表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢はチート転生者  作者: 猫柳 鉄平
第一章
25/31

閑話:エミルの春休み

「・・・でだな・・それで・・・・・」

「まぁ・・・さ・が・・・・・さま」


 ガクッっとした落下感でハッと顔を上げると、苦笑をしている貴族のご子息やご令嬢達がこちらを見ていた。

し、しまった!これはどう見ても100%私が悪い。お茶会の最中に寝落ちとかあぁぁぁぁ!!!しかもホストファミリーはヴォルスト家。つまりうちなわけでして、その娘が寝落ちとかありえない!やっちまったけどありえないっ!!


「エミル嬢、私の話は退屈でしたか?」

「も、申し訳ございません。その…最近寝不足でして……。大変失礼いたしました」


 伯爵家のお坊ちゃんが嫌味を言ってきたので、即効立ち上がって頭を下げた。本当に申し訳ない。ああ、両親が遠くから睨んでいるのがわかる。母よ目が笑っていませんぞ…すみません。本当にすみません。

ただね、学園の寮に引きこもっていた私を、急にお茶会なんぞに引っ張り出しのがそもそもの間違いだから。人見知りを大勢の知らない人の前に連れ出して、お茶するとかありえないから。一番ありえないのは私ですけどね、すみません。


 とりあえず、この場は誤魔化す…と言うか、意識を他の方へ向ける作戦を実行することにした。


「キャロライン様、少し寒くはございませんか?」

「ええ、少し……」


 一緒のテーブルでお茶をしていた子爵家のご令嬢に微笑みながら話しかける。このサロンは広く片面ガラス張りのホールで、天井も高く室温の調整が難しい。そして今年は例年に比べて気温が低く薪ストーブや暖炉では少し足りなかったようだ。


「<エアコン:暖房:設定温度25度>」


 私は小さな声で魔法を唱え、室内の気温を上げる。この魔法は非常にイメージしやすい。科学万歳!


「まぁ!暖かくなりましたわ。もしかして今のは魔法ですの?」

「はい、キャロライン様。中々室内が暖まらないようでしたので、魔法で気温を上げさせていただきましたわ」

「さすが、殿下のお命をお救いになられた方ですわ!他にはどんな魔法をお使いになられるの?」

「ああ、私も知りたいな。他にはどんな魔法を?」


 イエス!釣り針に食いついた!キャロラインだけじゃなくお坊ちゃんも話しに乗ってきたし、あと何個か魔法を見せたらさっきの失態は無かったことに…はならないかもしれないけど、記憶には残らないかもしれない。


「簡単な怪我を治す魔法は使えますが、まだ勉強中の身ですので……」

「殿下をお救いになったと言ってもたいしたことは無いのだな」


 本当の事を言う必要も無いので、あまり魔法は使えないんですよっていう雰囲気を匂わすと、お坊ちゃんがふふんって感じで見下してきた。そういえば聞こえてきた会話も自慢話ばっかりだったなーとか。いや船漕いでたからちゃんとは聞いてなかったんだけどね。


「未熟でお恥ずかしい限りですわ」

「全くだな。私の父上は数十本の木々を一度に伐採することが――」

「ですから、私にできるのはこれくらいですわ」


 謙遜してみると、お坊ちゃんがうちのパパは凄んだぞっと自慢してきたので、最後まで言い終わる前に口を挟み大きい声で魔法を詠唱する。


「数多なる星々よ、我が命に従いその輝きを投影せよ<プラネタリウム>」


 サロンの天井に夜空が広がると、急に天井が夜空に変わったことに驚いたのか室内がざわめく。ちらっと父を見るとなんとなく満足気な表情をしていた。


「私の魔法はいかがでしょうか?」

「素敵だわ!私のお茶会でも是非お願いしたいですわ」


 きらっきらと眼を輝かせながら夜空の天井を見上げて「家に来て魔法を使って」と言ってきたキャロライン。私は便利屋ではないのでお断りだ。


「な、なかなかやるじゃないか」


 お坊ちゃんはなんだか引き気味だった。パパは凄いのではなかったのかな?さっきのは話を盛ったのかもしれない。

そんなこんなで寝落ちしたことを誤魔化しつつ、お茶会終了により私は学園の寮へと戻った。




 お茶会で寝落ちという大失態をやらかしてしまったけど、寝不足なのには理由があるわけですよ。それは夜な夜な出歩いているから……と言うと人聞きが凄い悪いけど、人に言えない事をしている自覚はある。

王都の周辺……と言っても馬車で半日位かかる距離に廃鉱山があり、夜中に鉱石を掘りに行っているからだ。廃鉱山と言えども普通に犯罪なので良い子は真似しない様に。


 どうして鉱石を掘りに行っているのかと言うと、屋敷(実家)からこっそり持ってきたロングソードが魔法付与に耐えられず、折れたり腐食してしまったりと役に立たなかったから。本来なら武器屋で魔法に耐えれる剣を購入するのがセオリーなのだけど、私にはそんなお金がない。伯爵令嬢と言っても私がお金を稼いでるわけではないし、おこずかいで足りる程安い武器ではない。ならば作ればいいじゃないって発想で、魔力を含んだ魔鉱石を採掘するべく鉱山に入り浸っている。


 魔法を使って魔鉱石の鉱脈を見つけたものの、貴重な鉱石なだけあって採れる数が少ない。地中を<スキャン>したり、魔鉱石には魔力が含まれているので<魔力探知>で探ってみたりと、くもの巣のように張り巡らされた鉱山の中を毎夜うろうろしているわけ。そりゃ寝不足にもなろうってもんですわ。

行き帰りは<ワープ>で一瞬だから移動時間が掛からないのは楽でいい。


 魔鉱石を掘りにいったり、学園でばったり会ったロン先生に用事を押し付けられたり、たまにお茶会に連れ出されたりしながら日々は過ぎていき、ようやく魔鉱石が必要量揃った。いよいよロングソード2本とその鞘、バックラーの作成に入る。


 魔鉱石は超貴重な鉱石だけど、魔力を込めながら魔法で練り上げて鍛えることで国宝級の武器防具になる。と、読んだ本には書いてあった。魔力を込めて作ることからそれなりの魔力を持った魔法使いでないと作れないらしい。ちなみに魔鍛冶師という職業があるらしいけど、魔法使いが少ない今ではなかなかお目にかかることができない職業だ。

ちなみに鞘まで作るのは、剣の切れ味が良すぎて普通の鞘だと鞘まで切ってしまうからとのこと。


 魔力は有り余るほどあるし作成は何事も無く終わった。必要以上に魔力を練りこんでしまった感はあるけど、その方が切れ味も上がるし、魔法付与したときにも威力を増して使えると本に書いてあったので問題はないと思うたぶん。念のため登録をした持ち主しか使えない様にしておいた。誰でも使えると危ないし、殺してでも奪い取る的なことがあっても困る。


 剣は刀身から柄まで魔鉱石で作られていて、ダマスカスブレードのようなミルフィーユ状の波紋が美しい。バックラーも同様。色は黒に近い紫色をしていて、波紋の線が虹色に輝いている。プレゼントにも最適!納得の一品です!


 こうして私は春休みを魔鉱石と戯れることに使い、まもなく2年目の学園生活が始まる。

お待たせしました。

プレゼント先は当然あのお方です。

次回から学園にやっと戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