第百二十五話 森に降りるのが難しくて無双できない
高度を上げて諦めたのかそれとも最初の攻撃がただの気まぐれだったのか二度目の攻撃はやってこなかった。
貴也はホッと胸を撫で下ろす。
だけど
「そうなるとまずいなあ。下から攻撃されるんじゃあ。オレたちだけ下ろすというのも難しいんじゃないのか?」
貴也は顎に手を当てて考え込む。
森の外から徒歩だとこの地点まで三日。
いや、戦闘や地形によっては迂回しなければいけないからさらにその倍は見なければいけないだろう。
既にアスカの行方が分からなくなってかなりの時間が経っている。
彼女がそう簡単にくだばるとは思わないけど、もし怪我でもしていたらそう長くもつ者ではないだろう。
貴也が頭で考えていても良い案は浮かばなかった。
そこに荷物を抱えた優紀が戻ってきた。
貴也が考え事をしている間にキャビンで準備を進めていたようだ。
「じゃあ、行くわよ」
「行くってどこに」
「どこって? そこ」
そう言って下を指差す。
「高度を下げると魔物から攻撃を受けるんだろ。どうやって降りるんだ?」
「ここから飛び降りるんだよ?」
「え?」
「え?」
二人は同時に首を傾げていた。
話が全くかみ合っていない。
そして、我に返った貴也は首を振って
「無理、無理、無理。スカイダイビングなんてやったことないんだぞ。それなのに初めてが森の中にダイブとかありえないだろ」
「心配しなくてもパラシュートなんて使わないわよ。あれって結構操作が難しいのよ。それにパラシュートで優雅に降りてたら魔物に狙撃されちゃうわ」
「じゃあ、どうやって」
貴也は冷や汗をタラリと垂らす。
「このまま飛び降りるの。着地する瞬間に魔法で衝撃を緩和するから大丈夫。もし怪我してもわたし治癒魔法使えるし」
そう言って優紀は貴也の腕を掴んだ。
女とは思えない力で貴也を強引に立たせる。
「冗談だよな」
懇願するような目を向ける貴也に優紀は優しく微笑む。
「わたしを信じなさい」
「お前が一番信用できないんだよ!!!!」
叫んでいた時にはすでに貴也は空の中だった。
ヘリの中でケビンが手を合わせていたのが何故か印象的だった。
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