表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

独り友達

作者: TEXTER(現代視覚文化研究会 - 奈良高専)

現代視覚文化研究会で書いた…何作目か忘れました。

今回はたいへん短いですが、読んで頂けるととてもうれしいです。

僕には友達がいない。

そんなもの、足かせにしかならない。


僕は友達を知らない。


今日も朝。

親に盛大に見送られて、朝が始まる。気のせいだが。

朝は午前0時からと定められているんだ。それ以上でも、それ以下でもない。


僕の通う中学校までは近い。校門も、家を出て、角を曲がったところにすぐ見える。

僕は、学校に通う意味なんて知らない。ただ、通えと言われ、通わないと家を追い出されるそうなので、生活のために通っている。

仕方のないことだ。学校で学ぶことなど何もないというのに。


教科書の内容を読み上げるだけの先生が通うところが中学校なら、僕は家に帰って自分で教科書を読む。その知識が将来必要なことは分かっているから、自分でしっかり勉強はできる。


だから何のためにあるのかわからない。

いじめも受けないし、しない。ただ人から話しかけられないし、話しかけない。

それだけだ。何故か担任は心配していたが、正直喋るのも嫌なので、大丈夫だ、で押し通した。


これでいい。僕はこの生活に文句はない。多少学校に通わされること不満はあるけれど、大した問題ではない。


イメージなんて気にしない。ただ、学んで、進級して、進学して、就職して。それさえできれば素晴らしい人生だ、と考えていた。

この日までは。


今日は曇天だった。今にも雨が降りそうだが、僕はお構いなしになんの雨雲持つことなく出発した。

今日は親が急用で朝いなかった。別に気にしてはいない。

きっと寂しいなんて思ってない。


校門をくぐる。

いつも挨拶を強要してくる先生がいない。

むしろ都合がよい、と僕はため息をついた。

きっとおかしいなんて思ってない。


おかしい所なんか何もない。

寂しいことなど一つもない。

がらんどうの教室に1人、佇むは僕一人。

ただひたすらに、教科書を読んでいる。


因数分解の公式。学校の授業より1年と半年ほど先行している。

しかし僕には分かる。

僕は友達と話すなど、無駄な時間を使わなかったから。

僕は必要なことだけをやってきた。

僕は勉強してきた。だからいくら先のことだって分かる。

いずれは大学の勉強も…


ひとつぶ、輝くものが床に落ちた。

でも、きっと悲しくなんかはない。


僕はあたりを見回した。

クラスメイトは誰もいない。

先生も来ない。

というか、人気がない。

まるで、人がこの世から消えたような―そんな感じ。


僕は黙々と教科書をめくっていた。

内容は簡単すぎて頭に入ってこない。

高校の参考書を出すか、と鞄を探る。

家に忘れてきたらしく、入っていない。僕は、僕が忘れ物をすることなんかあったか、と首をかしげたが、取りに帰ることにした。


家は近い。

角を曲がるとすぐに家だ。

やはり家族は帰ってきていない。

僕は持っていた家の鍵で家に入ろうとした。

……鍵が合わない。

鍵には、イニシャルも入って、確実にこの家のもののはずなのに、合わない。

僕は家に入れない。

僕は、そばにあった拳大の石をつかんで、窓に投げた。

割れる、と思ったが、ダイヤモンドか、と突っ込みたくなるくらいすっきりと、跳ね返った。

僕は愕然とした。

まるで家が別人のようだ。

冷たい。


「まるで僕のようだ」


口からこぼれた言葉は、湿り気の多い曇天のそよ風に流されていった。

聞く者のない独り言は、僕の心の中にこだました。


僕は何もできない。

ただ、中学の参考書を読むだけ。

何の意味がある。


そうか、僕が生まれた意味など何もない。

評価してくれる人がいないのでは進級も進学もできない。

資本家もいないのなら就職だってできない。

そんな人生に意味などない。


僕は学校の3階に上った。

学校の中が良く見える。

吹き抜ける風は先ほどよりも湿り、雨を知らせる。

僕にはもう、どうでもよい。


深呼吸した僕は、その鉄の棒に足をかけた。

僕の努力はなかった。何の意味も。


僕は、最後に少しだけ笑った。人生で初めて笑ったような気がした。

心から。


そして僕は、前方に体重をかけ、柵の上に乗り、そのまま目の前の空間に身を投じた。


「待って」


後ろから幻聴が聞こえた気がして振り返ると、見慣れたクラスメイトが立っていた。

僕はなすすべもないまま、地面に落ちた。

風切り音で聞こえなかったかもしれない、僕の最期の言葉。


「心配してくれてありがとう」


またどんどん書いてゆきます。

感想・Twitterでのアドバイスがありましたらぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