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6.I wanna save her.―2


 その瞬間、時間の曲がれが遅くなったような気がした。それは、坂月の体感時間。トリガーを絞るように引く人差し指の動きがやたらと明瞭に、鮮明に浮かび上がり、いつ、発砲されるのかまで分かった様な気がした。

(賭けて見るしか……!!)

 坂月はソーサリーの助けがない今、自身で何とかしなければならない。実は、最初から彼自身が懸案として思っていた事。今、その状況だったのだ。だから、坂月は未来を見ると同時に『ある事』を検索していたのだ。

 アカシック・レコードとは森羅万象の事情が記された万能の辞書。不可視の領域に存在し、通常であればアカシック・チャイルドであれど、ディラックの海に干渉しなければ存在を確認する事も出来ない代物。そこに、その『ある事』は記載されていた。大量の文字列と意識に直接飛び込んでくるような映像情報。

(出来る。きっと、出来るんだ)

 坂月はふいに、右手を前方へと突き出す。掌を立て、『ソーサリー』と同じ様に構える。

 直後、強烈な発砲音。それは数秒の間放たれ、無数の銃弾が坂月に向けて発砲された事を示す。

 だが、坂月に銃弾が届く事がなかった。無数の、坂月に向かっていた銃弾は坂月の手前で――消滅した。

 ――出来た。

 そう、坂月が検索していたのはソーサリーと同じ力。不可視の、存在に干渉してしまう力。

 ユイナを奪われてしまった時点で、坂月は覚悟を決めていた。自身を奮い立たせ、絶対にユイナを助けて、事をどうにか片付ける、と決めていた。そうして、自信を得ようとしていた。自身の予知アクセスには恐ろしい程の力がある。だから、俺は特別で、何でも出来てしまうんだ。なんて言い聞かせもした。

 そしてその結果が、これだ。

 坂月は、ソーサリーと同様の力を発現させたのだ。

 坂月と向かい合うDF連中は表情一つ動かさないで、ただ、秘匿に驚いていた。一瞬ながら銃声が止んだのがその証拠ともいえよう。

「出来る。大丈夫……だ」

 自身にそう言い聞かせ、坂月は顔を上げる。

 視線と視線が重なる。重苦しい場の雰囲気を裂くような鋭利な坂月の視線がDF連中を貫いた。思わず、DF連中は怯む。

 やってやろう、と坂月が一歩踏み出す。だが、その瞬間だった。

「ぐあッ、」

 短い悲鳴が、坂月の背後から響いた。出会ったばかりながら聞き慣れたその声に、坂月は思わず足を止めて振り返った。すると、振り返った坂月の胸元に落ちてくるすらりとした影。言わずもがな、それはソーサリーの影。

「ソーサリー!?」

 大慌てで坂月はソーサリーの力の抜けた華奢な体を受止めて、意識を敵に向けながらもソーサリーを心配する。見れば、出血している。肩から、そして、胸元から。

「おい……おい!」

 どうなるかは、明瞭過ぎた。銃弾の一つは確かに心臓を貫いていたのだ。

「どうして、なんで、銃弾が当たるんだよ!」

「……、力の使いすぎ、だろう、な。ここまでこの力を連続させて使った事はないから、はっきりとは、いえないが、恐らく、この力にも限界が……」

 必死の形相の坂月を見上げて、たどたどしい言葉でそう説明するソーサリー。見るからに、力は失われていった。

 そんな二人を囲む様に、前後の通路からあわせて一○人程のDFが迫り、二人を囲んで銃口を突きつける。

「動くな」 

 ただ、一言。

 だが、

「……ふざけんな」

 恐ろしい一言が、返される。

 そんな坂月の威圧感まみれの言葉にDF連中は思わずぎょっとしただろう。

 そして、怯む間もなく、坂月の表情は上げられた。

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