第百八十話 エネルギーキューブの秘密を知るが無双できない
「文献の調査に偏りがあった。君の相方は合理主義のようだな。秘密にしたいのなら満遍なく資料を取り寄せないと」
魔王は貴也の目をジッと見つめながらそう言った。
その視線を受けた貴也に震えが走る。
全てを見透かされているようだ。
それでも何とかポーカーフェイスを保つ。
脇にはびっしょりと汗を掻いている。
「バレては仕方ありませんね。エネルギーキューブはまだ誰も複製で来てません。それが出来たら公爵家に莫大な富を与えます。そのエネルギーの蓄積法を求めるのは当たり前じゃないですか?」
「いや、違うね。わたしが興味を持ったのは君が立てた仮説だよ」
「仮説など――」
「いや、君はある仮説を立てたはずだ」
被せる様に問いかける魔王。
威圧感がどんどん増していく。
どこに彼の逆鱗があるかわからないので迂闊な回答は出来ない。
彼は傍観者と言っていたが、それがどこまで信用できるか。
魔王がテンペストに連なるものと知った、今、貴也くらい殺すくらいのことに躊躇するとは思えない。
テンペストはそうやって今までこの世界の秩序を守ってきたのだから。
だが
「魔力」
ボソリと魔王が呟く。
貴也はドキリとして反応してしまった。
沈黙が走る。
ピリピリと張り詰めた空気が場を支配した。
どれくらい時が経過したのかはわからない。
一瞬だったのか、永遠だったのか。
ただ、それを破ったのは魔王だった。
「ふう。そんな緊張しないでもいい。別に取って食ったりせぬ。秘密を暴いたとしても君にはどうやっても製造できないからな」
「それはどういうことです?」
訝しんで貴也は魔王に問い返す。
すると魔王はニヤリと笑って
「あれを作ったのは我だからだ。そして、我以外にあれを作り出すことは出来ない」
衝撃発言に貴也は言葉を失った。