第十話 異世界の酒場で無双できない
「ふう、マスターお代わり」
「オメエ。金はあんのか? 転移者でまだ仕事がないんだろ? 支度金が出るからって無限じゃないんだぞ」
「わかってるよ! でも、呑まなきゃやってらんねえんだよ」
「じゃあ、もう一杯だけだぞ」
「ふん」
貴也は琥珀色の液体が満たされたグラスをひったくるように取ると一気に呷った。
大振りの氷がグラスの中でぶつかり合ってカラカラと音を立てた。
結構、アルコール度数の高い蒸留酒。
味からするとウィスキーに近い。焦げ臭い香りが鼻に抜ける。
「ああ、マズい」
「マズいなら呑むなよ」
酔っ払いの相手などしても無意味なことなど分かっているマスターが思わず苦い言葉をこぼしていた。
それにムッとしながらも、もう一口。
グラスはあっという間に空になる。
「マスター。いつの間にか空になってるぞ。ケチってるんじゃないか?」
「こいつ、とことん絡んでくるな」
「いいから、早くおかわり」
「お前、カインとこの手伝いで朝早いんだろ」
「もう一杯くらい平気だよ」
はあ、と大きな溜め息を吐いてウィスキーを注ぐ。
貴也はグラス受け取るとチビチビと舌を湿らす。
しばらくして気が付くと周りが騒がしくなっていた。
うるさいなあ、と思いながら顔をあげると、見覚えのない場所だった。
どうやら、寝てしまったらしい。
机に突っ伏していたため腕が軽く痺れている。
ここはどこだ。
重い頭を振りながら、記憶を巡らす。
そういえば……
貴也は昼間のことを思い出していた。
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貴也は意気揚々と商業ギルドに向かっていた。
冒険者ギルドではいろいろやらかしてしまったので心機一転、商業ギルドに自分を売り込んでみるつもりだった。
ギルド職員は無理でも商業ギルドなら商人に伝手があるだろう。
貴也の事務処理能力はマリアのお墨付きだ。
慣れは必要だが、即戦力になれるだろう。
伊達に社長業をこなしてきたわけではない。
面接があるだろうからスラリンはカインに預けてきた。
朝からシャワーを浴び、髪形を整える。
服はギャルソン服しか持ってないが、エプロンさえ外せば、白いシャツに黒いスラックスだ。
高級店の制服だけに仕立ては良い。
ジャケットはカインの持っているものから適当に選んだ。
カインは快く貸してくれた。
涙目だったのは見ないことにした。
これで準備万端だ。
貴也は足取り軽く商業ギルドに向かった。
二時間後
貴也は肩を落として村の中を歩いていた。
結果?
そんなもん貴也の今の姿を見ればわかるだろう。
さすがは商業ギルド。
情報収集能力が並じゃない。
冒険者ギルドでやらかした一件は既に知れ渡っていた。
まあ、入口は違えども同じ建屋だし、冒険者ギルドと商業ギルドの関係は親密だ。
情報が伝わっていないと考える方がバカである。
受付で要望を伝え、身分確認のため、ギルドカードを提示する。
すると、受付の女の子は慌てて奥に行ってしまった。
そして、現れたのが商業ギルドのギルドマスターである。
こちらのギルドマスターは冒険者ギルドのバカとは違いやり手の商人のような貫禄のある中年男性だった。
笑顔ながら目の奥が笑っておらず、こちらの様子を伺っている。
表面上は朗らかに奥の部屋に案内してくれた。
そこからの対応は見事だった。
まさに暖簾に腕押し、のらりくらりとこちらの気分を害さないように貴也の希望を躱していく。
