姫島 薫さん殺人事件
私はある広告会社に入社し、一人暮らしを始めていた。
私には、大学で知り合ったイケメン彼氏がいたが、遠距離になるということと相手の遊び癖から別れることになった。実際に遊んでるとこも、女性と連絡や話をしているところすらあまり見なかったが、彼からの遊びに行くという話を聞くことにうんざりしていた。
「薫〜、また例の元彼から連絡?」
この人は会社の先輩の『ユウキ先輩』だ。黒髪ロングでバリバリ仕事をする姿は、女性社員の憧れのような存在だ。
「そうなんですよ〜。俺が悪かった、薫が居ないと俺ダメだ、とかちゃんと話し合って別れたのに女々しいですよね。」
「薫は美人だし、新しい彼氏作ってインスタにでもあげたら諦めるでしょ。」
自分で言うのもなんだか、私は確かにモテる。遊んでいるわけではないし、新しい出会いがあるという訳でもないが、高校や大学の人から連絡が次々にくる。
最近、ある男性のことが気になっている。大学が一緒だったらしいが、一目惚れでインスタをやっと見つけたと言っていて、容姿もどタイプだった。性格は大人びていて、大学生の時始めた会社が大きくなって、今やrichな社長さんだ。
「お!例の男?なんて連絡来たの?」
「えっと...『薫さんと行きたい素敵なBARを見つけました。予定が空いてたらぜひ今度一緒に行きませんか?』だって!」
「きゃー!めちゃくちゃ高級そうじゃない!あなたも玉の輿に乗れそうね!」
確かにいい人だ。でもなんか怪しいというか、ほんとに私と同じ大学だったのか怪しいことが度々ある。
仕事を終え、帰宅していた。自宅までは、電車で15分程移動し、そこから徒歩10分のマンションだった。道も暗く、歩いて帰るのは正直怖かったが、家賃の安さとその他の便利さでここに決めてしまった。
自宅の最寄り駅に着き、家まで早歩きで帰ろうとしていると、電話がかかってきた。『露橋 隼人』と書かれており、rich社長からの電話だった。
「お疲れ様!どうしたの?」
「あ、ごめん。忙しかった?」
「ううん、今帰ってるとこ。」
「そっか、ごめんね声が聞きたくてさ。」
外にいるのだろうか、車の音と誰かの声?が聞こえる。息も少し上がってる気がする。
「そっちは仕事中?外にいるっぽいけど。」
「ん?ああ、そうなんだよ。今から会食に向かうとこなんだ。」
「そうなんだね、頑張ってね!」
「うん、ありがとう。駅から道も暗いし気をつけてね。」
「え、うん...ありがとう!」
家の場所教えたことあったっけ?
マンションに着き、ポストを確認すると2通の手紙が入っていた。
部屋に持ち帰り、開封してみると1通には手紙、もう1通は写真が入っていた。
手紙には、『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』と書かれていた。
もう1通の写真は帰宅中の電車で撮られた写真、スーパーで買い物をしている写真、ユウキ先輩と同期と昼ごはんを食べている写真が入っていた。
私はユウキ先輩に連絡し、しっかりと鍵を施錠しているか確認し眠った。
深夜2時くらいか、突然インターホンが鳴った。マンションはオートロックのため入口でインターホンを鳴らすと画面がつき、誰が来たか確認することができる。
寝ぼけていたようだ...敏感になっていたのか画面が付いていなかったため、ただの勘違いの方だ。
翌朝電話の音で私は目を覚ました。ユウキ先輩からだ。
「薫!大丈夫?」
「大丈夫です。」
「今日は仕事休みなさい。警察にも連絡してね。わかった?」
「そうします。ご迷惑おかけしてすみません。」
「いいから...」
電話を切ったあと、警察に連絡し来てもらった。事情を話したが、パトロールを増やすと言われた。警察は出ていく時に『戸締りだけしっかりしてくださいね。』とだけ言われた。
日が落ちる前に写真とは別のスーパーに向かい、マンションに戻ってきた。ポストを確認すると1通の手紙が入っていた。
部屋に持ち帰り開封すると、『お前みたいな誰にでも色目使うクズ女はさっさと死ね。』と書かれていた。ゴミ袋に手紙をまとめて、マンションの外にあるゴミ捨て場に捨てた。もう一度ポストを見てみると、また1通の手紙が入っていた。
すぐに部屋に戻り、覗き込むように開封した。3枚の写真が入っており、どの写真も外から部屋を撮られていた。
すぐに私はユウキ先輩に電話をした。
「1回その写真をビデオ通話で見せてもらってもいい?」
「わかりました。」
「ちょっと待って...薫!今すぐ窓の鍵閉まってるか確認して!」
「え?は...はい!」
鍵は閉まっている。
「あの...なんで?」
「その写真...多分ベランダから撮られてる。薫が住んでるの7階だよね?その部屋をここまで鮮明に、この高さで撮れる場所ってないのよ。だからベランダだと思って。」
ここで私はあることに気が付きました。電話を繋いだまま走ってゴミ捨て場に向かい、手紙と写真が入っていた封筒を取り出した。
「うわ...」
「薫?どうしたの?」
「手紙が入ってる封筒には切手が貼られてるのに、写真が入っていた封筒には貼られてない。」
「薫...部屋の鍵って...」
走って戻り、ドアを開けた。玄関、入ってすぐのキッチンは変わってない。一気に早まった心拍数が落ち着くのを感じる。
しっかりとドアの鍵を閉め、リビングに向かう。疲れた。リビングのすぐ隣に寝室があり、扉を開けた。
そこにはスーツを着て、洗濯したての私の下着を握りしめた男が立っていた。私の記憶は押し倒されたとこまで残っている.........
後日、薫と面識のある1人の男性と面識のない無職の男性、そして会社の同僚だった女性が逮捕された。
面識のない無職の男性は薫の隣の部屋に住んでいた。両親の金を使い、薫の会社の同僚から帰宅時間などの情報を買っていた。
私の遺体は身体中傷だらけで抵抗した跡が見られ、乱暴され殺されたことが報道された。
明日は私が入社して初の自分で取った大きな案件の会議だった。自宅には明日の会議のために準備された資料が多く散らかっていた。