第百三十一話 ナイト種との戦闘が終わるが無双できない
「って、六本も相手にしてられるか!」
貴也は一気にナイト種の懐に入った。
この攻撃の前に後ろに下がるものはいても前に出てくるものはいなかったのだろう。
ナイト種の動きに動揺が見える。
その隙を逃さず貴也はその柔らかそうな腹に剣を突き立てるが……
「つぅ。やっぱり腹には無理か」
剣ははじき返され傷一つ負わすことは出来なかった。
だが、相手のバランスを崩すことには成功した。
立ち上がっていたナイト種が倒れてくる。
そして
「うわ。踏みつぶし攻撃とかマジ勘弁」
そう、ナイト種はタダ、足を下しただけでなかった。
身体全体で貴也を押しつぶしにやって来たのだ。
このまま、ここにいたらなす術もなく潰されてしまう。
剣で腹に傷一つ付けられなかったのだ。
貴也に取れる選択肢は一択。
逃げるだけ。
貴也は蜘蛛のお尻の方に走り出した。
しかし、ナイト種もそれを見越している。
通常種と違いナイト種にはある程度の知性があるのだ。
腹が嫌なぜん動運動している。
これは
貴也は剣を振りかぶり、ナイト種のお尻に向かって突き出した。
「キシャあああああ!!」
ナイト種の悲鳴のような咆哮があがる。
糸を拭きだそうと開いた尻の穴に剣が付き入れられたのだ。
流石に体内への直接攻撃に対しては魔力障壁の効果はないようだ。
剣を尻に突き刺したままナイト種がのたうち回っている。
その間に距離をとる貴也。
ナイト種は怒りに目を爛々と輝かせて立ち上がる。
カランと尻から剣が抜けた。
ケガのせいか、どす黒い体液と糸が尻から漏れている。
「キシャああああああ」
怒りに我を失っているのか咆哮を上げてナイト種が突っ込んできた。
最大の攻撃、牙を貴也に突き立てようと顔から跳び込んでくる。
一見、無謀とも思えるような力任せの攻撃。
だが、それはタダの見せかけだった。
怒り狂っているようでナイト種はどこか冷静だった。
いや野生の本能だったのかもしれない。
奴はここに来て初めて切り札をきって来たのだ。
だが、貴也はそれを読んでいた。
「オレに毒が効かないことにまだ気付いてないのかよ」
口から毒液の球が噴射される。
貴也は怯まず正面からそれを受けてさらに前に出た。
そして、毒液を噴射するために大きく開かれた口の中に腕を突っ込む。
口を開いていると言っても牙を腕が掠める。
擦り傷だらけの腕に毒液がかかり腕が痛む。
傷口に塩を擦り込まれているようだ。
って言うか擦りこまれているのは毒なんだけど。
毒が効かないと言っても痛みがないわけではないみたいだ。
「うおおおおお、ファイアーボルト!!」
貴也はその痛みを堪えながら叫ぶ。
いま使える火系の最大魔法を。
ナイト種は腹の中から燃やされて断末魔の声を上げていた。
貴也は腕を引き抜き、魔力を使い過ぎてその場に倒れ込むのだった。
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