貴也が歓迎されていないことはすぐにわかった。
「あの、単刀直入に聞きます。何か俺、悪いことをしましたか?」
途端にギルドマスターの顔が引きつった。
すぐに表情が笑顔に戻ったのは流石だろう。
よくよく考えれば、新参のそれもどこの誰かもわからない異世界人の対応を商業ギルドのトップがすること自体がおかしいだろう。
それに貴也が動くたびにビクリと動く意味が分からない。
あっそうか。
この人、怯えてるんだ。
「もしかして、冒険者ギルドの一件ですか?」
そういうと、ギルドマスターは観念したように話しだした。
内容は予想通りだ。
どうやら、元SS冒険者に頭を下げさせ、要求を通すということはとんでもないことらしい。
そんなことするには王家や国の大臣、領主クラスの権力が必要なのだとか。
詳しい内容を知っているので商業ギルドマスター自身は貴也の就職の面倒くらい見てもいいと思っているのだが、噂が噂を呼んでいるため職員や商人たちが怯えているらしい。
正直に言うとギルドマスターも怖いらしい。
本当にあの筋肉ダルマは後々まで祟ってくる。
イラッとするもののこれは自業自得だ。
商業ギルドマスターにあたっても仕方がない。
というわけで、貴也は商業ギルドをあとにした。
申し訳なさそうに謝罪するギルドマスターの声が背中にかかるが耳には入ってこなかった。
貴也はどこに行くでもなくブラブラしていた。
真っ直ぐ帰る気にはなれない。
それに帰ってもカインはまだ畑だろう。
さてどうしたものか?
回らない頭でボケっと歩いていると飲み屋の看板が見えた。
いかにも冒険者が屯しているような酒場だ。
「そういえばこっちに来て酒なんて飲んでなかったな」
気分を変えるために酒場に足を向けた。
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「そうだった。憂さ晴らしで酒飲みに来たんだった」
異世界に転移したストレスが溜まっていたのか、酒の回りがいつもより速かった。
こんなに深酔いしたことはいままでない。
見知らぬ他人に愚痴をこぼすなんて初めてだ。
今なら恥ずかしさできっと死ねる。
この世界に来てからそんなことばかりだ。
貴也が羞恥で身もだえていると
「おっ、目が覚めたか。ほら水だ」
こちらに気付いたマスターは氷の入った水を差しだしてきた。
貴也はグラスを手に取ると一気に飲み干す。
冷えた水が喉を通る感触が気持ちいい。
飲み過ぎの為、身体が水を欲している。
マスターが二杯目を注ぐとそれもあっという間になくなった。
「ふう、うまい。ちょっと、飲み過ぎたみたいだ」
マスターがもう一杯そそごうとしたが、身振りでそれを断った。
そろそろ帰ろうか、これ以上は迷惑かけられない。
そう思い金を払って帰ろうとした時だった。
マスターはため息を吐きながら
「なにがあったかは聞いたけどよ。あんまり気にすんなよ。」
「あん」
マスターの一言が癇に障った。
人の気も知らないで、なにき易く言ってんだ。
だが、マスターは貴也のそんな心情に気付いていないみたいで話を続ける。
「ああ、そうだ。職探しが上手くいってないならうちで働くか? そんなに給料は出せないけど、生活するくらいなら大丈夫だろう。働きながらゆっくりこれからのことを考えればいいからさ」
ニカっと笑う顔は男前だった。
はっきり言って嬉しい提案だったのだが、それを素直に受け取れなかった。
酒に飲まれて弱音を吐いてしまった羞恥心がささくれだった心を後押しする。
