表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/200

第百二十九話 デッドリーポイズンスパイダーの巣に着くが無双できない


「これはひどいな」


 目の前は蜘蛛の糸が縦横無尽に張り巡らされていた。

 そこは侵入者を防ぐ要塞。

 ここに来るまでの間は比較的簡単だった。

 まあ、貴也には良い戦闘訓練になったことだろう。


 毒が一切効かないとわかってから優紀は容赦なかった。

 貴也は矢面に立たされて攻撃を一身に受けていた。

 巣に近づくにつれて蜘蛛の襲来頻度が上がっていく。

 ときには十匹が同時に襲ってくることもあった。


 だけど、基本、通常種に攻撃力はない。

 牙や爪で毒を注入して獲物を動けなくするのだ。


 蜘蛛にとっては人間も食料なので基本麻痺毒を使って動けなくなったところ巣に持ち帰る。

 エサは新鮮な方が良いのか食べるまで殺さないらしい。

 だから、糸に包まれた状態で巣から救助される人間は結構な数いるのだ。


 まあ、毒に侵されて身動きが取れない状態で糸でグルグル巻き。

 その後、食べられるまで放置されるのはトラウマレベルのことなのだが……

 死ぬよりはましだろう。


 おっと話が逸れてしまった。


 と言う訳で貴也の戦闘訓練も兼ねて前衛を務めてきたわけだがはっきり言って辛かった。

 毒が効かないと言っても巨大蜘蛛に襲われるのは勘弁してもらいたい。

 それも複数同時だ。


 あいつ等見た目がきもいんだからマジ勘弁だ。

 あまりのことに言葉遣いが少しおかしくなっている。

 少し冷静にならないと深呼吸。



「それにしてもここをどうやって攻略するんだ?」


「火魔法で燃やし尽くすのが一番手っ取り早いんだけど、間違いなく山火事になるわね」


「そうだよなあ。それってテンペストの被害よりひどいことになるよな」


 貴也と優紀は同時に溜息を吐いていた。

 と言う訳で覚悟を決めて二人は巣に踏み込む。

 流石にここからは危険なので優紀が前に出た。


 そう巣には間違いなくクイーンがいるのだから。


 クイーンはA級。

 だが、これは毒の危険度から一段階上がっているので実際はB級相当だ。

 単体なら優紀でも討伐できる。


 ただし、クイーンの周りにはナイト種がいる。

 これがなかなか厄介だ。


 討伐難易度はB級。


 これも毒の危険度でワンランク上がっている訳だが、それを加味してもC級だ。

 クイーンとナイトの複数体を相手にするのは流石の優紀にも無理がある。


 そこで貴也の出番ということになるのだが……


「オレの魔力じゃC級の魔物の討伐は無理なんだけどな」


 そうなのだ。

 貴也の最大のネックは魔力容量の少なさ。


 身体強化魔法を常時発動することにより、ナイト種とも互角に戦える。

 素早さと防御力は多分、勝っていると優紀に言ってもらえた。


 だけど、C級以上の魔物は常時魔力障壁が身体を覆っている。

 貴也が全魔力を注げば防御力があまり高くない蜘蛛相手なら、傷くらい負わせられるかもしれない。


 しかし、それをすると魔力を身体強化に回せず、簡単に殺されてしまうだろう。


「とりあえず、貴也はナイト種をひきつけておいて、わたしがクイーンを直ぐに倒してそちらの応援に行くから」


「待てよ。簡単に倒せるような言い方してるけどクイーンってA級だろ。お前には毒も聞くし、そんなに簡単に倒せる相手じゃないだろ。ここはオレがクイーンをひきつけてその間にナイトをお前が殲滅した方が良いんじゃないのか?」


「それは無理よ。毒が効かなくても貴也じゃ3分持たないわ。能力が違い過ぎるもの」


 分かってたことだけど、はっきり言われるとへこむ。

 そんなこんなでいい作戦が浮かばないまま巣の奥へと進んでいった。


 ちなみに通常種のデッドリーポイズンスパイダーは引っ切り無しに襲ってきている。

 それを話しながらなんの苦も無く倒し続けている優紀は流石だ。


 勇者の名前は伊達ではないようだ。


 巣の中は迷路となっていて、曲がり角や分岐が多い。

 かなり奥まで入ってきた気がするが実はまだ入り口付近なのかもしれない。

 というか、迷って同じところをグルグル回っているのかも。


 そんなことを考えている時だった。


「優紀!」


 声を潜めて警告する。

 優紀は足を止めて頷いた。


「この先にやばい奴がいる。いままでの通常種とは違う」


 気配探知の反応に貴也の喉は渇いていた。

 C級魔物とは何度か遭遇しているが、それより明らかに危険だ。

 本能が近寄るなと警告してくる。


「数は一体よね」


 優紀も気配探知を使えるが貴也の方が精度が上のようで確認してきた。

 貴也は頷いて応える。


 優紀は少し考えてから


「多分、クイーンの部屋が近いんだと思うわ。ナイト種が門番というか、露払いに待ち構えているんだと思う」


 貴也もその意見に賛成だ。

 そして


「じゃあ、貴也。任せた」


「ふぇ?」


 間抜けな声を上げる貴也に優紀はニヤリと笑って見せる。


「ぶっつけ本番は危険だと思ってたのよ。相手が一匹なのは好都合よ。存分に戦って」


 貴也は大きな溜め息を吐いた。


「あのお、帰ったらダメですか?」


 思わず本音を漏らす貴也だった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別作品の宣伝です。
カワイイ男の子が聖女になったらまずはお尻を守りましょう
良ければ読んでください。

あと宜しければ下のリンクを踏んで投票していただけると嬉しいです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