7話 捨てられた子供
昔は家族で楽しかったような記憶がある。
変わったのは小学校に入った春頃だった。
お酒に酔った父が私の体を求めてきたのが始まりだったと思う。
小学1年生の私には、何が起きたのか分からなかった。
お酒に酔うと、父はいつも、私に自分のものを入れるようになった。
最初は痛かったけど、そのうち慣れた。
というより、気持ちがよくなっていた。
でも、その時から母は、私を毛嫌いするようになる。
汚いものを見るように、私を遠ざけるようになった。
そして、父を奪ったといつも私を睨んでいた。
当時は、どうしてか分からなかったわ。
「お母さん、来週、保護者会があるんだけど、来てくれるよね。」
「近寄らないで。汚い子ね。」
「でも、学校から親に渡しなさいって・・・」
「あなたなんて私の子供じゃない。死んでしまえばいいのに・・・」
母は、私の手を払って、テーブルに顔を埋めて泣いていた。
その時は、母がどうして悲しんでいるのかわからなかった。
父とのエッチが日常になっていたから。
家は暗闇に包まれていく。
カーテンはいつも締め切られ、電気も消されている。
壁は、ベッタリした液体が塗りたくられているよう。
その中で、いつも母は泣いている。それは私のせい。
そう、私は死んでしまえばいいの。
生きてる価値もない。
みんなを不幸にする。
母親の顔は壊れていき、顔面神経痛となって鬼の形相のようだった。
毎日、金切り声をあげたと思うと、急にだまり、部屋の隅で下を向いて笑っている。
そんな母を父は面倒くさいもののように扱い、家庭での会話はなくなった。
そして、ある晩、警察から父に電話があった。
酔っ払って私とエッチをしているときに。
電話の内容は、母がトラックに轢かれて即死というものだった。
昔は笑顔が絶えなかった母。
お酒に溺れ、ろれつが回らない父は、母が精神を病んでいたと警察に伝えた。
交差点で、赤信号の横断歩道を母はとぼとぼ前に歩き出したらしい。
トラックのヘッドライトを受け、母は、トラックをじっと見つめていた。
雨が降る夜、母は傘を投げ捨て、笑っていたらしい。
トラックの運転手は、突然出てきた母を前に止められなかった。
警察では、自殺として処理される。
それから父との2人の生活となった。
ある晩、父が私の体に入れようとしたときだった。
私のあそこから少しだけど血が出てきたの。
そういえば、最近、お腹が張るような感覚があった。
「そろそろ潮時か。服をきてお前の部屋に戻れ。」
「どうしてなの。私は嫌われちゃったの? 嫌、これからもずっと私のことを抱きしめて。捨てないで。」
「そういうことじゃないんだが・・・。あっちに行ってろ。」
私は病気になったのかしら。
だから、父親からも嫌われてしまったのだと思う。
本当に、私は汚い生き物なのね。
翌朝、ティッシュを何枚もパンツに入れて病院に行ったの。
そして、生理ということを知った。
女の先生は、母がいないと言うと、丁寧な説明をしてくれた。
1週間ぐらい経ったころかしら、女が家に居着くようになる。
キャバクラで働いていると言っていた。
毎日、朝に帰ってきて、リモート勤務の父と昼にエッチをしていた。
横からみるエッチはとても汚らしいものだった。
女は獣のように叫び、黒光りするところからは白い液体が滴り落ちる。
これまで私があんな汚らしいことをしていたんだと気づく。
シャワーの下で、体にボディータオルをこすりつけ、何時間も洗い続けた。
それでも汚れてしまった記憶を消すことはできず、吐き気がしてトイレに駆け込む。
なんとか落ち着いて部屋に戻ると、ベッドで父とその女が戯れていた。
女は甘い声で、バックを買ってとねだり、父と口を重ねる。
「詩織、ジロジロ見てるんじゃないよ。気味が悪い子ね。本当に暗いんだから。もっと、明るくできないの。」
「明るくって?」
「そもそも、私の子じゃないんだから、出てってくれないかなぁ。あなたは邪魔なの。」
「でも、外じゃ暮らせないし。」
「そうね。じゃあ、私が暮らすところ紹介してあげる。」
その女は、新宿の1室に私を通した。
私のような中学生の2人の女の子たちが漫画とか読んでいる。
ここにいるのは、みんな親から捨てられた女の子だった。
私を連れてきた女は、お金を管理人らしき人に渡すと、鼻歌を歌い去っていく。
お荷物だった私がいなくなり、身軽になったと言わんばかりに。
その女も、この部屋で管理人のもとで育ったのかもしれない。
世の中には、親に愛されない子どもたちはたくさんいる。
そういう子供たちは、愛されないのは自分のせいだと悩むことが多い。
そして、その悩みが外への異常な攻撃となることも多い。
人を殺した、それだけを見れば殺した人が悪いけど、それだけではない。
殺された人には悪いけど、これまでの不満が爆発したのかもしれない。
これまでの人生が、切れやすい人を作ってしまったのかもしれない。
私がこれまでしてきたことは私のせいだけじゃない。
いえ、私のせいと言えることなんて何一つない。
私はずっと暗闇の中を歩いてきたから。
私のことを責めないで。




