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第九十四話 地震の対応に追われて無双できない


「エド様。そろそろ戻って対策を取らないとなりません。シャキっとしてください!」


 貴也の大きな声が飛行場のエントランスに響いていた。

 その声を聞いた幾人かが肩をビクリと震わせている。

 そして、言われたエドはと言うと


「すみませんでした。少々取り乱していたようです。それで何か現状でわかったことはありますか?」


 まだ、青ざめた顔をしているが、何とか気を取り戻したようだ。

 目に生気が戻っている。

 貴也はそれにホッとしながらも報告を開始する。


「現在、城内も大混乱中のようです。連絡が取れないのが大多数で、取れた者でも真面な対応が出来た者は皆無でした。とりあえず、人員の把握と建物外に避難すること、再度揺れるようなことがあったら丈夫な机の下などに隠れるように指示をしました」


 地震発生から10分が経過している。

 貴也は内務、軍部に関わらず知っている者すべてに連絡を取っていた。

 結果は残念ながら不通状態。

 連絡を取れたものも動揺が激しく、怒鳴って落ち着かせることしか出来なかった。


 本当に厄介なことになった。

 この地域では地震が起きたことがないらしい。

 なまじ、神や魔王が実際にいる世界なので、神罰だと思い込んで跪いて天に許しを乞うものまでいる。

 いまは思考停止に陥られるのが一番困るのだが仕方がないだろう。

 誰でも未知の災害などに会えばこうなってしまうのだ。

 貴也が動けるのは日本で地震にあった経験があるからだ。

 そうでなければきっとエドやクロード以上に動揺していただろう。


「地震と言っていましたが。貴也さんは地面が揺れた理由を知っているのですか?」


「いえ、今起こったことが何なのかはわかりません。ただ、似たような現象が日本ではよくあったので落ち着いているだけです」


「このような恐ろしいことがよく……」


 エドが愕然としている。

 貴也はそんなエドを宥めながら


「いまはそんなことはどうでも良いのです。震源地がどこかわからないので被害がどれだけ出ているかわかりません。それに余震がまた起こるかもしれません。一刻も早く城に戻って対策を取らないと」


「ま、また、同じように大地が揺れるのか」


 震える声で言葉を紡ぐ、エド。

 貴也はそれを見て彼の肩を貴也は力強く叩く。


「しっかりしてください。だからこそ、あなたが陣頭指揮をとらないと被害が拡大するのです! ここまでは災害ですが、ここから被害が拡大するのは人災ですよ!」


 貴也の声にエドの表情が引き締まった。

 そして、頷くと足早にここを後にする。


 クロードも立ち直ったみたいで今は関係各所に連絡を入れている。

 貴也達は車に乗り込み、城に向かうつもりだった。

 が、運転手が逃げ出して立ち往生してたり、我先に逃げ出そうと車が入り乱れたりして道路は大渋滞になっていた。


 すぐに諦めて飛行場に戻り、ヘリに乗り換えた。

 空港にいたのは不幸中の幸いだったかもしれない。


 ヘリが城の中庭にあるヘリポートに降りると何人もの官僚が待ち構えていた。

 ヘリの着陸を待てないのかエドが飛び降りて官僚団の元に駆け寄る。


「被害状況はどうなっている!」


「はっ、城に目立った損傷はありません。高い所に置いていたものが落下して軽傷を負ったものが少数だけです」


「貴也の話ではこのような揺れがまた起こる可能性があるらしい。現状把握に必要な人間を残して他の者は屋外に非難だ」


「また、揺れが起こるですと……」


 愕然として固まる一同。

 そんな彼らにエドの叱責が飛ぶ。


「狼狽えるな! 我々は民を守らねばならん。いまは動揺などしている暇はない! 騎士団長!」


「はっ!」


 鎧姿の偉丈夫が一歩前に出る。


「災害避難本部を立ち上げろ。対応はSS級魔物と同等。領民を落ち着かせて避難誘導。家屋の倒壊などがないか調査しろ」


「エド様。地震の二次災害で一番恐ろしいのは火事です。その警戒にも人を出してください」


「聞いていたな! 迅速に対処せよ」


「はっ」


 そう言うと軍部の人間は一斉に走り出した。

 残されたのは内務の人間。


「貴様等は領都以外の被害調査だ。貴也、何か意見があるか」


「はい。まずは領都以外での被害状況の把握です。震源が領都近郊なら被害状況は予測できますが、別であれば震源近くはもっと揺れているはずです。まずはその調査が必要です。あと、被害地域への救援、物資の補給が必要になります。輸送体制の構築、補給物資の在庫状況、手配が必要となります」


「聞いていたか。各自、貴也の意見を参考に動け! 全責任はわたしがとる。最善を尽くせ!」


「「「「「はっ!」」」」」


 指示が出たら既にみんなが官僚の顔に戻っていた。

 もう動揺している姿は見えない。

 外見だけかもしれないがこれは凄いことだ。

 流石公爵家の官僚団。質も鍛えられ方も違う。

 貴也が感心しているとエドは足早にある場所に向かっていた。


「ここは……」


 城の中央部、目立たないところに備え付けられた階段を下りていく。

 そして、地下まで降りて、厳重な扉を開けるとそこには


 正面に巨大スクリーンがあり前方に楕円の円卓が鎮座していた。

 その後方には机が並び、何十人ものオペレータがパソコンやモニターに向かって作業している。

 左右の入り口から人が引っ切り無しに出入りしていた。

 

 貴也は言葉を失っていた。

 なんか怪獣映画や軍事者でよく見るような部屋だ。

 勘違いしがちだが、この世界の科学技術は分野で色々異なるが日本と同等かやや上なのだ。

 しかし、ファンタジーな街並みや事件ばかりなのでついつい思い違いをしてしまう。


「貴也さんはここに来るのは初めてですか?」


 貴也は素直に頷く。


「ここでは領内で起こる様々な災害、主に魔物の被害なのですがそれらの情報が上がってくるように出来ています。いくつかダウンしているところがあるみたいですが町や村の定点カメラの映像もここで確認できるんです」


 そんな説明をしながらズンズンと進んでいく、エド。

 そして、司令官の席にどかりと座る。

 クロードはその後ろにある大きな机に向かって乱雑に集まってきた資料の精査をしていた。


「現状でわかっている範囲でいい。被害報告を上げてください」


 エドがそう言うとクロードがスクリーンに領内の地図を映し出し説明を始めた。


「領都での被害は軽微です。一部、スラムなどで建物の損壊があったようですがそれ以外は家具が倒れるくらいの被害で済んでいるようです。火事などの二次被害も報告にありません」


 その報告にホッと息を漏らす一同。

 あとでわかったことだが、領都ではエネルギーキューブによる家庭用発電が主なので元々火事が少ないそうだ。

 つい日本のことを基準に考えてしまって余計な助言をしてしまったかと貴也は恐縮する。

 エドはそんな貴也を窘めながら次の報告を聞く。


「領都以外ですが、被害は西側に行くにつれて大きくなっているみたいです。震源はどうやら西の海ではないかと推測されます」


 貴也はその報告を聞いてとんでもないことを見落としていたことに気付いた。


「しまった! 沿岸地域に問題はありませんか?」


「どうしたのですか。貴也さん」


「津波です。海が震源なら津波が!」


 緊急対策本部に貴也の絶叫が響いていた。


申し訳ありません。

部署が変わって今までかなり楽をしていたのですが、修羅場がやってきました。

今週から週一月曜日のみの更新になります。

本当に申し訳ありませんがご了承ください。

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