第百三十八話 切り札を切るが無双できない
「はあ、ぶっつけ本番は嫌なんだけどなあ」
貴也は胸ポケットに手を置いてそう呟いていた。
ナイト種はこちらをジッと見詰めている。
貴也はスラリンに視線を送り、胸ポケットを軽く叩いて剣を握り直した。
大丈夫、握った感触は悪くない。
貴也は一度目を瞑り、深く息を吸い込む。
その時だった。
ナイト種が突っ込んできた。
二本の鎌のような足を振り上げ、ただ突進してきた。
防御のことなど一切考えていない。
やはり、こちらが致命傷を与えることが出来ないことに気付いている。
そして
貴也も前に出た。
その反応に少なからず驚いているようだが、初撃の時にその行動は見ているからか動きは止まらない。
貴也が射程に入るとナイト種はその鎌のような爪を交差させるように振り下ろす。
勢いよく突進している貴也には後ろに退く余裕はない。
上には凶悪な牙が待っている。
残るは
貴也はさらに加速した。
しかし、その動きはすでに知られている。
ナイト種は身体を沈めて圧し潰しに来た。
今度は予想していたので対応が速い。
このままでは下を通過する前にナイト種の巨体に潰されてしまう。
「スラリン!」
貴也は叫びながら、迫りくるナイト種の腹目掛けて剣を突き上げた。
「ギュワああああああ」
絶叫が響き渡る。
ナイト種自身の体重もあり、剣は深々と腹に突き刺さった。
貴也は突進の勢いを抑えることなく、剣でナイト種の腹を裂きながら走り抜けた。
いつもお読みいただきありがとうございます。
最近、短い回が多いのですが今回それに輪をかけて短めでした。
申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。