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第百九話 ロボットに乗り込んでみるが無双できない


「この世界に来て初めて見た」


 貴也は目を輝かせてロボットを見ていた。

 残念なことに完全搭乗型ではない。こちらの世界のロボットはパワーアシスト系の物が多いのかこのロボットも魔導アーマーのように自分の動きに反応して操縦するようだ。


 見た感じは昔見た映画に出てきた地球外生物と戦う女主人公が乗っていたパワーローダーに近い。

 手が長く、足が短い。

 むき出しで乗り込むので頭なんかはなく、胴体部分にスッポリと納まるような感じだ。

 右手は細かい作業が出来るようにか人間の手のように五本指。

 そして、左手には土木作業特化型なのかドリルが装備されている。


 うん、ドリルはロマンだよね。


 どうやら用途によって腕は自由に付け替えれるらしい。

 基本フレームは鉄かそれに近い金属なのだろう。

 見た感じそれなりに重量はありそうだ。

 動力はエネルギーキューブを用いた、モーターと油圧のハイブリット構造のようだ。

 多分、細かな作業はモーターを使って、力がいるときは油圧で動かすのだろう。


 そして、足は太く、さらに接地面は広く取られている。

 足首部分には杭のようなものが装備されており、固定したい時にこれを打ち込むのだろう。


「おお、ケリと同時にパイルバンカーとかこいつはなかなか良いセンスをしている」


 見た目は残念だが実用性重視なのだろう。

 機能美もわかる貴也としてはそこそこ評価している。


 でも、これじゃあ、作業中の土砂とか直接浴びて作業性が悪いんじゃないか。

 その辺は風魔法で対処するのか? あまり、覆うと視界が悪くなるしなあ。一応、落石対策で頭の部分に覆いはあるんだなあ。


 貴也はぐるりとロボットの周りを歩きながら観察する。


「それにしてもどれくらいのパワーが出るのかなあ。モーターの大きさと油圧シリンダーの大きさからパワーショベルくらいのパワーはありそうだけど。この世界は不思議素材が沢山あるから見た目以上にパワーがあるかもしれないなあ」


 そんなことを一人呟きながら操縦席に乗り込む。

 そして、右手のところにある箱についているスイッチを操作した。


 スイッチは5つだけ。

 オンオフを切り替えるレベー状のものとキーを回すもの、それと赤いボタンだ。

 シンプルで好感が持てる。


 キーは起動スイッチだろう。

 そして、この赤いボタンは緊急停止ボタンと言ったところだろう。

 ロマンのわかる奴ならここは自爆スイッチなのだろうが、土木作業機械に自爆装置をつけるなんて馬鹿な真似はしないだろう。


 早速、キーを捻ってロボットを起動させる。

 若干、振動が伝わってくるが大きな音はしない。

 モーター駆動なので静穏性は良いようだ。


 貴也はベルトと書かれたレバーをオン側に倒す。

 すると足と腰がベルトで固定されていた。

 背中のシートに空気が充填されてフィットしていく。


 うん、この乗り心地はなかなかいいのではないか。

 貴也は腕の方に手を持っていき右手にあるベルトに手を潜らせてグローブに手を通す。


 操作は簡単だった。

 腕を動かせばそれに追随するように出来ている。

 グローブにもセンサーがついているようで指を動かすと同じような動きをしている。

 そして、グローブには程よいフィードバック感があった。


「これはなかなか上手くできてるな」


 貴也は感心しながら腕を上下に振ってみる。

 少し抵抗があるくらいで腕が上下した。

 全く抵抗感がないと逆に操縦するのは難しくなる。

 これはなかなか良いチューニングをしている。

 そうなると今度は負荷実験をしたくなるところだが……


「お前! 何やってるんだ! 危ないだろうが!」


 ビックリマークが多いしゃべり方をする奴だ。

 どうやら、勝手に貴也がロボットに載っているのに気付いたのか、ケンカしていたはずのバカがこちらに走ってやって来た。

 キリクも血相を変えてこちらにやってくる。


 もう少しこいつの具合を確かめたかったのだが、あんまり騒ぎを起こすのは得策ではない。

 しょうがないのでキーをオフに回してロボットを止め、さっさと降りた。

 そこにバカ息子が殴りかかってくる。


 貴也は軽く身体を逸らしてパンチを躱す。

 躱されると思ってなかったのかバカは派手にバランスを崩していた。

 貴也はその隙を見逃さず、手首を掴んで捩じり込む。

 そして、そのまま地面に倒して押さえつけた。


 うん。やってて良かった。護衛術。

 何があるかわからないのでクロードや騎士団の体調なんかに仕込まれていたのだ。

 どうやら、昔少し齧った合気道に近い技だったので相性が良かったみたいだ。

 実はこの技は得意なのだ。

 と言っても貴也が出来るのはこれとあとは二つ三つしかないのだが。


 ちなみに優紀に試した時には全く通用しなかった。

 なんか悔しい。

 まあ、そんなことを置いといて


「くそ、パンチを躱すなんて卑怯だぞ」


「何言ってるんですか? 普通殴られそうになったらよけるでしょ。真正面から殴り合うなんてどこの蛮族ですか」


 盛大に溜息を吐く貴也にバカにされたとでも思ったのかギャアギャアとバカが喚いている。

 少しイラッと来た貴也が力を籠めると罵倒が悲鳴に変わった。

 しばらくして力を緩めるとまた文句がやってくる。

 しょうがないので力を入れなおし、また悲鳴を上げるバカ。

 そんなやり取りを何回かすると、流石に諦めたのか息を切らしながら大人しくなった。

 これでやっと話を始められる。 

 と言う訳で


「お前はこれを使って救助活動をするつもりなのか?」


「それが悪いか!」


「ああ悪い」


 そう言いながら捻っている腕に少し力を加える。途端にバカ息子は悲鳴を上げだした。

 貴也はそれを無視して話を続ける。


「ドリルは良いが、崩落対策はこいつじゃ難しいだろう。それにこれが一番前で動いていたら他の人が作業できない。このままでは使えないな」


「ふざけんな。メリーは優秀なんだ。オレとこいつならどんな困難も乗り越えられる」


 うん。ロボットに名前を付けるとはいいセンスをしているがそれとこれとは別の話だ。

 貴也はもう一度捻っている手に力を加える。


「本当にあなたはバカですねえ。こんな人に使われているメリーさんが気の毒で仕方がない」


「ふざけんな。お前にメリーの何がわかる。いてててててって。止めて、離して」


 マジ泣きが始まりそうだったので貴也はバカを解放した。

 そして


「あなたの何十倍も上手く使って見せますよ」


 ニヤリと貴也は笑う。

 この場にアルがいたらきっと頭を抱えていただろう。


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