第百十八話 戦争が起こって無双できない
戻ってきてそうそう貴也達は領主の執務室に集まっていた。
城に戻る車中で色々話を聞こうとしたが、外で気軽に話せる内容ではないのでエドは何も話してくれなかった。
下手に話が漏れて騒ぎになっては困るのだ。
この世界、魔法があり、科学も発達している。
盗聴などいくら気を付けても足りないのだ。
と言う訳で
「エド。戦争ってどういうことなんだ」
仕事モードの時はちゃんと敬語を使っているのに貴也も動揺しているのだろう。
公爵代行のエドに対してため口を聞いている。
普通ならクロードあたりが諌めるのだが、そんな言葉はなかった。
事態がよっぽど切迫しているのだろう。
「ジルコニアがガーネット共和国に攻め込みました。それに呼応してアウイン共和国も国境を侵しています」
「そんな薔薇騎士団は、アスカはどうしたんですか!」
アスカは性格に難はあってもその正義感は本物だ。
彼女がいてそんな愚行を許すはずがない。
そして、聖騎士の実力を貴也は身をもって知っている。
それにあいつ等は狂信者集団だ。
ジルコニアにいくら軍事力があってもそんなの敵に回してまでガーネットに攻め込むだろうか。
薔薇騎士団に手を出せばサフィーネ帝国まで敵に回しかねないのに……
そんな貴也の疑問にクロードが応えてくれた。
「ガーネットへの侵攻に薔薇騎士団も参戦しています。それどころか先陣を切っているそうです」
貴也はその言葉を聞いて愕然としていた。
そして、怒鳴り声をあげる。
「そんなバカな! アスカは思い込みが激しくて頭がちょっと悪いが、人同士の戦争を容認するような奴じゃない!」
「そうでしょうね。彼女がいたらこんな事にはなっていなかったと思われます」
「それはどういうことなんだ?」
貴也の質問にこの場に沈黙が降り立った。
そして、しばらくしてクロードが重い口を開く。
「彼女が乗ったヘリが消息を絶ちました。現在捜索中ですが、山中の森の中に墜落したようで、まだ、ヘリの残骸しか見つかっておりません。乗員は全員、行方不明となっています」
貴也はクロードが何を言っているのか分からず、ただただ呆然とするのだった。
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