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シリーズ外短編

チートでシスコンな兄貴の作り方

作者: 榎本あきな

チートでシスコンな兄貴の作り方


※本製品は、前もって準備が必要なので、やる前に取扱説明書をよくお読みください。


チートが作りたい…

シスコンを見てみたい…

そんな皆様の願いを叶えるものをお作りしました。

なお、本製品は過去製品をやらなくてもできますが、過去製品をやったほうがさらにお楽しみいただけます。


製作所:トリニティ

価格:4200R(税込)

①原材料を魔王が存在する剣と魔法の異世界に召喚します。

なお、このさい、召喚するのは地球の日本などの結構平和に近い国でないといけません。



え?何ここ。今までスーパーで買い物して、その帰りだったはずなんだけど…。

ほんと、どこだよここ。俺、妹の飯作んないといけないんだけど。

ん?誰ですか。え、俺が勇者様?そんな事あるわけないじゃないですかー。何かの勘違いですよ。

…いやいや、魔王倒さないと帰れないってどういうこと。

俺、妹の飯作ってやんないと。母さんは仕事だし、父さんは事故で死んだから、俺が作るしかないんだけど。

え、ちょ、マジで待って!?俺、帰りたいんだけど!?まだFF買ったばっかなんだけど!?


*****

②原材料に、聖剣と呼ばれるような勇者の剣をもたせます。

この剣には原材料がある程度成長したら身体能力が上がるような機能を付けてください。

それと、抜いた時に剣が光るように細工をしておけば、周りの人々も納得させられます。



そこまで嫌なら、あの剣を抜いてくださいって?抜けなければ私たちはあなたを勇者じゃないと認識して、地球に返してあげます…と?

よっしゃ!こんなでっかい剣を俺が抜けるわけないし、すぐに地球にかえ……えええぇぇぇぇええええーー……。

なんでぇ…。なんでこんなでっかい剣抜けたのー…。俺、結構非力な部類に入ると思ってたんだけど…?

うわっ、眩し!なんなのこのテカリ具合!俺の学校の校長先生の頭みたい!いや、あの頭はバーコードだった。

…えっ、あ、違うから!光ったのは俺が勇者だからじゃないから!絶対に!!ほんと信じてー……。


*****

③勇者にそれっぽい装備を与えて、仲間とお金を少々あげて魔王討伐に向かわせましょう。

鎧などはそれっぽい白銀の鎧などで大丈夫です。また、勇者には命の危機にあってもらったほうが、勇者自身も危機感を覚えて、色々励むでしょう。



もうなんなのこれ…。俺は、ただ単に買い物に行ってただけなのに…。

え?勇者の専用の装備があるから付いてきてくださいって?ああ、はいはい。わかったよ。結局拒否れないんだろうし。

うっわーー……。どうみても高そうな鎧です。ありがとうございました。まあ、装飾があまりないから、一応実践用なんだろうけど……こんな純銀みたいな鎧、汚すのもおこがましいんだが…。まっ、勇者の専用装備なら来てみ―――おっも!!なにこれめっちゃくちゃ重いんですけど!!絶対これ勇者専用装備じゃないでしょ!勇者専用装備ってのは普通、勇者が着ると軽くなる奴でしょ!?

え、力を試したいから戦えって?無理無理無理。絶対無理だから!だからそんな期待の篭った目で見ないで!?

だ・か・ら!何もできない一般人をモンスターハウス的な所へ入れようとしな、ぎゃああああああ!?

待って、助けて!!死んじゃう!俺、死んじゃう!まだ俺、やりたいことたくさんあるのに!妹の事だって、ご飯ちゃんと食べたのか心配なのに!

ここで俺は………死ねないんだ!!

はぁ…はぁ……。家族の…妹の元へ帰るには……生き残れってことか…。上等だ!やってやるよ!!


*****

④ここから、勇者が中ボスあたりへ行くまで、少し休憩です。

もし心配なら、新聞を見るといいでしょう。必ず、表紙になってます。勇者の仲間に定期的に報告書を提出させるのもいいですね。



王都タイムズ!

速報    勇者、またまた町を魔の手から救う!?

昨晩、北の国で召喚された勇者が、またまた町を救ったとのこと。

今度は北の国で重要な貿易町である、エイリの町を魔物達の魔の手から救ったらしい。

このことに貿易町の地主であるトーン・エイリ氏は酷く感激し、ぜひとも我が娘を妻に…と、勇者に申したらしい。

しかし、勇者は「町を救うなんて、大げさです。僕はちょっと民兵の皆さんの手助けをしただけで…。それと、娘さんはもらえません。こんな見ず知らずの男に貰われては、娘さんも可愛そうです。どうか、僕よりももっといい男の元へ嫁がせてあげてください」

なんとも、勇者の謙虚なこと!!きっと、勇者に惚れる女性は後を立たないでしょう。

それでは、次号をお楽しみに!


