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伯爵令嬢はチート転生者  作者: 猫柳 鉄平
第一章
15/31

誘拐6

 <ヒール>!

 <アンチドート>!

 <スキャン>!

 <解毒>!

 <ポイ○ナ>!

 <スキャン>!


 くそっ!!傷は浅かったから直ぐに治ったのにどうして解毒ができないのか?医療の知識がないからだと思っていたけど、今までの魔法だって全ての事象を理解して使っていたわけじゃない。イメージさえ出来ていれば思い通りに魔法は発動したのに、なんで……。






 ほんの十数分前、私はレイン兄様の声に従って手を上げながら家の外に出てレイン兄様と再会した。私は血塗れにも関わらず優しく抱きしめてくれて「……無事で本当に良かった」と言ってくれた。ハルと他の子たちの救出を願うと、騎士の人達が動いてくれて安心したところだったのに。


 「!!エミルっ!!!」


 耳元でレイン兄様が叫ぶと、体をくるっと180度回転させられた。呻くレイン兄様の先には先ほど倒したボス(仮)が、上半身を持ち上げにやりと笑っている男を近くに居た騎士が取り押さえているのが見えた。

膝から崩れ落ちる兄様をなんとか支えて、ゆっくり地面に下ろすとレイン兄様は「エミル……毒だから、ナイフにはさわらない……よう、に」と言い、意識を失った。


 私はハンカチ越しにナイフの柄を掴み、レイン兄様の体から引き抜いた。じわじわと血が流れ出てくる。

<ヒール>で傷口を塞ぎ、解毒の魔法(アンチドート)をかけて<スキャン>で様子をみるが、解毒されていなかった。ゲームなんかで頻繁に使用していた魔法だけれど、私の中でイメージがちゃんと出来ていなかったのかと思い、もっと直接的な言葉<解毒>やゲームの呪文を試みたがそれも失敗だった。

光の回復系魔法をうまく使えないのであれば、あの魔法を使うしかない。


「<ロールバック・アンチドート>」


 肉体の時間を巻き戻す魔法。念のためロールバックの部分は小声で呟いた。派手な歯車のエフェクトがレイン兄様の体の辺りに現れ、肉体が毒に侵される前まで戻る。周囲の視線が気になるがそれどころではない!エフェクトが消えると同時に<スキャン>で体の状態を調べると、レイン兄様の状態は正常に戻っていてピクリを体を動かした。


 私はレイン兄様の体を近くにいた騎士に預けると、拘束されているボスの所へ向かった。周りの騎士がなんか言ってるけどそんなもん知ったこっちゃない!やられたらやりかえす倍どころじゃ済まさねー!

ボスの両足をボロボロにしてしまったので、両脇を騎士に抱えられている様子は捕らえられた宇宙人状態だった。


「大人しく寝ていた方が良かったのにね」

「お嬢ちゃん危ないから下がって!」


 私はボスの前に立ち、満面の笑みでボスに話しかけた。心配してくれているのか邪魔なのか、騎士が横から口を挟んできたけど無視する。


「あの時、もっと早く私を殺していれば良かったのに。判断ミスだったわね」

「お嬢ちゃん下がれっ!!!」

「…………化け物が……」

「んん?化け物とは随分な言い様ね。貴方には何が見えているのかしら?貴方には何かを見抜くような特別な技能(スキル)をお持ちなのかしら?まぁいいわ。どちらにしても貴方が失敗してしまった事に変わりは無いもの」


 周りの騎士が私をボスから離そうと手を引いてくるのを振り払い、ボスの前に手をかざす。


「”この痛みは汝を蝕み、痛みにより狂う事も死ぬ事も許されない、唯一の安らぎは真実を述べた一時のみ慈悲を与えよう。永遠(とわ)に痛みを知れ”<ペイン>!」


 痛みが永続的に続く呪詛の様な魔法をボスに放つと、ボスは狂ったように叫びだし痛みに耐えかねたのか、騎士の拘束を振りほどこうと暴れる。


「ざまあねーな」


 くくっと笑い思わず本音が出てしまったけど、呟きだったので聞こえてないはず。私はボスの近くから数歩離れると拘束している騎士の人達に注意点を伝える。


「えっと、その人に痛みが続く魔法をかけました。質問に対して真実を答えた時は一時的に痛みが消えますので、逃げられないようにして下さい。と言っても足がその状態では逃げられないと思います」

