4.follow me.
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坂月とユイナの予想、いや、未来予知は当たった。当たってしまった。アカシック・チャイルドの問題は国が公式に広げ、国中に拡散された。当然、そこには坂月とユイナの情報も載せられていた。それと同時に、『他のアカシック・チャイルド』の情報も載せられていたのは、坂月達にとってもプラスにはなった。だが、不利に傾いたのは変わりない。
坂月達は、他にもアカシック・チャイルドがいる、つまり、仲間がいる、という事を知ったのは彼等二人にとって、僅かな安堵の要素となっていた。
「どうする? 仲間でも探す?」
ローブで表情、姿を隠して街中を歩く二人。ユイナは突然そう問うた。
対して坂月は、暫くの間を空けてから応える。
「どうすっか、ねぇ」
「適当だね」
坂月の答えに苛立ち、つつ呆れるユイナ。
そうして話しを進める内に、話しは本題へと自然に流れた。
「とにかく、国を出ないと……」
坂月は不意に呟いた。それにはユイナも頷く。
「そうだね。国にはDFの連中が跋扈してる。私達もいつみつかるか分からないしね……。国を出れば、少なくとも時間稼ぎは出来るはず……。その間に何か作戦を立てて……」
「だが、問題は山積みだ」
「うん」
ユイナは首肯。そして、歩みと共に続ける。
「国を出るには身分証明がいる。コネクトは無駄だね。だとしたら、パスポートだね」
ユイナの言葉に坂月は首肯して答える。
「そうだけどよ……。偽装パスポートなんて映画でしか見た事ねぇよ? 本当にそんな事あるのか……?」
国を出るための手段は二つある。その際に必要なのが、コネクトによる承認、若しくは、国が発行するパスポートの入手だ。この二つの使用には違いがある。コネクトによる生体認証は隣国までの移動のみが許されている。その先の国に行くためには、パスポートが必要となる。パスポート使用の際、コネクトの認証は必要がないのだ。故に、彼等はパスポートを入手する選択を取る事となる。
「あるよ。でも、方法が限られるよね」
言って、ユイナは自身のコネクトを展開する。
「お、おい! コネクトは……、」
「大丈夫」
ユイナが逆探知の恐れがあるコネクトを悠々と展開させた事で坂月が面食らって驚くが、ユイナはそんな坂月を一言で止めた。
「私が追われる事は予測していたからね。コネクトをちょっと改造してあるの。逆探知には引っかからないよ」
「そ、そうなのか」
ユイナは説明をしながらもコネクトの画面をタッチしながら操作して、ページを進めてゆく。そして、あるページを展開した状態で他者にも画面が確認できる可視状態へと切り替えて、坂月にもその画面を見せた。
ユイナの腕の上を覗き込む坂月が見たページの内容は、こうだ。
『中央塔のメインサーバーがクラッキング被害』
と、大きく綴られたニュース記事だった。
「これが?」
間抜けな表情を浮かべながら坂月が問うと、ユイナは呆れたような表情で坂月を見上げて、嘆息と共に吐き出す。
「この世界の中心である中央塔のメインサーバーにアクセスできるなら、偽装パスポートくらい作れるって事よ」
「……? 良く判らないが、クラッカー、だかハッカーだかを見つければ良いって事か?」
「そうだよ」
坂月の言葉にユイナは可愛らしく首肯。
「でも、そんな奴どうやって探せば……」
眉を顰めて、分からん、とそう言う坂月。続いて、ユイナも頷いた。
「そこなんだよね。知り合いにはいないし……」
「俺もいねぇよ」
「そうだよね……」
はぁ、と嘆息したユイナ。そうして、コネクトを閉じようとした時だった。
「あ、メールだ」