ねえ…なんでこんな事になってんの?俺、通りすがった時に魔物を見かけて、暇つぶしに倒してただけなんだけど…。ってか、親も勝手に異世界の見ず知らずの男に自分の可愛い娘をやろうとするなよ!娘さん泣いてたぞ!どんな涙かは知らないけど!!

ああ…我が家が恋しいです。そして、妹の無邪気な笑顔をもう一度拝みたいです……。


*****

⑤さて、中ボスまでいったら、初めて人型でとても知性がある魔物を出しましょう。ある程度イケメンの方が中ボス戦にはふさわしいでしょう。また、その彼に適当に魔王四天王の一人とでも名乗らせましょう。

ここで一番重要なのが、彼に「お前の母親を魔王様が殺した。次は…お前の妹にでもするんじゃないか?」と言わせることです。勇者が急がなければ妹が死ぬということを認識させるのが重要です。



お前は……。魔王四天王…。こんなに強い奴が…後三人も……。

……え?う…そ……だろ?母さんが……死ん…だ?母さんが…死んだ?うっ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

はっ…もしかして…妹も殺すつもりか!?

……させない。……絶対に妹は殺させねぇ!!!!

魔王四天王が何人居ようが関係ねぇ…。魔王がこの世界を滅ぼそうがしったこっちゃねぇ…。

だが…お前らに俺の最後の……たった一人の妹は……絶対に殺させねぇ!!


……早く。もっと早く。もっともっと早く。そうしないと…こんなバカな事をしでかした魔王に…妹が殺されちまう…。早く早く早く速く早く早く速く速く速く早く速く速く速く速く速く速く…………!!


*****

⑥さあ、魔王と勇者の最終決戦です。その前に、魔王四天王によって勇者の仲間を一人二人殺しましたか?

殺していないなら、魔王の影のものを登場させたり罠にはめたりなどして、数人殺してください。いい調味料になります。ちなみに、最終決戦自体には、あまり意味はありません。むしろ、そのあとに意味があります。殺すのにも意味はありますけどね。



ようやく…たどり着いたぜ。魔王さんよぉ…。

っ……!?誰だっ!!俺たちの最後の戦いを邪魔するってんなら……なっ!?おい!大丈夫か!?今、回復の魔法を…っ!?魔法が…すり抜ける…!?なんだと……。もう…手遅れだっていうのか……。くそっ!…。

……あぁ。わかった。お前の願いは…この俺が叶えてやるよ…だから、迎の馬車に遅れる前に、お前も逝っちまえ。……くっ…。お前の想い…確かに聞き届けた!!勇者が……この俺が!俺自身が!!お前の願い通り、この世界を救ってやるよ!!


…待ってろよ。もうすぐこの戦いも終わるから。待ってろよ。もうすぐ…家に帰るから…。


*****

⑦無事、魔王は倒せたでしょうか?でしたら、勇者を盛大なパレードとパーティで迎えてください。その後、準備には時間がかかると言い訳し、勇者を政治に利用しようとしましょう。結婚させようとするのもいいですね。もちろん、本当に結婚させてはいけませんし、政治に利用するとしても、さりげなーく勇者に気づかせないといけませんよ?



くっ……。俺は…こんな呑気にパーティやらパレードやらしてる暇はないんだ!速く…早く、妹の無事を確認しないと…。…時間が…かかる……だと!?そういうのは前もって準備をしておけっ!

ちっ……。…あぁ?パーティの主役になって欲しい?国との話し会いに、国民代表として参加して欲しい…?

まあ…暇潰し程度にはなるか…。いいぜ。ただし、早く俺を家に返せ。それが条件だ。


……利用されてる?ああ。そんなの知ってるよ。早く返してくれるって言うから受けたんだ。

けど…いくらなんでも、遅すぎる。準備にこんな時間がかかるとは聞いてない…。

なっ……。もど…れ…ない…?戻れない……だと?そんな事あるはずがねぇ!!戻れないなんて…戻れないなんて…そんな事、あるはずがないんだ!!!


*****

⑧大抵、⑦で勇者は何か行動を起こします。それに適当に罪を着せ、牢屋に放り込んでください。力が強すぎるという場合には、誰かに「お仲間の遺品です」とでも言わせて、勇者に身体能力などをダウンさせるアイテムを渡しましょう。ほとんどの勇者は遺品を付けるでしょう。



なんで………なんで力が出ねぇんだ!!いつもだったら、こんな奴らなんか、勇者の剣ひと振りで吹き飛ばせるのに…!

てめっ…!何しやがる!!放せ!俺は…俺は!!帰らなきゃならないんだ!!あの世界に……。あの世界の、俺の家に!!

