独り友達
現代視覚文化研究会で書いた…何作目か忘れました。
今回はたいへん短いですが、読んで頂けるととてもうれしいです。
僕には友達がいない。
そんなもの、足かせにしかならない。
僕は友達を知らない。
今日も朝。
親に盛大に見送られて、朝が始まる。気のせいだが。
朝は午前0時からと定められているんだ。それ以上でも、それ以下でもない。
僕の通う中学校までは近い。校門も、家を出て、角を曲がったところにすぐ見える。
僕は、学校に通う意味なんて知らない。ただ、通えと言われ、通わないと家を追い出されるそうなので、生活のために通っている。
仕方のないことだ。学校で学ぶことなど何もないというのに。
教科書の内容を読み上げるだけの先生が通うところが中学校なら、僕は家に帰って自分で教科書を読む。その知識が将来必要なことは分かっているから、自分でしっかり勉強はできる。
だから何のためにあるのかわからない。
いじめも受けないし、しない。ただ人から話しかけられないし、話しかけない。
それだけだ。何故か担任は心配していたが、正直喋るのも嫌なので、大丈夫だ、で押し通した。
これでいい。僕はこの生活に文句はない。多少学校に通わされること不満はあるけれど、大した問題ではない。
イメージなんて気にしない。ただ、学んで、進級して、進学して、就職して。それさえできれば素晴らしい人生だ、と考えていた。
この日までは。
今日は曇天だった。今にも雨が降りそうだが、僕はお構いなしになんの雨雲持つことなく出発した。
今日は親が急用で朝いなかった。別に気にしてはいない。
きっと寂しいなんて思ってない。
校門をくぐる。
いつも挨拶を強要してくる先生がいない。
むしろ都合がよい、と僕はため息をついた。
きっとおかしいなんて思ってない。
おかしい所なんか何もない。
寂しいことなど一つもない。
がらんどうの教室に1人、佇むは僕一人。
ただひたすらに、教科書を読んでいる。
因数分解の公式。学校の授業より1年と半年ほど先行している。
しかし僕には分かる。
僕は友達と話すなど、無駄な時間を使わなかったから。
僕は必要なことだけをやってきた。
僕は勉強してきた。だからいくら先のことだって分かる。
いずれは大学の勉強も…
ひとつぶ、輝くものが床に落ちた。
でも、きっと悲しくなんかはない。
僕はあたりを見回した。
クラスメイトは誰もいない。
先生も来ない。
というか、人気がない。
まるで、人がこの世から消えたような―そんな感じ。
僕は黙々と教科書をめくっていた。
内容は簡単すぎて頭に入ってこない。
高校の参考書を出すか、と鞄を探る。
家に忘れてきたらしく、入っていない。僕は、僕が忘れ物をすることなんかあったか、と首をかしげたが、取りに帰ることにした。
家は近い。
角を曲がるとすぐに家だ。
やはり家族は帰ってきていない。
僕は持っていた家の鍵で家に入ろうとした。
……鍵が合わない。
鍵には、イニシャルも入って、確実にこの家のもののはずなのに、合わない。
僕は家に入れない。
僕は、そばにあった拳大の石をつかんで、窓に投げた。
割れる、と思ったが、ダイヤモンドか、と突っ込みたくなるくらいすっきりと、跳ね返った。
僕は愕然とした。
まるで家が別人のようだ。
冷たい。
「まるで僕のようだ」
口からこぼれた言葉は、湿り気の多い曇天のそよ風に流されていった。
聞く者のない独り言は、僕の心の中にこだました。
僕は何もできない。
ただ、中学の参考書を読むだけ。
何の意味がある。
そうか、僕が生まれた意味など何もない。
評価してくれる人がいないのでは進級も進学もできない。
資本家もいないのなら就職だってできない。
そんな人生に意味などない。
僕は学校の3階に上った。
学校の中が良く見える。
吹き抜ける風は先ほどよりも湿り、雨を知らせる。
僕にはもう、どうでもよい。
深呼吸した僕は、その鉄の棒に足をかけた。
僕の努力はなかった。何の意味も。
僕は、最後に少しだけ笑った。人生で初めて笑ったような気がした。
心から。
そして僕は、前方に体重をかけ、柵の上に乗り、そのまま目の前の空間に身を投じた。
「待って」
後ろから幻聴が聞こえた気がして振り返ると、見慣れたクラスメイトが立っていた。
僕はなすすべもないまま、地面に落ちた。
風切り音で聞こえなかったかもしれない、僕の最期の言葉。
「心配してくれてありがとう」
またどんどん書いてゆきます。
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