「あ~ん。何で俺様がこんな場末の飲み屋で働かなきゃいけねえんだ」
心にもない言葉が口をつく。
このセリフには我慢できなかったのかマスターの表情が一変した。
貴也は『しまった。謝らないと』と頭で思っても感情がどんどん昂っていく。
勝手にしゃべる口は止まらなかった。
「場末の飲み屋だから場末の飲み屋って言って何が悪い」
「ああん。俺様の店に文句があんのか!」
「文句だらけだよ。この店はなっちゃいねえ」
「どこがなってないんだ。変な言いがかりつけんならただじゃおかねえぞ」
顔を近づけて凄んでくるマスター。
いつもの貴也ならここでスゴスゴと引き下がるところだが、酒の力は偉大だ。
マスターの顔を手でどかしながら、店を眺める。
「まずこの店の飯だ」
「俺の作る料理がなんだって言うんだ」
「これ、お前が作ってんのか?」
ふんと鼻で笑う貴也。
「ここの飯は値段のわりに美味い。素材はそんなにいい物じゃないが安く提供するためには仕方がないことだ。そんな素材を手間暇かけて美味しく仕上げている。少し塩辛いけどそれは冒険者なんかの肉体労働者がメインだからだろ。身体を動かしたあとは塩分を欲するからな。いい心遣いだ」
「おっおう」
褒められると思ってなかったのかマスターは怯んでいた。
そんなもの関係なしに貴也は続ける。
「店の雰囲気も良い。客層が荒くれ者中心なら綺麗な店じゃ落ち着かねえだろう。これくらいごちゃごちゃしてる方が騒げてちょうどいいんじゃねえか」
「なんだよ。わかってるじゃねえか」
少し照れているのか頬を掻いているマスター。
そんなマスターを睨み付ける。
「だけど、酒がなっちゃいねえ。酒場で一番大切なのは酒だ。その酒がこうもマズくちゃいただけねえ」
貴也の勢いに押されながらもマスターは反論する。
「うちの酒のどこがマズいんだ」
「ああん。そんなこともわからねえでよく酒場のマスターなんてやってられんな」
顔がくっつくんじゃないかというような距離でにらみ合う二人。
そんな騒ぎを聞きつけて客の冒険者たちが集まってきた。
貴也はその中から見知った顔を見つける。
「おう、オメエ。ゴメスとか言ったなあ。いまから、いかにこいつの出す酒がなっちゃいねえかオメエに審判させてやる。ありがてえと思え」
突然の飛び火にゴメスは困惑の様子だった。
だが、そんなことを構う貴也じゃない。
貴也はズカズカと厨房の中に入っていく。
「まず、エールだ。なんで、ラガーがねえのかは置いといて、なんで樽を割って酌んでんだ」
「数が出るんだからそっちの方が楽だろ」
「は~ん。なっちゃいねえな。空気に触れればその瞬間からエールは劣化するんだ。それにこんなよそい方じゃあ。泡の量の加減もできねえじゃねえか」
「泡の量なんて関係あるのか?」
「マジで言ってんのか? 呆れてものも言えねえ」
肩を竦める貴也。
そして、さらに続ける
「あと何でエールを冷やさねえんだ」
「なに言ってるんだ。エールは常温で飲むもんだろ? それに氷なんて入れたら薄くなるじゃねえか」
「オメエはバカか。おい、ゴメス奥からエールを樽で持って来い!」
戸惑うゴメスはマスターの顔を伺うが、彼も頭に血が昇っているのか、いいから持って来いと怒鳴っていた。
しばらくするとゴメスが樽を抱えて持ってくる。
それをテーブルの上に置かせた。
「ゴメス。冷却系の魔法は使えるか?」
「俺は戦士だから魔法はちょっと」
「使えねえな」
と毒づくと周りを一睨み。