くそっ……。帰りたいって望むことが…そんなにいけないことかよ!!帰ろうとすることが…そんなにいけないことかよ!放せよ!!…放せよ!!…放せよ……!!俺は……、俺は……。


*****

⑨うまく勇者を牢屋に閉じ込められたでしょうか?閉じ込められたなら、勇者の牢屋の中に鏡を出現させます。水晶などでもいいです。その鏡に、家族が悲惨な状態になった未来映像を見せてください。パラレルワールドのどれかを映せば…簡単なことですよね?その後に、問いかけてください。「あの世界かこの世界か」



なんで……なんでこんな事に…。俺は…ただ……戻りたいと願っただけなのに。家へ…帰りたいと願っただけなのに…。もう、あそこへは近づけないだろう。俺が無理に帰ろうとしたせいで警備も固くなっているだろうし、俺の力も…なぜかわからないけど、この国の騎士にあっさりと捕まるくらい弱くなっている。

もう……帰れないのか…?……いったい俺が…何をやったんだよ…。

……あれ…、こんなところに、こんなでっかい鏡があったか…?

……っ!……俺が…俺がいないばっかりに…妹が…、妹が……。家族がいないからいじめにあって…友達に裏切られて…男に襲われて……。寂しさと悔しさを紛らわすために悪い奴等と連んで…レディースの総長なんかになって……。

俺の…俺のせいだ……!俺が…もっと早く帰ってれば…もしかしたら、こんな召喚に巻き込まれずにすんだかもしれないのに…。そしたら妹も、あんな人生を歩まなかっただろうに……。

……?…“あの世界かこの世界か”…?……そんなの…決まってるじゃないか…!


***

小さな呟きと共に勇者は鏡の中に手を入れ、その体がまるで水の中に入るように鏡の中に入っていき……チャポンと音がした。

勇者がいた牢屋には…何もなくなった。あの鏡以外。


静寂の中、何もないところに穴が空き、真っ白な少年がその中から出てきた。そして、勇者が取り込まれた鏡を見、触ると、呟いた。


「…あーあ……。そろそろこのシリーズも飽きてきたなー…。これ、準備に手間取る割に成果が人間一人とか…ちっさすぎるんだよ。あいつがつまんないって評価してたの、ようやくわかったかも」


そういって、箱を投げ捨てる。そこには、「シスコンでチートな兄貴の作り方」と書かれていた。少年は、どこからか取り出した他の箱を、さっきの箱の近くにポイポイっと投げ捨てた。そこには、「人間を魔王にするためのやり方」「世界をファンタジー系のものにするための説明書」などなど、書かれていた。

どれもこれも、この世界にあるものだった。


少年は、そんなものには目もくれず、鏡の中の映像をじっと見ていた。

そこには、召喚された時と全く同じ時間軸に戻った勇者がいた。その横には、楽しそうに笑う彼の妹。


「…そうだ。次は……あの世界で遊ぼう。そうしよう。久々に面白くなりそうだし、あいつらも呼ぼうかな。きっと飛びついてくるぞ…」


フフフと笑う少年。その笑いは、とても無邪気な笑いだった。今まで、一人の青年の人生を翻弄していた人物とは思えないぐらいに。


少年は、少し笑ったあと、鼻歌を歌いながら突如出てきた穴に入っていく。その微笑みはやはりとても無邪気なもので…だが、瞳だけは、不思議な…言い表せないくらいとても不思議な瞳をしていた。


「あっか、きいっろ、あーおい色ー。全部のいーとをー、切っちゃってー、皆の関係大混乱!!さーいごにうーんめいしーろい糸ー、切ーれば世界、めーーつぼうっ!!フフフフ……。楽しみだなぁ…」


そう、歌を口ずさみながら穴に入っていく少年。気がつくと、少年はいなくなり、辺りには何もなかったかのように静寂が漂っていた。

…そう……、勇者も、何もかも……なくなってしまったかのように…。

カットした勇者と妹のその後


「なぁ…なんでお兄ちゃんって呼んでくれねぇんだ……?」

「え?嫌だから」

「…昔は呼んでくれたのに…」

「やめぃ!男の涙目なんかなんの足しにもならんわ!むしろ損!プライスレスにもなんないから!」


「…あのさ……」

「?何」

「…俺が……急にいなくなったら…どうする?」

「んー……。どうすんだろ?いっつも傍にいたから、わかんないや。でも…もし私に無断でいなくなるなら……その時は、地の果てまで追いかけてやるから」

「…そっか…。うん…。その時は…頼むな」

「?うん。まかしといて!そのあとで、ボッコボコにしてやるから」

「いや、それは勘弁」




なんとなく思いついてみたので書いてみました。

衝動的に書いたのでごちゃごちゃだと思いますが、そこは目をつぶっていただけると嬉しいです


それでわ。

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