先生達の受難
「おーい、ロン、エディ大丈夫か?」
エミルが実習教室を去った少し後、スマイトは未だ地面に座り込む二人の教師に声をかける。
「ええ、問題ありません」
「…大丈夫、です」
「んじゃ、後始末でするか。しないとまずいよな?めんどくせぇ」
「そうですね、まずはこの教室の被害状況を纏めましょう。報告書も出さなければいけませんし」
ロンはポケットからメモとペンを取り出す。幸いにも物理的な被害は目標物であったターゲットがバラバラになってあちらこちらに落ちているだけで、教室内は入室した時と変わり無かった。
次にロンとエディは結界の被害状況を調べる。スマイトは魔法に精通していないためかぶらぶらと室内を歩き回っている。結果として何重にも張ってあった結界は残り2枚、正確には無傷1枚とダメージを受けた結界が1枚だった。
「術者を手配しなければなりませんね……」
ポツリとロンが呟く。
魔法担当の教員であれば結界を張ることもできるが、専門家に任せた方が安心できる。もちはもちやなのだ。
続いて3人は実習室2号室へ向かう。移動する間スマイトは「俺、魔法あまりわかんねぇし、先に職員室に戻っててもいいか?」と言い「よくありません。一緒に確認していただきます」と年下のロンに窘められる。スマイトは両腕を頭の後ろに組みながら、しぶしぶといた様子でロンとエディの後ろについて行く。
「改めて見ると惨状ですね」
戻ってきた実習室2号室の扉を開けると、部屋の内部は切り裂いたような傷が無数についていた。ターゲットの破片が傷つけたものなのか、風の刃で傷つけられたものなのか判別がつかない。恐らく両方だろうとロンとエディは話し合った末に結論づけた。
「にしても、だ。これだけ室内に傷があるにも関わらず、嬢ちゃんは体は打った様だったが怪我してなかったぞ」
「そうですね。私もおかしいと思っています。通常魔法を使った場合、本人にも魔法の影響が出ます」
「ん?どうゆうことだ」
「例えば、ファイアーで炎を出現させたとしてその炎の中に飛び込めば火傷をしますよね?」
「あたりまえだな」
「はい、あたりまえです。炎の中に飛び込めば他者術者関わらず火傷をするものです。ですが、今回彼女は怪我一つしていませんでした。考えられる事は、
1、結界を張って防いでいた。
2、魔法が彼女に作用しないよう設定されていた。
3、ダメージを受けない魔道具を所持していた。
この3点くらいでしょうか?超回復ということも考えられますが、服は無事でしたので今回は違うでしょう」
「…1は傷は受けていないのに衝撃を受けて倒れているのは、おかしいと思い、ます。3は魔道具の反応が無かった、ので、違うと思います……」
「それもそうですね。となると2ですか…そんな事例は初めて聞きましたが確かめてみないとなんとも言えませんね。」
スマイト、ロンに続き、控えめにエディが意見を述べる。3人は話しながら室内を調査し鍵を閉めてから職員室へ戻った。
「あー、つっかれた」
「まだこれから報告書を書かなければいけません。スマイト先生は彼女のデータを纏めていただけますか?後、授業を受け持っていたらその様子も書いておいて下さい。彼女の魔法実技に関しては私が受け持っていましたのでこちらで纏めます。エディ先生はトルネードの魔法について纏めて下さい」
「…はい」
最年少のロンが担当を割り振り3人は作業に取り掛かった。各自纏めたものを報告書として再構築した結果、彼らが開放されたのは月が夜空に輝く頃だった。
楽な出勤日かと思ったら急に問題が起きて残業する羽目になる感じです。
まだまだ序盤です。