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5.A brand new communication.―3


 DFだ。それも数が多い。坂月とユイナはフーディローブで顔を隠している。だが、ソーサリーは別だ。それに、相手は既に三人を捕らえていた。最早、その程度の事で逃れる事の出来る状況ではない。

「逃げるぞ!」

 即座にソーサリーが叫び、坂月、ソーサリーは踵を返して走り出した。後方から無数の駆け足の音が聞こえてくる。追って、来ているようだ。

「くっそ……」

 坂月の駆ける速度はソーサリーのそれとは比べ物にならないくらいに遅かった。当然だ。背中には、小さいといえど人一人背負っているのだから。

 気付いたソーサリーが叫ぶ。

「置いていけ! でないと全員つかまるぞ!」

「出来るかよ!」

 坂月の返事は早い。だが、ソーサリーの言ったソレが事実だという事もまた、理解している。よしんば、ユイナを落として、逃げれば、ユイナが囮になるという事もあり、坂月達が助かる可能性は急上昇するだろう。だが、今までユイナに助けられた身である坂月が、そんな選択を取れるはずがない。

 だが、――だが、しかし。

「坂月ィ!」

「……くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 途端、ソーサリーが駆ける足を止めて、振り返った。その動きに坂月は一瞬にして緊張を高める。何をするつもりか、見れば分かった。だが、ユイナを背負ったまま駆けていた坂月は抵抗が出来なかった。

 ドン、と嫌な音が耳を劈き、坂月は腹部に強烈な痛みと吐き気を覚え、その場に転倒してしまった。言わずもがな、ソーサリーが坂月をぶん殴ったのだ。

 坂月が転倒したせいで、予知アクセス中の無防備なユイナの体が転がって坂月から僅かに離れた位置に落ちる。小さな体が転がる様は、見ていられない程に残酷だった。

「バカが! 早く行くぞ!」

 そう破棄捨てる様に言って、ソーサリーは坂月の手を取って無理矢理に立ち上がらせ、引っ張り、走り出した。その時既に、坂月の抵抗はなくなっていた。心中でソーサリーの言葉に正当性を感じていたからかもしれない。坂月の走る力は確かに、自身のモノであった。

「畜生! ……畜生!!」

 坂月は振り向かない。振り向けない。

 複数の足音が、止んだような気がした。

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