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アラフィフは朝からとても忙しい。
時代の流れにのって(?)高齢出産したため中学生の娘と小学生の息子の2人の子どもたちの学校送り出しから始まる。
慌ただしい朝にも慣れた……慣れたけど、やっぱり疲れる。
「お母さーん!制服のリボンどこ!」
「え、お母さんが知るはずがないんだけど?昨日脱いでどこにやったの?」
「なんかお母さんに聞くと見つかるんだよね。」
知らんがな。
なんで毎回同じ場所に置かないんだろう。
毎日同じやり取りしてるのに、なぜ学習しないのか。
まあ、子どもとは何万回言ったところで響かない生き物だから、と諦める。
顔を洗って下地のファンデを頬に付けたところで、
——あ、水筒に麦茶入れてない。
慌てて二人分の水筒を準備して、連絡帳に印鑑押して……
……あれ? 私、どこまで化粧したっけ?
(時々片方の眉毛を書き忘れて出勤するから恐ろしい。)
そんな自分に苦笑しながら、ふと、頭の中で“異世界スローライフ”を思い浮かべる。
あっちの世界なら、朝は優雅にお茶から始まるんだろうな......。
子どもたちを送り出したら、息つく暇もなく出勤だ。
職場でスマホをいじっていたら若い後輩に、
「山根さんって、スマホの文字大きくないですか。」
と悪気ゼロの笑顔で言われる。
「ほんと?標準設定のままだったと思うけど。違ったかな。」
(なにが、ほんと?だ。段々大きくしてるくせに。)
このスマホ標準設定が大きめなのかしらね~。
オホホ、と、とぼける。
そういえばこないだも、同僚に
「ちょっとこの文章みてくれる?」
とスマホの画面を眼前に突き出された事があった。
「あ、ちょっと近いかな」
そう言って、彼女の手を遠ざける。だって、見えない。
「そんなに?笑 腕足りる?」
悪いか。真面目に見えないんだ。
アラフィフにもプライドだってある。それなりにだけど。
昼食後、ふと鏡を見ると、白髪が一本ピンと主張している。(あ~妖気感じてる。)
なんて昭和な独り言を言ったら、
"お母さんって独り言も昭和だよね"、って余計なひと言をいう娘の顔が浮かんできた。
抜くべきか、染めるべきか、見なかったことにするべきか——
三択を迫られ、もちろん、私は見なかったことにした。
帰宅ラッシュの電車では、若い青年にどうぞと席を譲られて嬉し恥ずかしだ。
でも、ありがとう。人様の好意はありがたく頂戴する主義です。ほんとありがとう。
家に帰れば、愛犬ナッツのお散歩を猛ダッシュで済ませ、
洗濯物の山をおりゃあと切り崩し、腹減ったコールの子どもたちの夕飯の支度にとりかかる。
そして、そろそろ自分でやろうよ~の宿題チェックが待っている。
ほんとやる事てんこ盛り。
夫からlineで「今日は仕事が残業になるから遅くなるので先にご飯食べててね。」ときた。
はい、今日もワンオペ確定。慣れたもの。
9時半過ぎ、ようやく一息ついてソファで本を読んでいる娘の手元を覗くと、
例の異世界転生漫画だった。
転生したら洗濯機だったとかなんとか。
いや、洗濯機って。何でもありだな!
そう思いながら、
「お母さんも異世界行きたいなぁ。若返って、魔法とか使ってさ。
チートキャラってやつになって空を飛びたいんだよね。掃除機とかは嫌だけど。」
冗談めかして言うと、娘は笑いながら
「お母さん、若返らなくてもなんか強そうだけどね。今もある意味チートキャラじゃん。」
と返してきた。
褒められたのか、ディスられたのか、判断が難しい絶妙なところを攻めてくる。
「ありがとう、もうおばあちゃんなので一番風呂は母がいただきますゆえ。」
今日も寒くて三寒四温って感じだなぁ、と年寄り臭いことを思いながら、
3月上旬の寒気で冷え切った体を早く温めようと湯船に向かった——
長々とアラフィフの日常をお届けいたしました!
そろそろ、行っちゃうんじゃない?!