ローブを着た男と目が合う。
「お前。冷却系の魔法は使えるか?」
突然、名指しされてビビっていたが、「どうなんだ!」と貴也が凄むと渋々頷いた。
「よし、ならこの樽を凍らせろ。俺が良いって言うまでだ。樽だけだぞ。中のエールを凍らせてみろ。ただじゃおかねえぞ」
ひっ、と悲鳴を上げながら魔法使いは呪文の詠唱を始める。
それを見届けた後、貴也はマスターに向き直る。
「準備に時間がかかるから別の酒だ。まず、そのワイン。お前、どこに保管してる?」
「カウンターの奥の棚か、外の倉庫に置いてあるけどなにが悪いだ」
「悪いわ。ワインの瓶が何で緑色なのかわかるか? 光の影響が少しでも出ないようにするためだ。ワインの天敵は光と温度だ。日が当たったり、温まったりすると劣化するのは常識だ。振動さえ気にする人だっているんだぞ。ワインは風通りがよく、日の当たらない涼しい場所に保管するのが常識だ。店の飾りに使うなら空瓶を置いて飲むものは裏から持ってくる。これくらいの工夫はどこでだってやっている」
「……」
「次にウィスキー。水割りはいいけど。なんでロックにこんな氷を使ってるんだ。小さくなればそれだけ溶けやすくなるだろう。氷はグラスに入るくらいの大きいのが一つだ。あと、水。この辺の水は硬水なのか? だから、この水を使っているのか知らねえけど、口あたりが悪くなっている。確かに酒それぞれで合う水は違うけど、ウィスキーは基本軟水だろ。せめてチェイサーには軟水を用意しろ」
貴也のダメ出しは留まらない。
唖然とするギャラリーをよそに続く。
「なんでブランデーの水割りがメニューにあるんだ。ブランデーは基本割らない。好みがあるからお客様が頼めば応えればいいが、ちゃんとした店ならメニューには載せない」
貴也は周囲を見回して溜め息を吐く。
そして、口を開いた。
「あと、店の清掃。お客さんが泥だらけなのは構わない。そういう店だからな。でも、だからってそのままでいいのか? お客さんが帰ったら、テーブルセッティングする間に気付かれないようにイスと床の泥汚れを拭く。それぐらい手間でも何でもないだろう。泥汚れが取れそうになかったら予備の椅子と交換して奥で洗ってもいい。これくらいは出来て当然の気遣いだ。まだまだあるけど、とりあえずエールだ」
そう言ってエールの樽に向かう。
貴也は樽の蓋の部分に穴を開ける。
そして、料理に使うのかすりこぎがあったので穴に突っ込む。
しばらく、具合を確かめて樽を横に倒した。
これで準備完了。
「おい、そこの魔法使いこのジョッキを凍らせろ。マスターはいつも出してるエールを持って来い」
貴也はジョッキを魔法使いに渡す。
一瞬でキンキンに冷えたジョッキの出来上がりだ。
凍ったジョッキは冷たくて取り落としそうになったが、それをしっかり持ってすりこぎの突き刺さった樽にあてがい、それをゆっくり抜く。
すりこぎの抜き方を調整しながらエールをそそぐ。
まずは泡立つように高い位置からジョッキいっぱいになるようにそそぎ、しばらく放置。
泡が落ちつき一定の層が出来上がったのを確認すると泡の下に潜り込ませるようにエールを追加する。
すると指二本分くらいのきめ細やかな泡が乗ったエールが出来上がった。
「おら、ゴメス。飲み比べてみろ」
ゴメスの前に二杯のエールが置かれる。
まず、マスターのエールを飲ます。
「プハア。いつもの味だな」
こいつバカなのか?
飲み比べだと言うのに一気に飲み干しやがった。
こいつに酒の味が分かんのか?
