第百三十三話 クイーンが登場するが無双できない
「キシャああああああ」
奇声を発するのはナイト種よりさらに大きいクイーンだ。
ナイト種のように一対の腕が鎌になっているわけではない。
通常種と違うのは目が八つあるのと大きさだけだ。
だが、奴には何かがある。
貴也は直感でそれを感じていた。
そんなクイーンはナイト種の亡骸を見て慟哭する。
ナイト種がやられたことを察知してここに来たはずなのにそれでも信じられなかったのだろう。
同胞の亡骸を見て嘆き悲しんでいる。
そして、その視線が貴也達に
クイーンの八つの目。
青かった瞳が血のような暗い赤に染まり怒気を露にしていた。
どうやら貴也達はナイト種を倒した敵と認識されたようだ。
ここからは餌を相手にするのではなく殺しにやってくるのだろう。
全身から殺気が漲っている
それはクイーンに続いてやってきた三体のナイト種も同様だった。
こちらはクイーンのように激怒はしていない。
だが、その瞳の奥底には静かな憎悪を感じ取れる。
貴也達を殺す気満々だ。
鎌のような爪を動かし戦闘態勢に入っている。
「どうする? 逃げ――体制を立て直すのっも手だと思うぞ」
貴也の本音は逃げたかった。
さっき、ナイト種と戦って疲れているし、あんなバカでかい蜘蛛と出来れば戦いたくない。
見ただけでわかる。
あれは貴也が関わって良いような魔物ではない。
だから期待はしていなかったけど貴也は優紀に確認を取った。
クイーンとの戦闘だ。
優紀もこのような遭遇戦は望んでいなかっただろう。
ここは一旦逃げて準備を整えてからという手もある。
まあ、無理だろうが……
「逃げても大して出来ることもないでしょ。それよりクイーンのいる玉座の間で戦うよりここの方が良いかもしれない。ここには特別な罠もなかったし」
そう言う彼女の目は爛々と輝いていた。
口では立派なことを言っているけどそんな目をして何を信じればいいというのだ。
優紀はもう戦いたくて仕方がないのだ。
強敵と出会えて余程嬉しいのだろう。
全身から喜びが伝わってくる。
こういう目は地球で何度か見ている。
こんな直接的な戦闘ではなかったが、サッカーで格上の相手をするときいつもこういう目をしていた。
本当に質が悪い。
ただ、こういう目をしている時は期待が持てる。
いつも自分の実力以上の力を引き出すのは決まってこういう目をしている時だった。
貴也は戦闘狂がと罵ってやりたかったが、グッと堪える。
今はそんな場合ではない。
優紀には少しでも気持ちよく戦ってもらわないとならない。
少しでも生存確率を上げるために。
だから、代わりに
「じゃあ、作戦通りに」
「ええ、ナイト種の相手は貴也達に任せるわ」
頑張ってとも、死ぬなよとも、貴也は言わない。
相手に集中して既に貴也の声は聞こえていないだろう。
激励は無意味なのだ。
だから、淡々と作戦開始を告げた。
それを聞いた優紀は喜々として剣を抜いてクイーンに向かって走り出していた。
「そんなに慌てんなよ」
大きな溜め息を吐きながら貴也はスラリンと共に優紀の後に続くのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
評価400P達成しました。
ひとえにいつも読んで頂いている皆様のおかげです。
記念投稿をしたいのですが現在書き溜めに余裕がない為後日にさせてください。
これからもよろしくお願いします。




