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伯爵令嬢はチート転生者  作者: 猫柳 鉄平
第一章
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舞踏会2

「セシリア、ちょっと良いかしら?」

「はい、エミル様いかがいたしましたか」


 私はちょいちょいと手招きをしてセシリアを近くに呼び、 B6サイズ位の柔らかい皮で出来た巾着を渡した。


「あげるわ」

「わぁ嬉しいです。ありがとうございます!」

「その巾着なんだけど魔法道具(マジックアイテム)だから使い方を教えておくわね」

「ええ?!魔法道具(マジックアイテム)なんて高価な物をいただいてしまっても宜しいのですか?」

「私が作ったものだから気にしなくていいわ。それじゃ説明するわね」

「はい、お願いします」

「これはインベントリと言って空間収納が出来る物なの。空間収納というと難しいけど、どんなに重たいものでも大きいものでも収納することが出来るのよ。例えば椅子やテーブルなんかも収納する事が出来るわ」


 そう言って私は近く似合った椅子をセシリアの持っている巾着に入れる。入れるといっても物理的に入るわけではないので巾着の口に椅子を近づけると消えた様に見える。


「ええ?椅子が消えてしまいました!?」

「セシリア、巾着の口に手を添えて椅子を取り出そうとしてみて」

「はい」


 セシリアは私の言ったとおりに巾着の口に手を添ると椅子が現れた。


「!!」

「うん、出来たわね。こんな感じで物を入れたり出したり出来るアイテムなの。しかもこのアイテムの素晴らしい所は時間経過による劣化がないところよ!だから野菜や果物を入れておいても腐らないの」

「素晴らしい物ですね!本当に私がいただいてしまっても宜しいのでしょうか?」

「もちろんよセシリア。是非貴女に使って欲しいの!これから王都に戻るのに荷物をたくさん持っていかなければならないでしょう?私、セシリアに重たい思いをして欲しくないもの」

「エミル様……ありがとうございますっ!大切に使わせていただきます」


 感動したのか少し涙目のセシリアがぎゅうぎゅうと抱きついてくる。たわわに実った二つの果実がとても柔らかくて気持ち良いです。ぐへへ。

と、おっさん的な妄想は後にして、渡したポーチは私とセシリアのみが使えること、<インベントリ・リスト>と唱える事で収納されているアイテムの一覧と残りの空き数が見れること、あまり人前では使わない方が良いことを伝える。

ちなみに自分用には宝石の付いたブレスレットタイプのインベントリを装備済みで、中には骸骨デザインの杖『イビルスタッフ』や前に買った街着、家の倉庫から勝手に拝借した年代物の剣や盾、防具等を格納済みである。埃被ってたし持っていったところできっとバレないはず。後は飲食料を後ほど入れておこうと思っている。


「はぁ、それにしてもこんなに早く王都に戻る事になるなんて思っていなかったわ。セシリアには面倒をかけるけど準備お願いね?私は舞踏会が終わったら学園の寮に戻る予定だから、そのつもりでお願い」

「はい、かしこまりましたわ。エミル様」


 セシリアはにっこりと微笑み、一礼してから王都へ向かう準備を始めた。


 王都にはヴォルスト家が所有する屋敷があり、両親は社交界シーズンの間その屋敷で過ごす。舞踏会までの間は両親と共に王都の屋敷で過ごし、それ以降は学園に戻る予定だ。領地の屋敷()に戻ってもすることないし、学園にいれば魔法の練習とか資料とも読めるので休みを有意義に使えると思う。



 慌しく日々は過ぎて王都に出発する日がきた。馬車は5台で馬車の周りに護衛も付く。今回兄夫妻はお留守番なので、私はエスコート役を引き受けてくれたレイン兄様とセシリアと同乗する事になった。ちょっとした癒し空間ですね!

さぁ馬車に乗り込むぞ!ってときに背後から声をかけられ足を止めた。


「エミル()姉さま……」

「ハル?どうかしましたの?」

 

 明らかに怯えている様子のハルが顔を伏せたまま話しかけてきた。トラウマってやつですか?


「その……。この間は助けていただきありがとうございましたわ。……またお会いできる日をお待ちしております」

「たまたま私が力を持っていて、たまたま運良く助かっただけですもの。気にしなくで頂戴。……そうね、また会える日がくるといいわね」

「いってらっしゃいませ」

「いってくるわね」


 ハルは勇気を振り絞ったのか、顔を上げて引きつる笑顔で見送ってくれた。以前とは違う態度に驚いたけど、彼女の中で何か変化があったのかもしれない。人は日々成長していくんだなーと思わず遠い目をしてしまった。






 王都まで約4日の馬車の旅を経て何事もなく屋敷に到着した。

舞踏会当日は髪のセットやお化粧、着替え等で慌しく時間は過ぎていき、昼過ぎに父母の馬車に続きレイン兄様と馬車で舞踏会場へ向かった。今日のレイン兄様は紺色のゲームに出てくるコスプレ燕尾のような服でとてもカッコいい。デジカメで保存しておきたいぜ!ぐふふ。とレイン兄様を見ていたら、セシリアに白い目で見られた。なぜだ!!


 会場について控え室?に通された後、名前を読み上げられてから会場に入る。会場の中へ入る時に空気の層のようなものを感じた。たぶん何重にも張られた結界だろう、学園の結界とは桁違いの厳重さだ。


 巨大な会場は長方形の造りで最奥が半円状になっている。半円状の所は床より1m程高くなっていて豪華な椅子が並べられていた。恐らく王族が座るのだろう。

会場の真ん中に巨大なシャンデリアが吊るされていて、その周りにも中小のシャンデリアがキラキラと輝いている。柱や壁にも美しい彫刻が施されていて、豪華絢爛っぷりに目を見張るばかりだった。


「エミル?行くよ」

「あ、はい」


 レイン兄様に促されて会場の端の方へ向かっている間も、次々と名前が読み上げられ招待客が入ってくる。1時間以上経った頃、最後に王族の名前が読み上げられ奥の席に着いた。今回は王と王妃、第一王子とお妃様、第三王子が参加していて、第二王子は遠くの国に留学中なので不参加。王のスピーチが終わり王と王妃のダンスの後、王子達のダンス、そして貴族達がダンスする流れだ。


 第一王子のパートナーがお妃様なのはもちろんだとして、第三王子のパートナーがビッチちゃんだったのは驚いた。てっきり婚約者のご令嬢かと思ったんだけどこれは大丈夫なのか?婚約者様もいらっしゃっているのにね……。


 私も1曲レイン兄様と踊って後は気配を消して壁の花に徹する構えだ。<インビジブル>で姿を消したい気分だけど試したら結界の所為で発動しなかった。残念。

そうこうしている内に、レイン兄様はどこかのご令嬢とダンスを踊る事になったようで「ちょっと言ってくるね」と言い残し、ダンスの輪の中へ入っていった。


 第三者目線で華やかな雰囲気を堪能していると、第三王子のカイシュとビッチちゃんとギルバルトが護衛の騎士を伴って近づいてきた。この人数からよく見つけましたね。その力をもっと別の所で有効活用していただきたいものだ。

お読みいただきありがとうございます。

次は早くて日曜夜になると思います。


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