第百七十話 魔王が登場するが無双できない
「えっと、この後どうすればいいんだ?」
貴也達は門の前に立っていた。
魔王の城なの魔族や魔物の門衛が立っているかと思ったがそんなことはない。
貴也がそのことを訝しんでいると
「え? 門が勝手に」
そう。門が勝手に開いたのだ。
中世ヨーロッパのお城の門が自動ドアになっているとは思わないので驚いていると優紀がクスクスと笑っている。
こいつは何度か着たことがあるので知っていたのだろう。
イラッと来たので殴っておく。
そんな二人のやり取りをアスカは苦笑を浮かべて見守っていた。
門が開きその奥へと入って行く。
中にはしっかりと灯りがあり、かなり明るい。
魔王の城と言うのでおどろおどろしい雰囲気を想像していたが全く違った。
それどころか清掃が行き届いていて清々しいくらいである。
ただ
「それにしても誰もいないなあ」
門を潜り城に入って来たがここにも人はいない。
最古の魔王というくらいだから部下の魔族が大勢いると思っていたが、そんなことはなかった。
それどころか生き物の気配さえしない。
魔族どころか魔物も虫すらいないみたいだ。
そんな風に不思議がっていると
「この城にいるのは魔王だけです。なんでも使い魔のような魔物がいるらしいですが客人の前には姿を現さないそうです」
アスカが親切に説明してくれた。
アスカも一度ここには着たことがあるみたいで不気味に思って確認したらしい。
だが、貴也はそんな事より
「これを使い魔が」
貴也は周りを見て感心していた。
これでも執事の端くれである。
掃除については一過言あるつもりだ。
だが、そんな貴也の目から見ても素晴らしいとしか言えない。
この広い城に文字通り埃一つないのだ。
一体どんな掃除の仕方をしているのだろうとかなり気になる。
そんな時だった。
「ようこそ、我が城へ。相場貴也君、君を歓迎しよう」
高らかな声がエントランスに響く。
見上げると吹き抜けになっている二階部分に壮年の紳士が両手を広げて立っている。
「あれが魔王か」
貴也は誰にも聞こえない程の声で呟く。
柔和な笑みを浮かべる魔王を見て貴也は緊張するのだった。
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