第百三十七話 弱点がバレて無双できない
貴也の動向を伺っていたのか、スラリンはこちらの空気が変わったことに気付いたようだ。
そして、助けに来ようと飛び出そうとしたのだが。
その良く手をもう一体のナイト種が塞ぐ。
その後にも何度か駆け引きがあったようだが、完全に動きを抑えられている。
いままでは貴也に二体がかりで攻撃しようとするのをスラリンが押さえていたのだが、立場が完全に入れ替わっていた。
さっきの奇声はスラリンを押さえておくようにもう一体に告げていたのかもしれない。
そんなことを考えている間にナイト種が目の前に迫っている。
スラリンの助けは期待できない。
ここからが正念場だ。
相手はこちらの攻撃が効かないことに気付いてしまった。
向こうはもう防御や回避を考えずに攻撃してくるだろう。
攻撃だけに専念できるならそのスピードも、威力も、そして、手数も、いままでとは桁違いに苛烈になるだろう。
貴也に躱しきれるか?
毒は効かない。
だが、今までの戦闘でかなり体力が消耗している。
それに掠り傷とは言え、身体中傷だらけだ。
ダメージはそれなりに蓄積されている。
はっきり言っていつまで躱し続けられるかわからない。
そして、一撃でも攻撃をまともに貰えば、それでお終いだ。
貴也の脳裏に最悪の場面が思い浮かぶ。
その時、鋭い鎌の一撃が
貴也は剣を前に出してそれを受け止める。
だが、力に明らかな差がある為、耐えきれず吹き飛ばされた。
壁にぶつかり何とか止まることが出来た。
貴也が立ち上がろうとするが全身の骨が軋む。
悲鳴を上げかけたが何とか堪えて、膝立ちのまま剣を前に突き出す。
目の前に迫っていたナイト種は貴也の気迫に負けたのか、突っ込んで来ずにこちらを警戒するように身構えている。
「時間稼ぎのはずだったんだけどな」
横目で優紀の様子を確認するが、クイーンとの激闘の最中だった。
クイーンは血まみれで既に足が二本ない状態だったが、まだ、倒すには時間がかかるだろう。
貴也を助けに来られるとは思えない。
「はあ、ぶっつけ本番は嫌なんだけどなあ」
貴也は胸ポケットに手を置いてそう呟いていた。
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