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伯爵令嬢はチート転生者  作者: 猫柳 鉄平
第一章
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生徒指導室

 机を挟んで目の前にはロン先生、その横にはスマイト先生。私の後ろにある扉の近くにはエディ先生が机に向かって座っている。エディ先生は記録係のポジションらしい。先ほど実習室の鍵は返却した。


「それで、貴女はどういった風の魔法を使ったのですか?そもそも貴女は魔法は使えなかったと記憶しておりますが、その辺も合わせて説明してください」


 魔力がありながら魔法を使えない生徒は稀だからか、私が名乗るとロン先生は渋い顔をしている。


「風が地面から空へ回転しながら周囲のものを巻き込み、上空へ巻き上げる感じをイメージした魔法を使いました。私は魔法を使えませんでしたが練習を怠ったことはございませんわ。本日は帰省する前に練習しておこうと実習室をお借りして、初めて魔法を使うことができましたの。それで教科書に載っている以外の魔法を試してみようと発動したのが、先ほどご説明させていただきました風の魔法ですわ」

「……回転しながら上空へ巻き上げる風魔法。トルネードですか?!いやしかし今日魔法が使えるようになった人者が……」


 ガタッと机に手を突いて立ち上がるロン先生はなんかぶつぶつと呟いてる。

そういえば竜巻はトルネードか!ってかトルネードっていう魔法あったんだね。教科書には無かったんだけどなぁ、オリジナルじゃないのが残念。


「珍しい魔法か?」

「そうですね。危険な魔法なため学生に教える魔法ではありません。魔術ギルドに加入している者ならば存在は知っているかと思いますが、魔力の消費が激しいため使える者は限られます」


 スマイト先生の質問にロン先生が答える。ふむ割と高等的な魔法だったのかな。気象系の魔法は安易に使わない方がいいのかもしれない。


「使用した魔法がトルネードだとすれば、結界が破られたのも納得がいきます。が、貴女は何故トルネードを使えるのですか?」

「何故と言われましても困りますわ。私はイメージを魔法として発動させただけですもの」


 食い下がってくるロン先生にツンとした感じで答える。気持ちはわからなくもないがしつこい。お昼を過ぎて大分経つし、そろそろ寮に戻らないとセシリアが心配しているかもしれない。


「私、戻らなければなりませんので、失礼させていただいてもよろしいでしょうか?これ以上遅くなりますと侍女が心配いたしますので」

「待ちなさい。その魔法を見せてください。確認ができたら帰ってもかまいません」

「ロン!そんな危険な魔法を使わせるのか?!」

「事実確認が取れないまま帰すわけにはいきませんし、今度は私もエディ先生もいますから安全面では問題ないでしょう」

「貴女もそれでいいですね?」


 仕方無しに私は頷いた。検証は魔法実習教室で行われるらしい。結界も実習室よりたくさん張られているし、広いから対応もしやすいとのこと。

教室に着くと先生達が準備をはじめた。スマイト先生は暇そうなので話しかけてみた。


「スマイト先生、実習室を壊してしまいましたが何か罰はあるのでしょうか?」

「ん?いや無いな。通常結界が全て破られてしまう事なんかほとんどないらしいぞ。それに破られてしまう結界にしていた方が問題だからな」

「そうですか、安心いたしましたわ」


 スマイト先生はニカッと笑いながら答えてくれた。授業中は厳しいけどいい先生だと思う。

しばらくするとロン先生とエディ先生が戻ってきた。


「お待たせしました。あの的に向けて魔法を放ってください」


 と、ロン先生はターゲットを指差したので私は頷いた。

杖は持っていないので右手をターゲットに向け魔法を唱えた。


「暴風よ全てを飲み込め、竜巻!」


 実習室と同じようにゴゴゴゴゴと言う地鳴りと共に風が渦を巻きだすと、ターゲットを根こそぎ巻き込んであっという間に竜巻は天井まで達した。

本来の竜巻は空から地上まで降りてくるから今の状態だと大きさがちょっとしょぼいなーなんて思っていると、竜巻はどんどんと大きくなっていく、天井を押し上げようとする竜巻と結界が衝突しているみたいだ。先ほどと同じく結界に亀裂が入る音が聞こえてきた。


「まずい!エディ先生結界を!!」

「…はい!」


 ロン先生とエディ先生は壊れそうな結界を修復を始めるが、竜巻の威力と拮抗している様で一進一退していた。


スマイト先生は「こりゃいかんな」と私を庇う様に抱きしめてくれた。くんかくんかすると汗と香水が混じりあった匂いがした。異世界はサービス過剰なり。


「くっ、エミル=ヴォルスト!魔力の供給を止めなさい!!」

「へ?」


 ロン先生が修復の合間を縫って怒鳴ってきた。魔力の供給ってなんぞや?魔法って唱えたら魔力を消費して終わりじゃないの??

ポカーンしている私にスマイト先生の声が「わりぃな」と小さく聞こえたと思ったら意識が無くなった。



 気がつくとそこはまだ実習教室で、私を見下ろすスマイト先生の顔が見える。気を失ってからそんなに時間は経っていないようだ。なんだか首の後ろが痛い。手刀でも叩き込まれたのだろうか?

実習教室の結界はなんとか保たれていたから、そこまで大事には至らなかったのだろう。スマイト先生は地面に横になった私の体の上半身だけを支えるように持ち上げてくれている。


「えっと、あの。倒れてしまったようでご迷惑をお掛けしました」

「いや、気絶さえたのは俺だ。悪かったな」



 立ち上がろうとする私を支えてくれるスマイト先生。少し離れたところにぐったりと座り込むロン先生とエディ先生が見えた。


「先生方は大丈夫ですか?」

「結界張るのに魔力をちょっと使いすぎただけみたいだから、平気だろう」

「検証は終わりましたから、帰っても宜しいでしょうか?」

「ん、ああ。大丈夫だろうが……さっきの魔法は使わない方がいいな。新年度が始まるまで魔法の練習は教科書の初級魔法だけにしておけ」


 スマイト先生は最もな忠告と共にポンポンと頭を撫でてくれた。スキンシップが多い気がするけど人柄のなせる業か悪い気はしない。

「失礼します」と告げて寮に戻ることにした。告げていた時間よりも大分遅くなってしまったので、お説教タイムが待っている予感がして気づいたら足早に駆けていた。


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