3話 テロ組織の幹部
「会うしかないわね。」
「どんな関係なんですか? 姉さんのことよく知ってるみたいでしたけど。」
「腐れ縁ね。じゃあ、いつ、どこに行けばいいか聞いてくれる。」
「相手の陣地に入り込んで危なくないんですか?」
「あなたも一緒に来てよ。」
「わかりました。では、確認後に連絡します。」
普通、テロ組織が爆破事件を起こす情報なんて手に入らないでしょう。
その幹部を知っているからよ。
相手から、今週末、名古屋のマリオットアソシアホテルの1室で会うと連絡が入った。
東京よりは名古屋の方が警察に見つかりにくいと考えたに違いない。
指定された部屋に向かうと、ドアの前に強面の男が立っていた。
「坂上様ですね。どうぞ。男の方はここでお待ちください。」
「部屋にいるのは1人なの? 他の人もいたら、私はここで帰るわ。」
「ご安心ください。部屋には、植松1人で坂上様をお待ちしています。」
「わかったわ。河上、ここで待っていなさい。」
「はい。」
私は、開かれたドアの奥に足を進めた。
デラックスキングルームと聞いていたけど、ゴージャスな部屋ね。
私の前には、ソファーに座った妊婦がいた。
後ろの窓から差し込む強い光を浴び、神々しい。
「詩織、久しぶりじゃないの。LINEでしか連絡を取り合ってなかったけど、だいぶ明るく、綺麗になったわね。昔の詩織からは、想像がつかないわ。あの頃は、気持ち悪くて、臭い少女だったものね。」
昔の記憶が蘇り、体がこわばる。
毎日のように暴力を受け、奴隷にされていたから。
「芽衣ねえさん、お久しぶり。渋谷の件は助かったわ。私は、今、藤井 紗奈として暮らしているの。ところで、妊娠したんだ。」
「ため口なのね。まあ、いいか。そうなのよ。こんな組織にいるんだけど、この子の父親は普通の会社員なの。まさか、私が、テロをやってるなんて考えたこともないと思う。」
「どこで知り合ったの?」
「あなたも知ってるでしょう。一緒にカフェで会ったじゃない。」
「ああ、あの人。今、何をやっているの?」
「八重田建設の現場監督をやってるわ。」
「そうなんだ。」
「そんな話しは置いておいて、中学の時の恩を返してもらいたいんだけど、1ヶ月後、博多の地下鉄で、毒薬を撒く計画があるの。私たちの組織の力を見せつけ、政府との交渉で優位に立つため。そこで、大学の医学部から、あなたの色仕掛けで教授を手なずけて薬品を盗み出して欲しいの。」
芽衣は、まだ私ことを自分の奴隷だと思っている。
あれから何年経ったのか、私がどんな経験をしてきたのか全く分かっていない。
ましてや、中学の時に返す恩なんて何一つない。
「申し訳ないけど、お断りするわ。私は、一般人となってひっそりと過ごしたいの。もう、犯罪には関わりたくない。」
「もう手遅れでしょう。なんだったら、警察に、まだ詩織が生きてるって言ってみようかしら。困るでしょう。あなたは、これからも、私の言うことを聞き続けるのよ。中学の時のように奴隷として。」
やっぱり、そういうことなのね。
私を奴隷として利用しようとし続ける。
もう、こんな関係は嫌。
「哲司、入ってきて。」
「はい。」
私は、スマホで暴力団組員を呼び出した。
私が入室した後すぐに、ドアの前にいた男を倒すよう指示していた。
そして、入室カードを胸ポケットから取り、この部屋に入ってきた。
「誰なの。この男は。」
「私の仲間よ。なんでも言うことを聞く。この女をソファーに縛り上げなさい。」
芽衣は抵抗したけど、妊婦の体で男の力には抵抗できなかった。
「よくも私の中学時代を奪ったわね。どれだけ暗闇の世界で生きてきたかわかってた? やっと復讐ができる。」
私は、芽衣の服を引きちぎり、お腹を出した。
もうすぐ生まれるのかしら。かなりパンパンという感じ。
フルーツの脇にあった果物ナイフを手に持ち、芽衣に近づいた。
「やめて。なんでもするから。」
「今更、遅いのよ。いつまでも、私が芽衣ねえさんの言うことをなんでも聞くなんて勘違いしないでよ。」
私は、芽衣のお腹を上からナイフで切り開いた。
袋のようなものが割れ、なかからまだ成熟しきっていない子供が2体流れ出る。
「双子だったんだ。まあ、へその緒は切らないとね。」
芽衣の膝にいた赤ちゃんはボトッと床に落ちる。
少し足を動かしていたけど、もう動かなくなった。
息が上手くできないみたい。
芽衣も痛みに耐えかねて白目になっていた。
そして、ナイフを芽衣のお腹から上に引き上げた。
「やっぱり、果物ナイフは切れが悪いわね。心臓に来るまで何回も切り上げないといけなかったじゃない。」
芽衣の頭は天井を向き、その血で、床の絨毯は真っ赤に染まる。
そして、お腹から下にも切ってあげた。
膣のひだが血で染まる。
「これで帝王切開は終了ね。そういえば、昔、カフェで床に落ちたリンゴのスライスを犬のように食べさせられたわね。私は優しいから、そんなことはしないわ。人間としてリンゴを食べさせてあげる。」
リンゴを丸ごと、芽衣の口に押し込んだ。
真っ赤なリンゴと、真っ赤な絨毯は似合う。
芽衣の敗因は、私を未だに恐怖で支配できていて、永遠に従うと疑わなかったこと。
そこに油断が生じて、私から攻撃されることへの対処を怠った。
私も成長したのよ。
これで、私の黒歴史は終わった。
もう、これで奴隷から解放されたの。
ひどい中学時代だった。
中学時代を一緒に過ごしたもう1人の女性、澪は、まだ芽衣の手下を続けているらしい。
渋谷爆破事件にも関与し、今は行方をくらましていると聞いている。
私は、そんな人生を過ごしたくない。
だから芽衣を殺したの。悪いことじゃないでしょう。
正当防衛にすぎない。
私は札幌に戻るため、ホテルを出てセントレア空港に向かった。




