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5.A brand new communication.




5.A brand new communication.




「こっちだ!」

 ソーサリーの怜悧さ漂う声色が坂月の耳に一瞬にして届いた。声に反応して見てみれば、そこには最後部の更に奥への道を開き、新たな道を開いていたソーサリーの姿が映る。非常口ともいえない異質な先が見えた。

 スタッフ、いや、整備士のみが入れるような場所だと坂月は思った。

「いや、ちょっと。待て」

 急ぐソーサリーのすぐ手前で止まり、坂月は大慌てでそう言葉を吐き出した。動きを止め、眉を顰めるソーサリー。急げ、と視線で坂月を急かしている。

「俺、アイツ……撃っちまったんだよ!」

 間抜けな表情をさらけ出し、坂月はありのままの事を言った。だが、

「アホだなお前はッ!! じゃあ、なんでアイツは死んでないんだ!」

 そう言って、ソーサリーは坂月の肩越しに坂月の後方を指差した。釣られて振り返ると、坂月の視界には、先程奪った銃で撃ったはずのDFが駆け寄ってくる姿があった。

「マジかよ……」

 坂月は思わず、そんな事を漏らしてしまう。見れば、確かに撃たれた跡が彼の胸にある。だが、なのに、彼はどうしても、止まれないのだ。

「急げ!」

 そして、ソーサリーの急かしで坂月も逃げるしかないのだった。

 二人してソーサリーがどうにかして空けた最後部の穴へと飛び込む。その先はケーブル類が這いずる狭い通路だった。整備士のみが入れる空間、という坂月の予想は外れていない様だ。

 二人が先に進む間に、DFもその空間へと突入してくる。動きずらい狭い空間だ。腰に拾い上げた銃を装備しているが、撃とうとしないのが見える。

 暫く進むと、細い通路を抜けて広いスペースへと出た。そこは先程まで通っていた通路とはまた違い、様々な機器、モニターが確認出来るメンテナンスルームの様な場所だった。軽く走り回る事が出来る程度の広さがあるが、道はなかった。

「くっそ……」

 奥まで進み、先がない事に気付いてソーサリーが忌々しげに吐き捨てた。

「追いつかれた……!!」

 坂月が振り返り、ソーサリーも振り返って来た道へと視線を戻すと、そこから這い出て、銃を構えるDFの姿が見つかる。

「二人共動くな。動けば、撃つ。大人しく両手を挙げ、膝を付け。そうすれば命は確実に保障する。あの少女も後に回収する。三人一緒だ。心配は要らない」

 そう言って、銃口を二人に向けたまま、一歩踏み出すDFの男。

 威圧感は恐ろしい程にあった。銃口を見るだけで、萎縮し、億劫になってしまう。

「くっそ……」

 坂月は歯軋りしつつ、辺りに目配せをする。だが当然、何一つ見つかりはしない。打開策も、だ。

 どうする? とソーサリーに素直に頼ってしまいたいとも坂月は思うが、問う隙すらDFにはなかった。

 だが、ソーサリーもまた、何か行動を、と思っているのも事実。彼女の視線はDFの視線と重なってはいない。相手の動きを探る様に、DFの足元を見ていた。DFが一歩進めば、視線は僅かに手前に引かれる。

 そうして、だ。

「仕方ない」

 悲しそうな声色が、坂月に届いた。「は?」と、坂月がソーサリーを見たその瞬間だ。ソーサリーは、どうしてなのか、DFと対立するように数歩、前へと進んだ。

「お、おい!」

 大慌てで坂月が止めようとするが、どうしても止めきれない。

 そして、ソーサリーとDFの距離はあっという間につまり、その間には三メートル程しかなくなってしまう。

「大人しく、両手を挙げて膝を落せ」

 DFが再度忠告。警告を発し、ソーサリーを止めようとする。だが、

「手は上げない」

 ソーサリーは、そんな事を嘯く。

(何考えてんだよ……)

 ソーサリーが、進んで出た事で、何かある、と察した坂月はその真意が見抜けず、疑問を呈したい気持ちで一杯になっていた。場の空気は最悪だ。警戒し、いつでも銃を撃てるといわんばかりのDFと、武器一つない丸裸の状態でDFと向かい合うソーサリー。そして、ただ呆然とする坂月。

(くっそ……)

 自分には何が出来るか、と考えた坂月。ソーサリーは確かに、何か考えがある、と思い、邪魔にならず、何かをする方法を模索する。そうして出てくる答えは――予知アクセス

 これは、ある種の現実逃避だったのかもしれない。予知アクセスしている間は、現実の認識が出来ない。昏睡している状態と変わりないのだから。だが、坂月に出来るのはこの先を知る事だけ、だ、と坂月は気付いたのだ。先を知り、今、この現状は予知アクセスが終わった時、どうなっているか、と任せるしかない。ないのだ。

 所詮、今の坂月には何もできやしない。だから、役に立たなくても出来る事をせねばならない。

 ごめん、そう口内で溶かして、坂月は予知アクセスした。

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