第百四十二話 亜種が現れて無双できない
そこにはデッドリーポイズンスパイダーの通常種と同じようなの魔物がいた。
姿かたちは通常種とほぼ同じだ。
ただ
「色が違う。こいつが亜種か?」
普通のデッドリーポイズンスパイダーとは違って紫に白い斑点を持っている。
タダ、目だけは通常種と一緒で赤く爛々と輝かせていた。
殺気に近い敵意がこちらに伝わってくる。
「キシャア!」
奴は牙を蠢かせながらこちらを警戒するように鳴いている。
貴也は剣を抜き、身構える。
スラリンも戦闘態勢に入ったみたいでいつでも飛び出せるように身を縮めている。
「スラリン。奴を攻撃してはダメだ。アスカを連れて下がっていてくれ」
貴也がそう言うとスラリンは不満そうに声を上げた。
だが、貴也は取り合わない。
視線を奴から逸らすことなくもう一度スラリンに命令する。
スラリンは納得してなかったものの貴也の指示に従ってくれた。
貴也はそのことにホッと息を吐く。
もし、予想通り感染症ならスラリンもその病気がうつるかもしれない。
通常、人間の病が他の動物に感染することは少ない。
だが、それも絶対ではないのだ。
まあ、スライムみたいな謎生物が病気にかかるなんて想像できないが注意しておくべきだろう。
じゃあ、貴也はどうなのだと言われるかもしれないが、デッドリ―ポイズンスパイダーより毒性の低い病が利くわけがない。
いまはそう信じているというか、思い込むことにした。
その時だった。
「キシャあああああああ!」
亜種が牙を剥き出しにして飛び込んできた。
貴也は十分に距離を取りながらその攻撃をかわす。
「って言うか、遅っ!」
亜種の動きは通常種のものとほとんど変わらなかったが、ナイト種との攻防で慣れた目には非常に遅く感じていた。
ただ、そんなものは奴には関係ない。
知能だけは高いようでバカにされたと思ったのか激昂している。
「キシャあああああ」
牙から涎のような物を飛ばしながら狂ったように突貫してくる。
だが、そんな攻撃が貴也に効くわけがない。
貴也は余裕をもって交わしながら考えていた。
これからどうする?
こいつを殺すか?
亜種の動きを見ればそれは容易い事だと思う。
だが、こいつが病原菌の発生源なのは間違いないだろう。
ならこいつは殺さず、どこか研究機関に持っていった方が良いのか?
それとも少しでも感染拡大を防ぐためにこいつはこの場で殺しておく方が良いのか?
貴也はなかなか決断できないでいた。
流石の貴也にも医学の知識はネットや本で読んだ程度だ。
そんな判断を下すことなど出来ない。
だから
貴也は一刀のもとに奴を切り裂いた。
亜種はあっけなく絶命したのだった。
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