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第百六十三話 魔王に会いに行こうと思うが無双できない


「と言う訳で魔王ルビーアイに会いに行くことになったのだが。アスカ。体調が悪いなら無理をする必要はないんだぞ」


 貴也は気遣うように上目遣いで問いかける。

 本音を言えば来るなと思っているのだが、そんな貴也の思惑などもちろん通じない。

 アスカは満面の笑みで


「もちろん、同行させてもらうわ。わたしもルビーアイ殿にはお目にかかりたかったの」


 貴也はガクリと肩を落とす。

 こいつがドヤ顔で答えるときは絶対にマズい。

 聖騎士と魔王の謁見なんてどう考えても無事で済むとは思えない。


 それにこいつには前科があるしな。

 まあ、あのバカは例外と言えば例外なのだが……


 例外と思っていいよね?


 貴也は思考の中で自分の考えに縋ってみる。

 そして、大きな溜め息を吐きながら


「それじゃあ、一緒に行くのは良いけど、騒動は起こさないようにしてくれよ?」


「騒動って、あなたはわたしのことををなんだと思ってるのよ。ルビーアイ殿は偉大な方だと聞いているわ。いくら魔王と言っても敬意くらい払わして貰うよ」


 不満そうに眉根を寄せているアスカを見ても貴也はまだ信用が出来なかった。


「だって、アスカには前科があるだろう。魔王トパーズホーンを討伐しようとしたこと、忘れたとは言わせないぞ」


 そう言うとアスカはバツが悪そうに頬を掻く。


「まあ、あれは奴の品性が下劣で到底許されざる存在だっただけ。わたしはトパーズホーン個人を殺そうとしただけで魔王という存在を否定したわけではないわよ」


「そうなの?」


 貴也は意外なセリフに小首を傾げる。

 そう言えば、あのバカが夜這いをかける前までは友好的だったと聞いたな。

 でも、教会って魔王や魔族を認めてないのでは?


 そんなことを考えているとアスカが嘆息して


「言いたいことはわかる。一応教義では魔族を認めていないわ。だけど、それは曲解なの。元々魔族なんて存在はない。いまは失われてしまったけど魔族は別の名で呼ばれていた亜人の一種族と言われているわ」


「そうなの?」


「ええ、記録は既に抹消されているので高齢のエルフやそれこそ龍や魔王達じゃないと覚えていないだろうけど。彼等は身体能力や魔力に優れた亜人なの。聖典によると魔族とは元々、神々に逆らい魔に落ちた背教者の一族のことを指すのよ」


「へえ」


 新たな真実に貴也は感心する。

 そんな会話をしている内に気が抜けたのか本音がポロリとこぼれてしまった。


「だけど、気に入らないことがあればお前は魔王に剣を向けるんだろ?」


「あなたはわたしのことをどんな風に思ってるのよ。一度じっくり聞かせてもらわないとね」


 ということで昏々と説教をされてしまった。

 なんだか納得がいかないが、こちらの言い分もちょっと酷かった気がする。

 だから、ここは黙って聞いておこう。






 そんなことを思ったときもありました。


 なんで聖職者や偉い人の話は長いんだろう。

 もう、いい加減、嫌になって来たので話題を変えることにした。


「そう言えば優紀は?」

 

 あからさまに話を逸らされたことに眉根を寄せていたが、アスカは素直に答えてくれた。


「ああ、勇者殿なら魔王に会えると言って剣を持って演習場の方に行ったわ。わたしも同行したかったのだけど、そこまでは体調が戻っているわけではないから遠慮したの」


「って、お前等、全然わかってないよな! 口ではあんなこと言っておいて、お前も戦う気満々じゃねえか!」


 とりあえず、大きな声で突っ込んでいく。

 本当に脳筋は嫌だ。

 言い過ぎたかなあ、と少し反省してしまったのが恥ずかしくなる。


 貴也はその後、一通りアスカを罵って目から光が消えかけのを確認してから席を立つ。

 どんな風に責めた立てたかは倫理上の都合で割愛させてもらう。


 ただ、「やっぱり、貴也は怖い」とアスカが涙目で震えていたことだけ伝えておこう。


「はあ、もう一人のバカをどうにかしないと」


 こちらのバカとは年季が違うだけにこうは簡単にいかないだろう。

 うんざりしながらも貴也は演習場に向うのだった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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