第百三十六話 ナイト種との攻防。だが無双できない
「さあ、第二ラウンドを始めようか」
ニヤリと笑ってナイト種たちを挑発する。
その言葉に明らかに反応した。
目がギラギラと光っている。
立ち込める殺気も増している気がした。
もしかして、こいつ等、人間の言葉がわかるのか?
貴也が疑問に思うがそれを確認している余裕はない。
「スラリン!」
貴也が叫ぶ前にスラリンは反応していた。
突っ込んできたナイト種を躱すために、貴也は左に、スラリンは右に跳ぶ。
そして、貴也が大きく躱して、体勢を崩したところにもう一体が鎌を振り上げて待ち構えていた。
「そんなバカの一つ覚えみたいな連携に何度もかかるか!」
貴也は一歩前に踏み出して加速。
ナイト種の懐に潜り込む。
完全に懐に入り込んだ貴也は死角に入っていた。
こうなると身体の大きさはデメリットでしかない。
貴也は剣を鎌のような足に振り下ろす。
ナイト種の足は爪以外も堅い甲殻に覆われているが、関節部分は別だ。
そこなら
しかし、貴也の剣ははじき返されてた。
「もう一度。さらに!」
同じ場所に渾身の力を込めて三撃入れたがその足を断ちきることは出来なかった。
どす黒い体液が吹きだしてきたのでダメージはあったようだが、その動きを止めるほどではない。
「キシャあああああ」
ナイト種は怒りの咆哮を上げながら身体を沈めて圧し潰しにやってくる。
あの巨体に潰されてはタダでは済まない。
貴也は素早くナイト種の下から逃げるために飛び出す。
足が何本も貴也を刺し貫こうと飛んできた。
鋭い杭のような爪が次々に貴也に襲い掛かってくる。
が、そんな事想定内だ。
貴也はスピードを落とさずに走り抜けながら、頭上から落ちてくる爪を、感覚だけで、屈み、身をよじり、最後は転がって回避する。
何とか脱出に成功した貴也はナイト種と距離を取りながら起き上がる。
ナイト種の下から逃げ出した所をもう一体からの攻撃をされることを警戒していたが、それは杞憂に終わった。
流石は貴也の相棒だ。
スラリンが、しっかりもう一体を抑えてくれている。
貴也はゆっくりと剣を構え直してナイト種に向き合った。
向こうもいつでも攻撃できるように体勢を低くして身構えている。
そして、ジリジリと距離を詰めてきた。
いままでの攻防でこちらを認めたのか、そこにはもう油断やおごりはない。
こちらから視線を逸らさずにいつでもその鎌を振り下ろせるように構えている。
そして、貴也がその鎌の射程圏内に
「キシャあああああ」
叫ぶと同時に鎌が一振りされた。
いままでとは速度が違う。
貴也はサイドステップ。
横に躱すが鎌が腕を掠めていた。
痛みで動きが一瞬止まる。
そこに逆側の鎌が薙ぎ払われる。
貴也は何とか屈んで頭の上を通過させた。
ナイト種はその隙を逃さない。
顔から突っ込んできた奴はその牙で貴也をかみ砕こうとした。
だが、その動きが寸前で止まり、後ろに跳んだ。
「ちっ、マジでこいつ賢いな」
口の中に剣を突き入れようと待ち構えていたのだがバレたらしい。
魔物とは思えない知能だ。
その後も何合か打ち合った。
ナイト種の腹や足の関節に何発も撃ち込んだが、いずれも致命傷には程遠い。
そして、向こうの攻撃も貴也を掠める程度だった。
毒の利かない貴也には全く問題のないレベルである。
場は完全に拮抗しているかに思われた。
だが
ナイト種の雰囲気が変わった。
まずい。
そう思ったときには奴の攻撃が始まっていた。
奴は渾身の力を込めて鎌をふるう。
その大ぶりに体勢を崩すが構わない。
貴也がその隙に攻撃をするがナイト種はそんなもの構わなかった。
貴也の斬撃を浴びながら再度、鎌をふるう。
貴也は大きく後ろに跳び退った。
距離が開き、ナイト種と目が合った。
奴がニヤリと笑った気がする。
「どうやら完全にバレてしまったようだな」
貴也が呟くと、ナイト種は奇声を上げてこちらに向かってきた。
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