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伯爵令嬢はチート転生者  作者: 猫柳 鉄平
第一章
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舞踏会6<アルシェイド>

 彼女の存在をはじめて知ったのは、カイシュがハインツ学園で起こした問題と言うか事件と言うべきか。ともかく、その時にカイシュ達が追い詰め倒れた女生徒の名前がエミル=ヴォルスト伯爵令嬢だった。まだその時は、気にする必要もない生徒A(ただの被害者)としか認識していなかったかな。


 次に彼女の名前を見たのは、ハインツ学園に潜入させている者からの報告書で、つい数日前まで魔法が使えなかった生徒が<トルネード>を数時間の間に2回使用したというものだ。正確には魔法名を<たつまき>と詠唱していたようだけど、魔法としては<トルネード>と同じだったらしい。たつまきとは一体どこの国の言葉なのか少し気になった。

 それにしても、<トルネード>を2回放てるほどの魔力を持っている者はそう多くはいないから、監視とまではいかないけど彼女に関する情報を集めさせることにした。

しばらくして彼女が誘拐されて、誘拐団を壊滅させたとの報告が上がってきたときには驚いたよ。しかもリーダーは技能(スキル)持ちだったとは、よく彼女は生きていたものだ。技能(スキル)は苛酷な環境下で育ったの者に現れやすいと聞くが、魔力持ちと違って隠されていたら判別するのは非常に困難だからね。


 そして今日実際に彼女と会って話し、守られた。まさかシャンデリアが落ちてくるとは思わなかったなぁ、不穏な気配はしていたけどシャンデリアを落として殺そうとするとは、あちらさんも中々やるね。最も僕には防御結界が張られているから彼女に守ってもらわなくても生きていたとは思うけど。


「おい殿下、何ぼやっとしてるんだ?」

「ん。ああ、すまない。少し考え事を」

「ぼやっとしていたなんて珍しいですね。あ、陛下達は傷ひとつなくご無事でしたよ」


 シャンデリアの下から助け出された後、引きずるようにして王族専用部屋の一室に連れて来られて、怪我がないかとか結界が破られてないかとかあちこち確かめられた。されるがままに頭だけを動かしていると、私の幼馴染であり専任騎士のバルゴが話しかけてきて、私が問いに答えると同じく専任騎士のティティが父上達の安否を教えてくれた。


「なぁ、バルゴ」

「なんです殿下?」

「"あっぶな……!!死ぬかと思った……"というのは市井の言葉か?」

「あー、まぁそんな感じですかね?どこでそんな言葉を聞いたんです?」

「伯爵令嬢の口からかな」

「ぶふぉ!殿下、俺をからかうのはやめて下さいよ。貴族のご令嬢様がそんな言葉を使うわけないじゃないですか」

「そうですよ殿下。バルゴの脳みそが筋肉だからって、そんな雑なからかい方はひどいと思いますよ」

「おい!ティティ!!!誰の脳みそが筋肉だって!?」


 彼女はその言葉を思わず口にしたって感じだったから、きっと素はあっちのほうなのだろう。しかし、箱入り娘の彼女があんな言葉をどこで覚えたのかは少し気になるところかな。調べさせた報告書にはほとんど屋敷の外に出たことがなく、学園に入ってからも街に出かけたのは倒れた後と誘拐された時の2回のみとのことだし……。ぎゃーぎゃーとバルゴとティティの口喧嘩が煩くなってきたので黙らせて、従者のオクトに宮廷魔法師団長のルーベックを呼ぶように告げ、ティティに彼女を連れてくるように告げた。


 ティティに連れて来られた彼女は迷惑と言った表情を浮かべながらもこちらの質問に答えてくれた。まぁ質問なんて何の意味もなくてルーベックと彼女の魔力比べが本題だからね。犯人の目星は大体ついてるし、状況的にも彼女の自作自演はありえない。


 ルーベックとの魔力比べは彼女の圧勝だった。ルーベックが膝をついた時には冷や汗がでた。ご高齢だからね、こんな腕試しみたいな事で逝かれたら陛下にどんなお叱りを受けるかわかったもんじゃない。我が国はまだルーベックと言う高名な魔法師を失うわけにはいかない。用件が終わった彼女を部屋から下がらせ、ルーベックに問う。


「ルーベック、彼女はどうだった?」

「信じられない魔力量ですな。私の軽く数倍は保有しているかと思われます」

「へぇ、ルーベックを軽く凌ぐ魔力の持ち主か。うん、いいね。ありがとうルーベック、もう下がっていいよ」

「はい、殿下。失礼いたします……あまり事を急きませんよう」

「うん、わかっているよルーベック。心配をかけるね」


 ルーベックはすっと立ち上がり部屋から出てくれた。ルーベック以上になるかもしれない人材とは最高の原石だね。


「……殿下、悪いお顔をしていらっしゃいますよ」

「ん?そうか?」


 お茶を入れなおすオクトに言われ、思わず口に手を当ててにやけているであろう顔を隠すと、ティティが思い出したかのように話しかけてきた。


「あれ、でも確かエミル嬢は、グローグ騎士公爵子息のギルバルドから、婚約を申し込まれているのではありませんか?」

「そうだったね。彼女がグローグ家の女主人になって家を守るために屋敷に引きこもるなんて、魔法使いの無駄遣いだと思うよ」

「はい、膨大な魔力を持つ魔法使いなのに屋敷に引きこもるなんて、もったいないとは思いますが……」

「だからさ、その婚約は受け入れないようにヴォルスト家に圧力でもかけようか。オクト上手いことやっておいてくれ」

「はい、殿下。お任せください」

「あーそれと、私は専任魔法使いじゃなくて侍女が欲しいな」

「……アル、お前はまた……なんで侍女なんだ?魔法使いでいいだろ?」

「バルゴはわかってないなぁ。おおっぴらに知られてしまっては面白くないじゃないか」

「殿下、あんたってひとは……。遊んでる場合じゃないでしょーに」

「ハハハ、まぁいいじゃないか。楽しめるのは今のうちだけかもしれないからね」


 彼女を私の侍女にして、専任魔法使いは別で用意しよう。侍女のほうが何かと動かしやすいだろうからね。

お待たせしてしまい申し訳ないです。

今月は週0~1回の更新になりそうです。

なるべく更新できるように書かせていただきます。

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