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3.in the end,we dare to runaway.





3.in the end,we dare to runaway.




 坂月は結局、白い女の子と走っていた。坂月の影を見つけ、追ってくるDF連中の動きが分かっているかの如く走り、坂月を先導する少女は今の坂月には結局、頼もしい仲間だったのだ。

 前回とはまた違う見知らぬ町を走る二人。そこから数十メートル程離れた場所をDFの三人が追う。姿を見えては離し、見えては離しともどかしいチェイスが続いていたのだった。

「アカシック・チャイルドについて、もっと教えてくれ!」

 不意に、坂月は叫んでいた。走り続け、息が途切れ途切れとなる中で、それでも、坂月は今、叫んだのだ。その声がどうしてもDFに二人の位置を伝えてしまうが、それでも、だ。

 その坂月の心中が分かっているのかいないのか、少女は走り続けながらも、応えた。

「聞く気になったんだ。まぁ、分かってたけど」

「分かってた、ってのもアカシック・チャイルドの『力』なんだろ!?」

 答えは一瞥もない首肯である。

 そして少女は続ける。

「また同じ事をいうかも知れないけど……。単刀直入に言えば、未来予知が出来る人間の事」

「俺もそうだと言うんだろ!? でも、俺が未来予知した事なんてない」

「そうだね。でも、これからするよ。きっと」

「……なんで、俺はまだ未来予知なんてした事もないのにDFに追われる?」

「DFがアカシック・チャイルドと思われる人間の何かを測定する装置でも持ってるんじゃないかな? どちらにせよ、『アカシック・チャイルドの私』が言うんだよ? 君は絶対に未来予知する事になる」

「…………、」

 話しを聞いてみよう、と思ってから問うた坂月は前回よりも分かりやすい説明に話しの流れだけは掴む事が出来た。だが当然、未だ納得がいっていない。当然である。少女の話しているモノ全てが、意味不明だからだ。極普通の日常を過ごしていた坂月にとって、未来予知、アカシック・チャイルド、ディラックの海等、理解の範疇を超えている。

 だから坂月は眉を顰めるしかなかった。だが、一歩前進したのもまた事実。坂月は理解を示そうとする。なんとか、理解しようとする。

 故に、坂月は少女の手を振り払わない。

 会話が止まり、二人はまた、DFの追っ手から逃げる作業をこなす。暫くして、また、町を一つ越えただろう、というところで二人はやっと停止した。場所はどこかの街中。だが、少女の判断だ。追っ手は振り払われたという事なのだろう。

 街中を、呼吸を整えながら歩く二人。見通しは人混みによって悪い方である。だが、通りが重なってしまえ容易く見つかるだろう。

「で、一番に聞きたい事だが……。どうやって、未来予知するんだ?」

 さっそく本題、と坂月は聞く。坂月もアカシック・チャイルド故に、追われているのだ。アカシック・チャイルドである坂月は、当然、未来予知できるという事になるだろう。話しの流れからして、眼前の少女もまた、アカシック・チャイルドだと予測できる。だから、坂月は無理矢理な話しの流れながら、そう、問うたのだ。

 だが、少女はチラリと坂月を一瞥した後、無理矢理に反しを変えた。

「それより、自己紹介、しようか。私の予知アクセスでは、暫く、私達は一緒にいる事になるからね」

「そ、そうだな」

 突然の提案に少し驚きながらも、坂月は頷いた。

「俺は坂月明人だ。一九歳。適当なフリーターってところでそれ以外にない」

「うん。じゃ、私だね」

 坂月の適当な自己紹介に文句はないか、少女は流すようにして自身の番へと変えた。

 立ち止まらず、歩いたまま、少女は前を向いたままの自己紹介をする。

「私はユイナ。見ての通りアルビノだけど、虚弱体質じゃない。年齢はどうでもいいや。分かってると思うけど、私もアカシック・チャイルドで、DFに追われる身。予知アクセスで君の存在を知って、接触しようと思って今に至る、って感じかな?」

 少女の言葉に坂月は素直に「そうか」と応えて首肯した。

 そして、また会話は消滅。二人はただ進むがだけになる。そうして、暫く進んだところで坂月は問う。

「でさ、未来予知が出来るんだろ? だったら、これから起きる事も分かるのか? 全部」

 その問いを遮るかの如く、少女の答えは素早く返された。

「無理。予知アクセスには時間が掛かるの。その時間は個人差があるけど、漫画やアニメの様に一瞬なんてのはないの。イメージするなら、無限の情報が羅列された道を一人で歩いて、目的の情報を見つける感じかな。ある程度の目星は付けるけど、そんな感じ。だから、目的の情報に辿り着くまで、時間が掛かっちゃうんだよね。後、情報の検索中は完全に『意識が別』に行くから、寝てるみたいになって、無防備な状態になっちゃうからね。私は予知アクセスが早い方だけど、それでも、時間は思っている以上に掛かるよ」

 ユイナの珍しい長広舌を静かに聴いた坂月は、言葉の端々しか分からないが、頷いて応えた。どうやら、予知能力を持っていても、漫画や映画の様に完全な能力とは言えないらしい。

「そうか。いろいろと複雑なんだな」そう言った坂月は、僅かに唸って、続けた。「で、どうやったら俺にも予知が出来るんだ?」

 その言葉に、ユイナはやっと、足を止め、坂月と向き合って彼の顔を見上げた。

「やってみる? いずれ、する事になるとは思ってたし」

「おう、当然」

 坂月にとってこれは経験だ。それに、もし、自身が未来予知でもすれば、やっと、ユイナの事を完全に信じる事が出来るだろう。まだ、疑いはしている。それが、坂月の本心であるのだ。

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