6.I wanna save her.―3
途端、坂月の逆鱗に触れたDF連中は――吹き飛んだ。それは一瞬の出来事。まるで、坂月の周りに不可視の障壁でも現れたかの如く、DFが、吹き飛んだ。散るように飛ばされたDF連中は壁や天井に勢い良く激突し、バウンドし、ピンボールの如く転がってゆく。転がったDF連中はそれぞれうな垂れるように倒れ、動かなくなる。
「……ッ!! くそったれが」
だが、何故なのか、死んだか気絶したかと思われるDF連中は、数秒の間に震える足で起き上がり始めたのだ。あれだけの衝撃を受けながらも、全員が立ち上がる事が出来る、という不気味な光景に坂月は思わず戦慄した。
そして、思い出す。
ソーサリーがDFを倒す時は決まって相手に触れ、力を使うという事。
(直接干渉しないと、倒せないってのか……? 化物じゃねぇかよ。DF。どんな訓練を受けてるってんだ)
キッ、と起き上がり始めるDF連中を一瞥しながら、坂月はソーサリーの動かなくなってしまった身を床にそっと下ろして、立ち上がる。もう、恐れはなかった。俺には力がある、と自身を奮い立たせるかの如く、坂月は力を実感した。
改めて、構える。
銃を離さなかったDF連中は一斉に銃を構える。良く見れば、その表情が無機質なモノへと変化している様だった。
飛ばされた瞬間に銃を離してしまった連中は一斉に坂月に向かって襲い掛かってくる。畜生、と思う暇すらなかった。
そして、衝突。味方がいる、というのに、銃を構えたDF連中は発砲を始めた。銃弾の数発は確かに坂月へと向かうが、残りの数発はどうしても迫っているDFの背中を撃つ。だが、DF連中は怯みやしない。ただ、機械の如く、坂月に勢い落さず迫る。
「どうなってんだよ!」
その異様さに雄叫びで不服を訴えながら、坂月は応戦する。『力』で干渉し、向かってきた銃弾を全て消滅させ、更に、自爆かの如く突っ込んでくるDF連中に次々と『力』を行使して行く。やはりな、と坂月は思った。触れ、直接干渉して力を行使すれば、DFは容易く倒れるという事に気付く。何かがおかしい、と気付く。だが、その正体を探る事までは、今は出来なかった。
坂月が触れたDF連中はボン、と破裂するかの如く消滅し始める。空気の入れすぎた風船の如く飛散し、バラバラに吹き飛び、最初からなかったかの如く消滅して行く。その際に鮮血が噴出さないのが気にはなりはしたが、きっと『力』の副作用だろう、と坂月は特別気にしなかった。
そうして、坂月は襲い掛かるDF連中をあっという間に始末して、次の銃を握るDFへと疾駆する。
銃弾は坂月に触れる直前で全て掻き消される。そして、振りかざした近未来化が施されたスタン警防もまた、坂月に触れる前に消滅させられてしまう。
言ってしまえば、今の坂月は無敵だった。
ソーサリーは力の使いすぎで衰退した、と推測した。だが、坂月はいくら力を使っても、力が衰退する様な気がしなかった。予知の力の異常さが、この干渉の力にも影響しているのかもしれない。そう、坂月は思いながら、全力で相手した。
数分、それだけの時間しか、掛からなかったが、坂月は思わず、時間を掛けすぎた、と思った。DF全員を消滅させ、場を沈静化し、いざ、ソーサリーを確認すると、彼女が息を引き取ってしまった、という事実を確認してしまったからだ。
だが、坂月はうな垂れない。諦めないし、今は悲しまない。
「ごめんな……。助かった」
そうとだけ、呟いて、坂月は振り返りもせずに先に向かった。後悔はしている。だが、悔いる事は、今は出来ないのだ。
「ユイナ……、起きろ。起きてくれ」
大使館の一角、最深部と言っても過言ではない程奥に、ユイナは拘束されていた。まだ、予知をしているのか、ユイナは目を覚まさない。乱暴された形跡がない事は、坂月を安心させた。
辺りは坂月が『暴れた』お陰で、散々になっている。が、人影は一切無い。もう、全員消滅させてしまったかと思う程にあたりは静謐で、気配すれ微塵も感じさせない。当然、それは坂月が招いた現状であり、坂月はその事には大して気を回さない。
暫くユイナを抱き抱えたまま、見ていると、やっと、目を、覚ました。
「ユイナ……ッ!!」
まだ、力の入らない矮躯を支える力に、力が込められる。
だが、ユイナは起き上がろうとするよりも前に、眠そうな眼で坂月を見上げ、ただ、静かに、こう告げた。
「大変な事になる」




