第百五十一話 真実を聞くが無双できない
先週は投稿できずに申し訳ありませんでした。
「すまなかったな」
貴也は振り向きもせず声を掛ける。
目はアスカと優紀から離さない。
優紀はアスカに回復魔法を使ったためか気絶するように眠っていた。
その効果があったのかアスカの容態は安定している。
どうやら血の効果があったようだ。
二人のやすらかな寝息を聞いてほっとしていた。
「構わんよ。いちいちもめるのはこちらとしても本意ではない」
そう言いながら陰に隠れていたテンペストが出てきた。
その段になってやっと貴也は振り向く。
「だが、そのおかげですんなり事が運んだのは事実だ。礼を言わせてもらう」
貴也の言葉にテンペストは無表情で答える。
だが、そこにテレがあるように貴也は感じた。
能面のような顔をして一切感情を持っていないように見えるが、内心は違うのではないかと貴也は思い出している。
きっと、人と接する機会がないのでその表現方法がわかってないのだろう。
まあ、超越者として人と感性が違うということもあるのだろうが……
貴也はそんなことを考えていたが、それを振り払って話題を変える。
「それでお前はこの後どうするんだ?」
「我の役目は終わった。もうここには用がない」
そう言い踵を返そうとするテンペストを貴也は慌てて引き留める。
「そうだった。お前の役目とは一体何なんだ」
「我等の役目はこの世を破滅に導くものを消滅させること。我は特に病に関して対応している」
「我等ということはお前のような存在が何体もいるのか」
「しかり」
「……」
沈黙が走る。
続きを待つがテンペストは何も語らなかった。
これはしゃべる気が無いのかどうか判断に迷うところだ。
余計なことを言って彼を怒らすのは得策ではない。
だが、彼から得られる情報はこの先、重要になってくる気がする。
貴也は逡巡したが、思い切って切り込んでみた。
「お前たちはいったい何者なんだ」
「この世を破滅に導くものを消滅させる者」
「だから、どういう存在なんだ?」
「この世を破滅に導くものを消滅させる者だ」
ドヤ顔(無表情だが)で答えるテンペストに貴也は頭を抱えたくなった。
なんか頭の悪い機械と話しているようだ。
決まったことしか答えてくれない。
そうか。
人と接触する機会がないからこちらの意図を考えて答えてくれるなんて考えがないんだろう。
ということはこちらが詳細に質問しないと回答は得られないということか?
なんか頭が痛くなってきた。
だが、それくらいで諦めてはいられない。
どういう訳か、こちらの質問に答えてくれる気があるようだ。
こんなチャンスがもう巡ってくるとは限らない。
貴也は次の質問を考えた。
そして
「お前は誰かにその役目を与えられたのか。もしそうなら、その役目を与えたものは何者なんだ?」
「我等は『白様』より役目を与えられた」
白様?
聞いたことのないワードだ。
「白様というのはいったい何者なんだ」
貴也が頭に疑問符を浮かべながら聞くとテンペストがとんでもないことを言いだした。
「白様は創造主様よりこの世界の管理を任され神の分身体だ」
「この世界の管理を任された神……破壊神か?」
「我等が主神を破壊神などと呼ばれるのは憤懣ものだが、そう認知されているので仕方がない。お前の言うその破壊神が我が主の母体だ」
少し不満そうだったがテンペストはどこか誇らしげに、そして厳かに宣言する。
それを聞いて貴也は思わず一言。
「じゃあ、消滅させられた神の分身体。失われた竜の一体なのか?」
「あのようなトカゲに成り下がった卑怯者たちと一緒にするな!」
テンペストの初めての大きな感情の発露は怒りだった。
物理的な圧迫感を伴うほどの激情に貴也は瞬き一つどころか気絶することすら許されなかった。
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