悲惨な未来にさせないために
一話更新
レジナルドとアデラは、リーフとの食事会を終え宿に戻る。久しぶりに会った友人と色々話し、心から楽しんだアデラと対象的に、レジナルドは生じた疑惑を悟られないよう振る舞っていた。
幸い、彼女たちに悟られることはなく、まずは一安心といったところだろう。
部屋に戻るとロニだけでなくシルトも部屋に居た。話を聞くと、シルトがロニに魔力のコントロール方法について教えていたとの事。
人間の情緒には疎いシルトだが、剣乙女の力の扱い方をはじめとする技量は群を抜いている。実力、才能、共に申し分ない彼女の教えに、素人同然のロニは短い時間でも手応えを感じており、目をキラキラさせてレジナルドたちに報告する。
そんな彼女をアデラは妹に接するるかのように、凄い、偉いと褒めまくる。微笑ましい光景を横目に、レジナルドはカイトたちが居ない事が気になり、シルトへ声をかけた。
「シルト、カイトたちは?」
「ん、部屋にいる。ふたりきりした」
彼女がそんな気の遣い方をするなんて、と驚くレジナルドだが、シルトがじっとアデラを見つめ、それに気づいた彼女がにこやかな笑みを浮かべれば、仕掛け人が誰かを察するのは容易い。
レジナルドとカイトは知らないが、リーフとの待ち合わせに出かける前に、アデラとサリーナはこっそり女同士の会話をしている。
一歩二歩どころかはるか先の関係に進んでいるアデラに、サリーナが『いろいろと』聞きたくなるのも当然だろう。
長年の思い人であるカイトと結婚したにもかかわらず、未だに触れるだけのキスしかしたことがない。それでも原作ゲームよりは進展しているし、なにより結婚済みという点が大きい。
彼女たちが関係を進展させてはならない理由はどこにもないのだから、二人の気持ち次第と言える。
後々で知る事になるのだが、シルトのお陰で出来たこの二人きりの時間で『さわりあいっこ』をした。具体的にナニをしたのかは、カイトとサリーナだけが知る事である。
「そうか……。部屋に戻る時はノックをするんだぞ?」
「わかった。レジナルドたちが帰ってきたから戻ろうと思っていたから、そうする」
「おやすみなさい、シルトちゃん」
「おやすみなさい、シルトさん」
「ん、おやすみ」
すみやかに部屋を出て行くシルトを見送り、レジナルドたちは就寝の準備をする。身を清め、寝間着に着替えた彼らは、それぞれのベッドへ入る。
ポーション作成だけでなく、操作の練習をした披露があったようで、ロニは直ぐに寝息を立てはじめる。昨晩の営みを隣室に聞かれてしまった恥ずかしさがあり、アデラは自分のベッドで大人しくしていた。
せめて一緒に寝よう、と思わないのは、傍にいたら我慢できる自信がないからだったりする。少なくともロニが同室にいる時にするのを、今後は止めておこうと今更ながら反省をした彼女も、ロニと同様に眠りにつく。
そのためレジナルドはゆっくりと思案にふけることができた。
(デミシが原作どおり催眠で多くの人を弄んでいるのなら、彼の家には違法な道具がたくさんあるはずだ。それを王都の騎士団に知らせることができれば、牢屋送りにできるはず)
原作ゲームで、カイトがデミシの魔の手からサリーナを救い出す、もしくは事前に防いだ場合、彼のイベントは騎士団に違法道具所持の罪に問われ、逮捕される形で結末を迎える。
騎士団の捜査で、自宅から証拠が押収されることとなり、彼は地下牢で刑に服するのだ。芋づる式で様々な悪事が露呈し、デミシはゲームクリアに至るまで釈放されることもない。
原作とおりになるのなら、同じ結末に至らせることで、以降の安全を保証できる。であれば自宅に証拠があるという原作知識を使わない手は無いだろう。
(デミシの家を見つける。証拠を見つけて、騎士団に密告。これが最善手……のはずだ。アデラにも協力して貰えると助かるけど、説明の仕方がなぁ……)
何故デミシが催眠の使い手だと知っているのか? リーフが本当に催眠の影響下にあるのか? 問われて返答に困るものはいくらでもある。
それでも知ってしまったのなら、レジナルドは手を打っておきたい。リーフが辛い目にあえば、アデラが悲しむのは明らかなのだから。
もしリーフが原作でデミシの被害者の一人であったのなら。アデラのように、ロニのように、暗い未来から逃れ幸せな日々を送れるようになるのなら、それ以上に良い事はないと思う。
(どんどん欲張りになってる気がするな……。最初はカイトとサリーナが幸せになってくれれば良いと思っていたのに、今は自分とアデラ、それにロニまで含んでいるなんて)
レジナルドはたった数日で、自分の中でアデラの存在が大きくなっているという自覚があった。
彼女が喜んでくれるなら、自分も嬉しい。幸せにしてやりたい、だれにも渡したくないと、強く思う。
彼女がロニの幸せを望んでいるのは明らかで。であればレジナルドも最善を尽くしてやりたいと思うのだ。
「アデラの顔をを曇らせはしないぞ、デミシ……」
レストランでリーフと語り合うアデラの笑顔を思い浮かべるレジナルドは、必ずデミシの裏の顔を暴き出してやろうと決意するのだった。




