結ばれる夜
一話更新
買い物を終え宿に戻ったレジナルドたちは、食堂で夕食を食べた。王都を歩いた感想を言い合いながらの食事は楽しく、あっという間に時間が経ってしまう。
一時的に男女で別れた一行は、温かな湯で濡らしたタオルで身体を清め、それぞれが就寝する部屋へと戻る。
はしゃぎすぎたのと疲労が合わさり、ロニはベッドで横になるなりスヤスヤと寝息を立て始める。安らかな寝顔は彼女が心を許している証。
彼女を家に送り届けるまでのあいだに少しでも心の傷が癒えて欲しいと願うばかりだ。
「ロニちゃん。ぐっすり寝てるわね」
「長い間辛い目にあっていたんだ。安心して眠れなかったとしてもおかしくない」
「……そうね……」
関所で極めて冷静に立ち回ったアデラだが、やはり内心では怖くて仕方が無かった。好きでもない相手に乱暴されるかもしれない恐怖は、簡単に言葉で言い表す事が出来ない。
もしアシホル一派の中にロニの外見を好む者がいたら、彼女はもっと酷い目にあっていただろう。そうでなくとも彼らの気が変わったりしたらと、不安は常にあり心に重圧がかかっていたはずだ。
「早く家に送り届けてやろう。きっとご両親も心配しているはずだからね」
「ええ。なにかアテはあるの?」
「ロニさんの話を聞くに、彼女は関所の責任者が統治していた領民だと思う。あれだけの醜態は簡単に揉み消せないだろうし、なんらかの罰が下るはずだ」
原作では平穏を取り戻した関所の兵士から、前責任者を含めた素行不良の兵士たちは、まとめて鉱山送りになったと聞くことができる。
原作と状況は違えど、彼らが好き放題していたのは同じ。確証はないが、近しい罰はあってしかるべきだとレジナルドは考えている。
「だから少し時間をおいてから処罰のくだった貴族を調べるつもりだよ。もしかすると調べるまでもなく、どこの誰ぐらいはわかるかもしれないけどね」
王都でも噂になるほどの悪事を働く貴族が罰を受ければ、ざまぁみろとばかりにその話は一気に広まるだろう。そして家名さえわかってしまえば、どこの領地を治めていたかを調べることなど容易な事だ。
「なら暫くは待ちってことね。カイトの修行をかねて私たちはあちこち行くでしょ? その時はロニちゃんも連れて行くわよね」
「ずっと宿で留守番って訳にもいかないだろうし、連れて行くしかないよなぁ。俺たちの目の届かないところで剣乙女だってバレて、連れ去られたりしたら大変だし」
希少な剣乙女。それも契約者が居ないとくれば、契約したいと言う者は後を絶たないだろう。アシホルのように強引な真似をしてくる者が居ても何らおかしくない。
剣乙女に覚醒したアデラも右手の甲の紋章を隠すため、外では指ぬきの薄い手袋を身に着けていた。
契約済みの剣乙女が契約相手に一途で、相手を変えることは非常に稀だと知っていても、自分のが相応しいと口説く者がいる。警戒するに越したことはないだろう。
「レジナルドが同じ考えで良かったわ。留守番なんてさせられないもの。……なによ、ニコニコして」
「面倒見が良いと思ってね。本当の姉妹みたいだ」
「どうにも放っておけないのよ。剣乙女になったからかしら……本当に他人の気がしなくて。剣乙女って同族意識が強いのかしら」
自分の感情だが、アデラはいまいち把握しきれていない。しかし人から剣乙女へ覚醒し、心の在りように変化があったのは自覚している。
攫われる前には感じなかったシルトへの親近感を覚え、苦境のロニを見過ごせず何とかしてあげたいと思う気持ちを抱く。
ロニに関しては人として放っておけないものだが、自分でも驚くぐらい甲斐甲斐しく世話をしたくなってしまう。
「どうなんだろう……聞いたことがないな。他に何か変化はあるのか?」
「あるけど、これは剣乙女とあんまり関係ないかも。……それも知りたい?」
「それは勿論、っ!?」
ベッドに腰掛けるレジナルドにアデラの顔が近づき、笑みが艷やかなものに変わる。反射的にのけ反った彼の両肩を掴んだ彼女は、勢い良くベッドに押し倒す。
馬乗りになった彼女のワンピースのスカートがまくれ、その奥が見えてしまうが、レジナルドの視線はアデラの顔に注がれている。
興奮で頬を紅潮させ、心から愛しい人を見ているのだと誰もが察するであろう熱視線を注ぐアデラから、目をそらせなかった。
「レジナルドがもっともっと好きになったわ。助けに来てくれた。命懸けで戦ってくれた。剣乙女になっても受け入れてくれた。そんな貴方が愛しくて愛しくて仕方なくなっちゃった……♡」
うっとりとした表情でアデラはレジナルドの頬に指を這わせる。前屈みになった彼女の豊満な谷間が自然と視界に入れば、村で彼女に触れた事とその柔らかさを思い出してしまい、一部に血流が集まってしまう。
「アデラは俺の奥さんだからな。当然のことをしただけ、んむぅっ!?」
臀部で夫の滾りを察したアデラが、覆いかぶさり唇を奪う。あまりにも唐突なキスにレジナルドは目を見開き、更に口内へ入ってくる舌に一方的に翻弄されるのみ。
しかしアデラからすれば突然でもなんでもない。レジナルドには王都までお預けなどと余裕ぶっていたが、本音では彼女の方が早く心身共に夫婦になりたがっていた。
剣乙女となり、己を武器にし、全てを預ける愛しい人と繋がりたいという思いは、アデラの建前と理性を根こそぎ吹っ飛ばし、彼女を獣ーー性獣へと変える。
「ぷはっ、あ、アデラ。いったん落ち着こう。シワにならないように服を脱いでから、おふ……っ」
「私は冷静よ、大丈夫。貴方がいっぱい気持ちよくなれるようにするから……♡ だから大人しくして。身を任せてくれればいいから……♡」
「れ、冷静じゃない人の台詞ーっ!」
しかし口であれこれ言いつつも満更でもないレジナルドは、そのままアデラの大いなる愛を受け入れる事を選ぶのだった。
苦難を経て結ばれましたとさ。




