第百七十二話 魔王の正体をしって無双できない
「眷属ということはもしかしてスラリンは魔王様の使い魔なのですか?」
「敬語は不要だ。それよりその者はスラリンというのか?」
「キュイ!」
「そうか、そうか。いい名をつけて貰ったな」
貴也が答える前にスラリンが元気よく鳴いていた。
その反応に魔王はにこやかに笑っている。
その姿は孫を可愛がるおじいちゃんにしか見えない。
どうも調子がくるってしまう。
魔王との対面にどれだけ緊張していたと思っているのだ。
スラリンの所為で色々台無しだった。
「おお、すまんな。これ程成長した個体は滅多に見ないのでツイツイ綻んでしまった。いまはこ奴はお前の物だったな。済まない。返すぞ」
そう言って魔王はスラリンを貴也に渡す。
スラリンは少し名残惜しそうだったが、黙って貴也の頭に飛び移った。
人の頭に気軽に乗るなと言いたかったが魔王の手前口を噤む。
だが、そんなことはどうでも良いのだ。
これだけの間にとんでもない事実がいくつも発覚した。
そのことに、若干、頭を痛めながらも貴也は口を開く。
「スラリンは魔王様が生み出したのですか?」
「敬語じゃなくてもいいのだが、まあ、そうだ。この魔王領にいるスライムは全て我が力で生み出した」
「…………」
それを聞いて一瞬息を飲む。
そして、その先を聞くか聞かぬか躊躇したが結局は聞くことにした。
「それではこのスラリンがどのような種族かも知っているわけですね」
「……それはどういう意味かな?」
魔王様の目が細まった。
一瞬で場の雰囲気が変わった。
ピシッと空気が凍り付く。
貴也は声が震えるのを懸命に抑える。
「ミュウテーションスライムという種族にご記憶はございますか?」
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