コーディネートを楽しむ彼女たち
一話更新
冒険者ギルドから宿に戻ったレジナルドたちは、休憩して顔色の良くなったロニを連れ、服屋を訪れる。
彼女のボサボサだった頭はしっかり洗い、毛櫛ですいてあるため不潔感はなく、アデラと並べば大きい衣服も姉のお下がりを着ているように見える。
店の店員は姉が妹に新しい服を買ってあげるために来店したのだと思い、にこやかに近づいてきた。
「いらっしゃいまませ。どんな服をお探しでしょうか」
「シンプルかつ可愛い系のデザインがあれば。服だけじゃなくて小物も合わせようとも思ってて」
「あ、あの、服だけじゃ……?」
ハキハキと対応するアデラと、話が違うんですけど?! と言いたげだが、初めての王都の服屋にある色とりどりの衣服が気になって仕方が無いというロニ。
彼女は剣乙女だが、普通に育った女の子でもある。宿では遠慮していたが、やはり実物が前に並ぶと興味をひかれずにはいられない。
誘惑にあらがっているのが丸わかりな様子を見たアデラと店員の視線が交差し、彼女たちが小さく頷き合う。
「せっかくだし服と一緒き見てみましょう? 見るだけならお金も必要ないし。ですよね?」
「はい。好きなだけご覧ください。多くの物を見ておくのは、後の参考になると思います」
「あ、はい……。見るだけなら……」
(アデラのいいようにされている……)
彼女たちのやり取りを眺めているレジナルドは、最終的に小物も買うんだろうと予測を立てる。
見るだけ見るだけ、試着するだけ試着するだけ、一個だけ一個だけ、といった感じで、彼の思った通りになるのを、この時のロニは知らない。
アデラとロニとは別に、サリーナとシルトも二人で店内を見て回っていた。村よりもずっとおしゃれな衣服が並ぶ店内にサリーナも興奮が隠しきれない一方、シルトはあまり興味なさげだ。
覚醒した時に着ていた白いワンピースと下着は、原初の剣乙女の力の一部であり、ほとんど汚れない特別仕様。彼女の意思ひとつにより一瞬で浄化されるため、着替えいらずと一同は説明を受けている。
まだおしゃれを楽しむ情緒が育っていないシルトに、サリーナが服を持ってきては身体に当てる。
「シルトちゃんには何色が似合うかな」
「……白。白がいい」
「白も良いけど他の色も似合うと思うの。バレッタとか、リボンとか、アクセントにどうかな?」
「……原色じゃなければ。……これとかあれとか」
「やっぱり白が混ざったのがいいんだ……。うーん、アイボリー、水色……あ、すみませーん! 白系統の服を色々見たいんですけど」
「かしこまりました。どうぞ、こちらへ」
「ありがとうございます。シルトちゃん、こっちこっち」
「……服も見るの? これでいいのに」
「まぁまぁ。試着したら気にいるのがあるかもしれないし」
サリーナに店の奥へ連行されていくシルト。彼女が着せ替え人形になるのは、レジナルドだけでなくカイトにも予想がついた。取り残された二人は顔を見合わせ苦笑いを浮かべる。
「どうする? きっと長い買い物になるぜ」
「勝手に離れる訳にもいかないでしょ。そんな事をしたら後が恐ろしそうだ」
「それはまぁ、確かに……あ、俺呼ばれた。行ってくるわ」
カイトの名前を呼びながら手を振るサリーナの元へ向かう友の背中を眺めるレジナルドは、自分も呼ばれるのではと思ったが、アデラはロニのコーディネートに集中しているようで声は掛からない。
押しの強いアデラらしいなと思い、レジナルドは思案にふける。
(原作では服屋のイベントは無かったはず……。店員も女性ばかりのようだし、ここは比較的安全そうだな)
冒険者ギルドの他にも王都には気をつけなくてはならない店ーー寝取られイベントが発生するところがある。
異世界の定番施設である冒険者ギルドをはじめ、RPGゲームではおなじみの武器防具屋、レストラン、病院などなど、異なる間男による豊富なシチュエーションがあり、寝取られ好きなプレイヤーを喜ばせた。
もっともそれらのイベントは、プレイヤーがパーティメンバーと別行動を選択し、サリーナをひとりにしなければ発生しない。
武器防具屋のオヤジしかり、レストランのチャラ男しかり、剣乙女を連れているカイトが傍にいると下心を抱いても実行に移さない者が多数派だ。それだけ剣乙女の力は強いと、一般市民にも認知されているのだろう。
男主人公の成人向けゲームなだけあり、メインヒロインのサリーナ以外ともお楽しみシーンはいくつもある。こちらは彼女を連れていると発生しない場合が多く、スチル回収のためにはサリーナと別行動する必要があった。
なのでエロスチル回収に勤しんでいると、いつの間にかサリーナが間男にイタズラされていたり、肉体関係におよんでいたりする場合が多々ある。プレイヤーに浮ついた心を持つのは良くないと、厳しく教えてくれる仕様となっていた。
(しかしプレイヤーの介入がない現実なら、カイトは意味もなく単独行動なんてしないはずだ。サリーナさんだけじゃなく、アデラやシルトにも町に出る時はひとりじゃなくて誰かと一緒に行くよう頼んでおこう)
それがこの平和な日常を守る事に繋がるのだから。
「じゃーん、どう? 我ながらとっても可愛くなったと思うわ」
「……あ、あの、どうでしょうか……?」
腰の後ろに大きなリボンのついたワンピースと花を象るヘアピンを身に着け、頬を赤くしつつも期待を含んだ眼差しを向けてくるロニと、彼女の両肩に手をおいて得意げに胸を張るアデラに、レジナルドが微笑んだ。
「とても似合ってる。可愛いよ」
「! ……あの、おにーさん……ありがとう、ございますぅ」
ストレートな賛辞にロニは真っ赤になり俯いてしまう。
「でしょ〜っ! やっぱりロニちゃん逸材だったわぁ。次は私の番だから、レジナルドはこっち!」
「わかったって。参考になる感想が言えればいいけど」
「知りたいのは好みね。これからはレジナルドの好きな服もたまには着てあげる。ロニちゃんの意見も欲しいから、一緒によろしくね」
「わかりました……! 意見、いいます……!」
次は私の番、とばかりにアデラの着せ替えショーが始まる。スタイル抜群の彼女は何を着ても似合うだけでなく、ロニがキラキラした目線を送るほどに鮮烈で美しい。
(凄いなぁ……。綺麗で、優しくて……こんな人に、私もなりたいな……)
理想のオトナの女性像がアデラとなったロニは、彼女に憧れを抱き、助けてくれたレジナルド同様の信頼を寄せるようになるのだった。
買い物タイムで仲を深める女性陣




