第百四十話 事件は終わってないので無双できない
「キュキュキュ~!」
スラリンの鳴き声が響いていた。
どうやら貴也が自分だけ戦闘を終わらせて休憩しているのが気に入らないらしい。
貴也は苦笑しながら、プチスラリンを掴んでスラリンめがけて投げつける。
ベチャリとぶつかるとプチスラリンとスラリンは融合していった。
本当に奇妙な生物だ。
スラリンはプチスラリンと融合したことにより、その素早さがさらに上がった。
どうやら分裂すると大きさだけでなく能力にも影響するらしい。
いままでナイト種相手に逃げに徹していたのは魔力の大部分をプチスラリンに分けていたからなのかもしれない。
と言う訳で完全体になったスラリンは……
「えっと圧倒するんじゃないの?」
「キュキュ~!」
そんなにいきなり強くなれるわけではないようだ。
二体の仲間がやられ、自分の主であるクイーンは瀕死という状況に怒り狂った最後の一体は暴れくるっている。
その攻撃をスラリンは何とか躱している。
そこにいつもの余裕はなさそうだ。
貴也はその状況に重い腰を上げた。
結果は
理性を失ってただ暴れているだけの魔物など物の相手ではない。
貴也が近づくとこちらに意識が向き、攻撃を仕掛けてくる。
貴也は爪の射程ギリギリでつかず離れずにいるとナイト種からスラリンへの気が逸れた。
スラリンがその隙を逃すはずがない。
小さい身体をフル活用し死角に入ると一気にナイト種の腹を貫いた。
見事な一撃でナイト種に致命傷を与える。
その後もしばらくは無謀な攻撃を繰り出していたナイト種もすぐに力尽きた。
残るはクイーンだったが……
「そっちも片付いたみたいね」
すっきりとした顔をした優紀がその場に立っていた。
若干、髪が乱れ、汗を掻いているようだが、傷どころか返り血一つ浴びていない。
余裕の姿だ。
まあ、クイーンの攻撃や体液を浴びればそれだけで毒を受けるのでどちらも無いように戦ったのだろうが……
「なんか納得いかない」
こちらは傷だらけで必死こいて戦ってたのに優紀にはまだまだ余裕があったのだ。
当然の対処だったのはわかるのだけどなんかモヤモヤする。
そんな時だった。
「キュキュ!」
スラリンが鳴いた。
クイーンたちのやって来た方向に振り向き、警戒している。
「なんだ?」
貴也の気配探知にも反応があった。
でも、これは
「逃げて」
そこにはアスカの姿があった。
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