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第百二話 現場との対立で無双できない


 ヘリは鉱山の目の前にある広場に着陸した。

 ローターはまだ回っており、砂埃が舞い上がっているが、貴也はそんなことに構わずに飛び降りる。それに続いてアルや護衛の兵士、土木系の技官も降りてくる。


 そんな中、ヘリの着陸に気付いたのかこちらに何人かが駆け寄ってきた。


「お待ちしていました! 領都から来た皆さまですね!」


「そうです! それで緊急搬送が必要な人はいますか? もしいればヘリで搬送しますが!」


「大丈夫です! 既に重傷者の搬送は終わっています。軽傷者は応急処置を終え、救急車が来るのを待てる状態です!」


 まだ、ローターが止まっていないので自然と怒鳴り合うような応対になっている。

 そして、貴也達はそんなやり取りしながら鉱山の入り口の方に向かった。



 

 

「すみません。とりあえず、ここで休んでいてもらえますか。現場責任者を呼んできます」


 鉱山の手前、重機が立ち並ぶ広場に建てられたテントに貴也達は案内されていた。

 そして、案内してくれた人はそう言い残して立ち去ろうとする。


「ちょっと待ってください。貴方が責任者なんじゃないんですか?」


 男は鬱陶しそうにしながらも口調は穏やかに答えてくる。


「違います。現場担当は今鉱山の入り口付近で指揮を執っています。現場は大変危険で混乱しています。領都から来た皆様はどうかここでお待ちください」


 そう言って再度立ち去ろうとするが貴也はその肩を掴んだ。


「ここじゃあ、何の話し合いも出来ないでしょう。わたし達も責任者のいるところに案内してください」


 ここには何もない。人どころか、データをまとめるのに必要な端末、領都につなげる通信機すら無い。こんなところでどうやって方針を決めろというのだろうか、まあ、最低限の設備は持ってきているのでこちらで勝手に本部を作ってもいいのだが、それでは混乱するだろう。


 頭が二つもあると手足は上手く動かないのだ。


 しかし、そんな貴也の発言にその男の表情が変わる。

 多分、何も知らない人達に現場を荒らされたくないのだろう。

 それとも……


「何か後ろ暗いことがあるんですか?」


 声を低くしてそう言うと、その男の顔が一瞬で赤くなった。

 かなり憤っている。

 しかし、領都の偉い人に逆らう訳にはいかないと気付いたのだろう。何とか自制しているようだ。


 なるほど、責任感はあるようだ。


 となると、現場第一の人なのだろう。

 ただ、このタイプが多い現場はことが上手く運んでいる内は問題ない。

 外部助言など上手く行っている時は邪魔でしかないのだから。



 だが、一つ失敗すると途端に破たんする。

 報告を上げずに勝手に対策をとる為、上は現場の状況がつかめない。

 結果、情報が上がってきた頃には対策の立てようがない状態にまで事態が悪化してしまう。


 最終的に大きな混乱を招くことになるのだ。

 だから、釘を刺すべき時は釘を刺しておかなければならない。

 貴也は真っ直ぐにその男を見詰めて話し始める。


「疑ったことは謝りますが、貴方の態度は承服できない。我々にはこの現場での一切の責任があるのですから」


 そこまで言うとその男が切れた。


「ふざけんなよ。いつもあとから着て口だけ出しやがって。お前等みたいに現場を無責任な奴らはいるだけで現場を混乱させるんだ。現場は危険なんだよ。あんた達のお守りをしながら対策できるような状況じゃねえんだ。人の生命がかかってんだぞ。大人しくここで待ってろ!」


 やっと本音が出たか、と貴也は溜息を吐く。

 しかし、貴也以外は溜息では済まなあかったようだ。

 技官や官僚の幾人かは激怒している。

 そして、一番に反応したのは護衛の兵士だった。

 彼らは剣の柄に手をかけている。

 貴也は慌てて彼らを抑えた。


「落ち着いてください。彼はアルのことを知らないんですから、多分、領都の土木局の人間が視察に来たくらいにしか思ってないんですよ」


 それを聞いて今度は暴言を吐いた方が顔色を蒼褪めさせている。


「あの、それはどういうことですか?」


「今回の事故を知った次期公爵であるエドワード様は大変憂慮されていました。いま、対策団の派遣を準備しています。その先行部隊として公爵家の次男であるアルフレッド様を代表として我々がきました。こちらの方がアルフレッド様です」


 アルを紹介すると男が愕然としてこちらを見ている。

 そして


「大変申し訳ありませんでした」


 男は土下座をして地に頭を擦り付けていた。

 今更ながら貴族というのは凄いもんなんだなあと思い知る貴也だった。

いつもお世話になっております。

記念連続投稿二回目です。

明日も投稿します。


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