「え、あ。あぁ……」


 ペコリと私が頭を下げると、なんとも言えない微妙な表情で騎士の人達は相槌を打ってくれた。

レイン兄様の所に戻ると、助け出されたハルが意識の戻ったレイン兄様に抱きついて泣いていた。感動の再会ってやつですな、私もさっきやったから悔しくなんかないんだからね!


「あ、エミル!僕の事を治療してくれたんだって?ありがとう!!死ぬかと思ったよ。魔法使えるようになったんだね」

「いえ、出来る事をしたまでですわ」


 レイン兄様はハルを抱きしめたまま、笑顔で迎えてくれた。ハルは少し怯えた目でこちらを見ている。そ、そうだよね、姉が人殺しで血濡れの服着てるとかドン引きどころか普通だったら近寄りたくもないよね。わかります。





 それから私と保護された少年少女らは一時的に、エディバラ騎士団の宿舎に保護という名の監禁をされている。監禁は私だけかもしれないけどね!ぷるぷるぼくわるいにんげんじゃないよ!

やっと外に出してもらえたと思ったら、事情聴取のお時間の様です。正面には騎士団長、その横には副団長、私の後ろには書記と監視っぽい騎士が2人。


「攫われていた子供達は君を含めて7人。犯人は死亡7名、重症4名、軽症他4名だ。合っているか?」

「子供は私とハルを覗いて5名だったのであっていますわ。犯人の方は何人か殺しましたが、人数までは覚えていませんの」

「どうやって犯人と戦った?」

「魔法ですわ。何かおかしな点でもありますかしら?」

「おかしな点だらけだ。地下2階の魔法封じの魔方陣付きの部屋はボロボロになっているし、指名手配されている魔法使いが魔力切れで檻に入っているし、ゴロツキとは言え大の大人が10名以上もやられている。あまりにも一方的だ」

「そうでしょうか?魔法を使えばそれくらいの事は誰でもできるかと思いますわ。手加減が出来なくて結果的に多く殺してしまった事は申し訳ないですが、命にはかえられませんもの。まさかあの状況で手加減しろとはおっしゃいませんよね?」

「まぁ、それはそうだが……」


 団長が何を不審に思ってるのかがさっぱりわからない。ここは私がヒーロー扱いされてもいいくらいなのではなかろうか?

もしかして誘拐は自作自演とか思われているのか?いやいやそんな馬鹿な、そんなことをしても利点が一つも無いじゃないか。


「んー。そうですわ!犯人のボスには話を聞かれましたか?」

「ああ」

「そうですわよね。真実を話せば痛みを和らげますもの!でしたら私は何を問われてここの居るのでしょうか?事実確認であるならこれ以上お話することはございませんが?」

「そうだな……時間を取らせてしまってすまない。これで事情聴取は仕舞いとする。お屋敷に戻れるよう手続きをさせていただこう」

「ありがとうございます。では失礼いたしますわ」


 一礼して部屋から出ようとすると団長の深いため息が聞こえた気がした。結局団長が何を聞きたかったのか今ひとつわからなかったなぁ、私一人で戦ったかどうかを知りたかったのだろうか?盗賊団位は狩れないと、小説で好きだった貧乳魔導師少女には追いつけないのぜ?



 そんなこんなで、年末の買い物のはずが年を明けてしまったけれど、無事に屋敷へ帰ることが出来た。長い買い物でした……何も買ってないけどね!

誘拐話はこれで終わりです。

もう1イベントあってから学園の話になる予定です。

ブクマ等ありがとうございます!

※9/13誤字修正

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