第百七十九話 取って置きの策がバレていて無双できない
「やはり君はこの世界の為に殺して置いた方が良いのかもしれないなあ」
魔王が不吉なことを言っている。
不安になった貴也が問い返すものの魔王は笑っているだけで返事をしてくれない。
多分、冗談なのだろうが、魔王の真意など貴也に読めるものではなかった。
と言う訳で話を逸らす。
「って言ってもあのプレートの製造方法が全く分からないからね。全くの机上の空論ですよ。ね、魔王様」
とりあえず、魔王に媚びる様に上目遣いを向ける。
だが、男の貴也がやることなど魔王に通用するわけない。
というかスライムなんだから性別があるのだろうか?
そんなことを考えていると
「君の策はそれだけではないのだろう?」
ふふと含み笑いを浮かべながらこちらに探りを入れてくる。
貴也は話題が逸れたことを少し喜びながらも手の内を次々に剥ぎ取られていくことに頭が痛くなってきた。
流石は年の功という奴だろう。
と言っても貴也には魔王と敵対する意思はないので別に隠すつもりはない。
身体的にはもちろん敵わないし、今のやり取りで勝ち目がありそうだった頭脳戦も完敗だと実感したのだ。
どうせならすべて曝け出して協力を求めた方が良いだろう。
だけど
「何か怪しいことをしてましたか?」
惚けた口調で言ってみた。
内心、オレ何言ってるんだ! と後悔しながらも口から出てしまったものは仕方がない。
存外、負けず嫌いのところ出てしまったのかもしれない。
そんな自覚なかったんだけど……
だが、魔王は機嫌を損ねることなく逆に楽しそうにそこ問いに答えてくれる。
「トパーズホーンとの決闘を見て君に興味を覚えてね。それなり調べさせて貰ったんだ。そしたら君がエネルギーキューブに興味を持っていることを知ってね」
ニヤリと笑う魔王。
貴也は何のことやらと無表情を保っていたが内心、冷や汗を掻いていた。
「エネルギーキューブはとんでもない物ですよ。もしわたしの世界に持って帰れたら産業革命以来の大変革が起こる。エンジニアとしてそう言う物に興味を持つのは当然じゃないですか?」
苦し言い訳だとは思っていてもそれらしいことを言って誤魔化して置く。
だけど、やはり魔王には通用しない。
笑顔のまま聞いてくる。
目の奥が笑っていないのが非常に怖い。
「いや、君の仮説は面白い物だったよ。確か、エネルギーキューブがどうやってエネルギーを溜めているかについてだったか?」
「どこでそれを!」
貴也は驚愕して目を見開いていた。




