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4.follow me.―2




    3




 アルファ国際空港に無事侵入する事が出来た二人は土産売り場の近くにあるベンチに腰を下ろし、辺りを警戒しながらソーサリーを待っていた。

 アルファ国際空港は小さな国であるアルファにしては他国とも比べて大きな空港であり、広く、見通しも良い。特別変な時期でないからか、人も少なく、二人はDFの接近があればすぐに気付けるだろう。

 かと言っても、二人はローブのフードを背中に落す事は出来なかった。ソーサリーと待ち合わせをしているのだ。顔は出ている方が良いかもしれないが、顔は国中に割れている。一瞬でも晒せばすぐに悲鳴というサイレンが鳴り響くだろう。

「ソーサリー、どんな人か分かるよね?」

 僅かに顔を傾けて隣の坂月を見上げ、ユイナが問う。

 返事は首肯から始まる。

「あぁ。予知アクセスして見たからな。分かる」

「じゃあ、見つけたら教えてね」

 そう言って、ユイナは再び警戒へと視線を戻す。

 空港内にもDFの影はある。だが、空港の警備担当ばかりが揃っているようで、二人の方へと向かってくる者はいなかった。二人の事は知らされているだろうが、普段から警備として配属されている連中はそこまで深入りしない様だ。

 時計を見れば、二人が空港についてから三十分が経過していた。まだか、そう思った、その時だった。

「待たせたな」

 二人が気を配らずに済むように、と、壁際を埋めていたのだが、どうしてか、背後の壁から、声はしてきた。

「は?」と、坂月もユイナも振り向くが、当然その狭い隙間には誰もいない。そして、何だ? と振り返って、ソーサリーを見つけた。

 気付けば、彼等のすぐ眼前に一人の女が立っていた。背中まである長い黒髪と吊り上った眦が特徴的な身長の高い細身の女性だった。

 ユイナはソーサリーが女ではないと思い込んでいたようで、僅かに眉を顰めた。一方の坂月は予知アクセスでその正体を知っているため、特別な反応は見せなかった。

 二人立ち上がり、ソーサリーと向かい合う。立ってみれば、ソーサリーの身長と坂月の身長は大して変わりなかった。

「これ、例のヤツ。早速行こうか」

 そう言って、ソーサリーは自身のコネクトを操作して、何かのデータを二人に送りつけた様だ。コネクトが展開できない坂月は困った様にユイナに視線をやるが、

「大丈夫。君のコネクトも展開できるようになる。とにかく開いて、送ったデータを展開してくれ」

「あ、あぁ、分かった」

 ソーサリーの技術に感心し、驚きながら坂月はコネクトを展開し、素早く操作してソーサリーから送られてきたであろうデータを開く。その際に店長からのコール履歴が並んでいたのが目に入ったが、どうしようもなく、坂月はそっと履歴を閉ざして見なかった事にした。

「……パスポート、か。仕事が速すぎるだろ……」

 データを展開した坂月は呆れるように、また、感心するようにそう吐き出した。

「誰だと思っている? クラッキング慣れしてるんだ。これくらい容易い」特別自慢するわけでもなく、当たり前だといわんばかりにソーサリーはそう言って、坂月の右腕を指して、言った。「コネクト自体も他人の名義に摩り替えておいたから。安心して使えるだろう」

 男節な口調で言うソーサリーは二人にとって十二分に頼もしかった。

「で、どうする? 私達はアナタも合流したことだし、もう少し仲間を集めようかと思ってるんだけど?」

 コネクトを閉じてソーサリーを見上げてユイナが首を傾げる。そんなユイナに何故か頬を赤く染めたソーサリーは一度の咳払いの後に視線を適当な箇所に投げて返す。

「他の返信は無かった。それに、増やしても動きづらくなるだけだ。俺はこの三人で良いと思っている。それに、今俺達がいるのは空港だ。すぐにでも国を出るのが懸命だと思うが」

 ソーサリーの言葉に坂月が真っ先に頷いた。「そうだな。いつDFの捜索部隊が向かってくるか分からない」

 そんな二人の言葉を聞いたユイナは二人を順番に一瞥して、言う。

「そうだね。行こうか」




    4




 飛行機内に乗り込むのは思ったよりもスムーズで、ソーサリーの仕事の頭晴らしさを表現していたのでは、と思う。

 端の席に三人ならんで座り、三人はアルファから少し外れたガンマという国を目指す。

 坂月とソーサリーの間に挟まれるように座ったユイナは一度背伸びをして、疲れた様な視線を前の席から遠くへと投げて二人に言う。

「ちょっと、予知アクセスするね。これから先の事、知りたいし」

 特別拒否する理由もなく、言われた二人は何の話しもせずに頷いた。だが、これは、まずかった。

 二人、いや、三人とも気付いていなかったのだ。

 ――前方の席から三人へと向かってくるDFの影に。

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