 昨日気付いたのだが、呪文はイメージをしやすくする為にあるだけみたいだ。

 カインもマリアも無詠唱だったし、昨日風呂場で遊んでいたとき貴也にもできた。

 だから、ここで水を出すのは無詠唱である。


 無詠唱魔法ってなんかカッコイイ。


 貴也はコップに水を汲む。

 コップはエプロン裏のポケットから取り出した。

 ギャルソンのエプロンのポケットには何でも入っているのだ。


「そうか。ならとりあえず水を一杯」


 そういってコップを渡すと一気に飲み干した。

 貴也はさらに一杯。

 もう一杯。

 おまけに一杯。

 まだまだ一杯。

 もう一声で一杯と

 次々にコップに水を注いでいく。


「すみません。そんなに飲めません」


 次々に出てくるコップに水を注いでいく貴也に遠慮がちに声をかける行き倒れ。


 舌打ちをして、人の感謝を無にしやがってとコップの水を捨てに行く。

 バカみたいな量を出したことは完全に棚上げだ。


 というわけで水の入ったコップを持って道路脇にある側溝に。


 道路の真ん中に捨てたりはしませんよ。

 だって、この村は土がむき出しで舗装されてない。

 こんなところに水を撒いたら泥でグチャグチャになってしまう。

 社会人として他人に迷惑はかけられないのだ。


 っていうか、舗装くらいしろよ。

 趣味のために不便を選ぶなんて頭がおかしいんじゃないか?

 言わないけど。


 なんていっても領主は貴也の雇い主なんだから。

 長いものには極力巻かれる貴也だった。


「というわけで、少しは落ち着いたか? けど食い物は持ってないんだよなあ。店に連れてくわけにもいかないし、家に戻るか」


 貴也は少し考えてマリアとカインに連絡を取る。

 こちらの電話は調達済みだ。

 日本のスマホは使えないけど、よく似たものがあったのでそれを使っている。

 出費は痛かったが必需品だ。


 それにルイズの店やラインのとこで結構稼がせてもらっているし、

 ギルドから出ている支度金にはほとんど手を付けていなかった。

 だから、それほど苦にならない。


 まあ、そんなことは置いておいて、状況を説明すると快く了承を得られた。


 営業時間までには来てほしいと言われたがそこまで時間をかける気はない。

 カインはいつも通りだ。

 なんで見知らぬ人を家に上げれるか不思議だが、まあ、それがカインのカインたる所以だろう。


 まあ、いいや。気にしても仕方がない。


「行くぞ。とりあえず、うちで腹ごしらえだ。大したものはねえぞ」


「はい。ありがとうございます」


 そういうと、行き倒れはとっとと歩き出した。


 こいつ、本当は元気なんじゃねえか? 

 と疑いたくなったがとりあえずカインの家に戻る貴也だった。



=============================



「とりあえず、スープの残りがあったから、これとパンでも食っておけ」


 テーブルに行き倒れを座らせその前にスープとパンの入った籠を置く。

 すると、籠からパンを取り出して勢いよく食べ始めた。

 お腹が空いていたのは本当のようだ。


 それを見届けた貴也はキッチンに回って料理を始める。

 独り暮らしが長いし、ギャルソンや大学時代のバイト経験で料理はお手の物だ。

 時間はあまりかけられないので簡単にパスタにしておく。


 手早くベーコンと唐辛子と葉野菜を炒めて塩コショウで味を調えて、

 なんちゃってペペロンチーノの出来上がり。


 貴也の必殺手抜き料理だ。


 それを持って行き倒れの元へ。

 行き倒れは三人前はあったかと思われる量のパスタをペロリとたいらげた。


「ごちそうさまでした」


 手を合わせてそういう姿は日本人と同じだ。

 あれ? カインたちいただきますやごちそうさまってしたかなあ。

 と首を傾げる。


 しかし、まあそんなことは置いておこう。

 まずは行き倒れの話だ。


「お前、突然、森の中にいたっていったけど」


「ああ、はい。実は僕、異世界人なんです。名前は相場貴也。日本からきました。よろしくお願いします」


 相場貴也ね。

 なんだかきな臭くなってきた。

 はてさて、この怪しい行き倒れどうしてくれよう。


 明らかな偽物が現れて、貴也はそっとほくそ笑んでいた。

 この世界はどうにも貴也に日常生活を楽しませてくれないようだ。


 貴也が自由に無双するのはまだまだ先のことになりそうだった。




今回はちょっと短めです。

決して土日に遊んでしまい、ストックが切れてしまったわけではありません。

ごめんなさい

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