第百五十三話 もう驚くことが多すぎて無双できない
「白様はこの世界のどこかにいる」
テンペストの言葉に貴也は息を飲んでいた。
しばらく沈黙が続き貴也が確認を取る。
「白様はどこにいるんだ?」
「それはわからない」
「わからない?」
「そうだ。我らがこうして存在しているのだから、白様の御霊は消滅していない。この世界に顕現なされれば我らが感じられないはずなどないのに」
テンペストの言葉には苦渋が見える。
その様子から彼らが主をどれだけ求めているのかが感じられた。
「となるとまだ復活されていないか。それとも何者かに封印されているか」
貴也の言葉に一瞬、テンペストの怒気が高まる。
だが、直ぐにそれは収まった。
テンペストは忌々しい表情を隠そうとせず語りだす。
「我等もそれは考えた。だが、どうしても腑に落ちないのだ。白様は破壊神様の分身体。七つに分けられたとは言え、普通の神以上の力を持つ。そのような方を封印できるの者がこの世界に存在するだろうか」
「同じ存在である龍なら可能なのではないか」
その貴也の疑問にテンペストは失笑で答えた。
「あのトカゲに成り下がった者にそれほどの力は既にない。この世界の者として封じられた影響で奴らは従来の100分の1ほどの力しか行使できない。そのようなものがまだ神の分身体である白様を封じられるとはとても思えぬ」
「ちょっと待て! あの龍の力がかつての100分の1ほどしかないと?」
「そうだ。よく考えてみろ。もし奴らがかつての力を持っていたら、邪神本体ならいざ知らず、その欠片程度にてこずると思うか? 大魔王程度なら我等でさえ相手ができる。超魔王にだって苦戦はしても負けることはないだろう」
「そんなに……」
あまりの衝撃に貴也は声も出せなかった。
テンペストは話を続ける。
「当然だ。神の力というのはそれだけ隔絶したものだ。我等も受肉しているがそれは仮初めの物。本質はこの世ならざるもので簡単に表現すれば意志あるエネルギー体のようなものだ。だから物質ではできないことも可能となる。だが、奴らは違う。奴らはこの世界に封じられ、完全にこの世界の者として転生した。もう、この世界の理からは逃れられない。だから、神が使う理の外の力はもう使うことは出来ないのだ」
次々に判明する衝撃の事実に貴也の頭は思考を停止し始めている。
だが、一つ疑問が
だったら、なぜその『白様』は復活していないのか。
彼の話が本当なら既に復活していてもおかしくない。
龍にはすでに何度も転生している者がいる。
力が大きければそれに見合った時間がかかるのだろうか?
それとも
「白様の意思で復活しないのでは?」
「我等を置いてそのようなわけないだろう!」
貴也の呟きはどうやら確信を突いていたようだ。
テンペストの声は怒りに満ちていたが、そこには先程までの覇気がない。
いままで考える時間は腐るほどあったのだ。
貴也がこの時間で考え付いた結論になど、とうに達しているだろう。
貴也は黙ってテンペストの顔を伺っていた。
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