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6.I wanna save her.―1


 ガンマにあるアルファ大使館は二人がいる場所から距離があった。ガンマではまだ、アカシック・チャイルドである二人の顔は特別例を除いて割れていないため、移動に問題はない。二人は適当なタクシーを拾って、大使館近くまで移動する事にした。

 近未来化されたタクシーはリニアモーターカーの様に僅かに宙に浮いて走行する。静穏化、という意味でこの技術はとても需要が広く、今や一般人の所持する家庭用の車にも、この技術は使用されている。

 クーラーの効いた車内で、二人はそれぞれ窓の外へと視線をやったまま、会話を交わす。

「正面突破、なんて言いやしないよな」

 と、素っ気無く、ソーサリー。

「そんな訳あるか。ちょっと、待ってろ」

 そう返して、坂月は瞼を下ろす。予知アクセスだ。そして、一瞬の間を越えて、坂月はアカシック・レコードから帰還する。

 そして、言う。

「……ごめん。嘘だ。俺達は正面突破する」

「…………、」

「その先は?」

「よし、見てみる」

 そして再び予知アクセス。そして一瞬の後には戻る。光景を見て、ソーサリーは何度も、素直に感心してしまうのだった。凄いな、と。

 窓の外の光景から視線を外して、未だ窓の外へと視線を投げっぱなしにしているソーサリーの後頭部を見ると、その視線に気付いたようで、ソーサリーは首だけで気だるそうに振り返った。重なる視線。逸らすことなく、坂月は言う。

「大丈夫だ。俺達は確かに、ユイナと合流できる」

「そうか……」安堵の溜息と共にそう言って、ソーサリーは重ねた視線を外してそう言い、再び窓の外の景色へと視線を移した。そして、色っぽさの感じられる声色で落す。「話しは変わるが、やはり、便利だな。ソレ」

 近未来化されたタクシーに運転手は存在しない。だが、犯罪防止のために監視の目があるのは事実だ。二人の会話はどうしても要点を僅かに隠したモノとなってしまう。

「そうかもな。俺からすればデフォルトでコレだから、どうとも思わないけど、確かに」

「あぁ、革命的な能力だ。間違いなく、世界で一番の力だ。お前のその力、きっといつか必ず必要になるときが来る」

「ハハ、なんかゲームの台詞みたいだな」

「冗談じゃないさ」

 そんな会話を交わしているうちに、会話の流れは談笑へと変わり、時間があっという間に過ぎて二人はアルファ大使館近くまで辿り着いたのだった。




 侵入者発見警告、という機械的な音声がアルファ大使館に響き渡ったのは言うまでもなかろうか。大使館警備、重役護衛に当たっていたDFの殆どが侵入者――坂月とソーサリーを撃退、捕縛するために大使館内を徘徊している。当然、その手には銃が握られていて、近接戦闘用に、と近未来化されたスタン警防も携えられている。

 銃を持った複数人相手に、どう二人は立ち回れるというのか、そう思うだろうが、この場には『特殊な力』を持ったソーサリーがいる。

 ソーサリーの力で打たれる銃弾を消滅させて、進んでいたのだ。DFの相手をするも当然ソーサリー。その間に、坂月は僅かにでも力になろうと、少し先を予知アクセスしては戻り、という事を々、ソーサリーに次々と指示を出していた。その間に、坂月は自分も力になろう、と、『ある事』も検索していた。

 そうして先に進む二人。豪邸や城を連想させるような豪華な装飾が施された幅の広く、天井の高い通路を歩き、時折DFの連中を蹴散らしながら坂月達は進む。暫く進んで、一本の長い廊下が続くそこへと入った時だった。

「いたぞ!」

 再び、DFの連中が前方から姿を覗かせた。数は五人程だろうか。だが、この程度の数は道中すでに何度も相手をしてきていたため、ソーサリーの力なれば大丈夫だろう、と坂月は安心して彼女の背後に身を隠し、予知アクセスを始めようとする。だが、

「あそこだ!」

 坂月の背後からもまた、声がした事で坂月の予知アクセスは行動に移せなかった。

「なんだと!?」

 来た道から届いた声に坂月は即座に振り返る。坂月の背後とは、つまり――ソーサリーからは離れた位置。それは『ソーサリーの力が及ばない』場所。

 まずい、と素直に戦慄した。

 ソーサリーも気付いたようだが、正面からの銃弾の嵐は既に降りかかっている。それを防ぐため、当然ソーサリーは動けない。

「くそ……!!」

 坂月と向き合う数名のDFが、一斉に銃口を持ち上げた。勿論全員、人差し指はトリガーにかけている。

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