と少し不安になる。
そんなことを考えながらもゴメスは貴也のエールを手に取った。
そして、一口。
「……」
ジョッキを置いて目を白黒させる。
そして、もう一口。
ゴクリゴクリとゴメスの喉が鳴る音が酒場に響いた。
ドンとジョッキを置くとゴメスは驚いた表情で貴也を見ている。
「どっちが旨かった?」
マスターが確認するとゴメスは持ってるジョッキを掲げた。
「全然違う。なんだこれ、今まで飲んでたエールと同じ物とは思えねえ」
そのあとは大騒ぎだった。
ゴメスのいうことが信じられなかったのか、二杯目はマスターが。
俺も飲みたい。次は俺だと、この場にいる全員が飛びついた。
貴也は次々にエールをそそぐが先に魔法使いが魔力枯渇を起こした。
しばらくして落ち着いた酒場の中でマスターは悔しそうに唸っていた。
「どうだ。俺がどれだけ優秀かわかったか? なんだったらここで働いてやってもいいぞ」
ほくそ笑む貴也。
立場が逆転した。
悔しそうにマスターが吠える。
「うぬぬ。へん。お前がこの酒場で勤まると思ってんのか。この酒場は客が多いんだ。ジョッキ何杯も一辺に運べない奴なんて役に立たないんだよ。お前の細腕でそれができんのか? 悔しかったら勝負するか? お前が勝ったら土下座して『この店で働いてください』って頼んでやるよ」
「その喧嘩、買ってやる。このカウンターから奥のテーブルまでジョッキを何杯運べるかでいいんだな」
「けっ、そんな細腕で俺様に勝てるわけがないだろう。負けたら土下座して『ここで働かせてくださいお願いします』っていうんだぞ!」
「いくらでも言ってやるよ。まあ、俺がいうことはありえないけどな」
睨みあう二人。
しばらくしてお互いが同時に離れた。
先行はマスターだ。
マスターは大きな掌をフルに利用して片手に五個のジョッキの取っ手を鷲掴み。
両手で十個だ。
それを軽々と腕の力だけで持ち上げて奥のテーブルに歩いていく。
途中、エールが少しこぼれたが、問題なく運びきった。
「あははははは。どうだ。少しこぼれたからな。九杯ってことでいいぞ」
「バカか。十杯でいいよ。それを負けた時の言い訳にされたら困るからな」
ふんっと鼻息荒く。
貴也はジョッキにエールをそそいでいく。
「おいおい何杯つぐ気だ」
マスターが運んだ十杯を超えてもまだつぎ続ける。
「とりあえずこんなもんかな」
ついだエールは計十五杯。
周りの目は驚きというか呆れている。
「おいおい。そんなに持てるわけないだろう。見栄を張らないで謝ったらどうだ。エールは良いけどジョッキを割ったら弁償してもらうぞ」
「別に構わんぞ。これくらい運ぶのは日本では常識だ。二十三杯運ぶ凄腕もいるからな」
貴也が負け惜しみを言っていると思ったのか酒場中から笑いが起こる。
そんなことにかまわず貴也はジョッキを並べる。
小指と薬指で二杯、中指で一杯、ジョッキの取っ手に指をかけて引き寄せる。
そして、人差し指と親指で輪を作るように三杯のジョッキの取っ手を掴む。
指の引っかかりを確認してから、ギュッと握りこむ。
これで片手で六杯持てるのだ。
力の入れ方にコツがあって慣れれば普通の握力しかない人でもこれくらいは持てるようになる。
握りを確認しながら左手も同じ要領で掴む。
残った三杯は両手に持ったビールで挟み込む。
滑りそうだが意外に3杯位ならいける。
脇を絞めて力が逃げないようにする。
軽く膝を曲げて、お腹で軽く支えながら腕を固定。
膝を伸ばして持ち上げる。
腕の力だけではさすがに持ち上げるのは辛い。
「嘘だろ……」
どよめきが上がる。
俺はそのまま悠然とテーブルまで向かい。
それを降ろした。
「どんなもんだ? まだ、いけそうだけど、こんなもんかな」
貴也がそう言いながらジョッキのエールを一気にあおる。
すると、酒場に歓声が上がった。
「で、マスター。どうするんだ。少しこぼれたから十四杯にしといてもいいぞ」
ニヤリといやらしく笑う貴也。
呆然としていたマスターは悔しそうに項垂れた。
「ほれ? 約束はどうした? 土下座だったけ?」
肩を震わせるマスターに貴也はニヤニヤと顔を近づける。
その時だった。
「うるせえ。そんなもん知るか! 誰が手前なんか雇うか!」
顔に何かがぶつかった。
衝撃が走り、貴也の身体は吹っ飛んでいく。
視界が真っ暗になり、意識が遠のいていく。
うん。どうやら俺は殴られたようだ。
調子に乗っちゃいけないね。