由比ヶ浜に住まう理想主義者
私はありとあらゆる願いを叶える者
午前2時、由比ヶ浜の夜に現れる齢13の少女
ガラスのように透き通る煙水晶の瞳
凛々しい瞳は他者の全てを見抜く
白のフリルワンピース、それに大きめの麦わら帽子
近付くとほのかにアンバーの香りがする
それを或る人は神と呼び、また或る人は悪魔と呼ぶ
善悪もなく、ただ他者の望むものを叶えるだけの存在
叶った後のことは何も責任を負わない
それが貴方の願いであるから
顛末を嗤う
愚かな人間を愛撫してやり、根絶丁寧に棄ててあげる
愉快適悦
何分、全て自分のせいであると認めない
痴呆症
自分が何者でもないことを理解していないのだ
本末転倒
私は死を知りたい
死にゆく者を眺めていたい
眺めながら自慰をして恍惚を味わっていたい
ろくでもない性癖
いや、性癖というより性格なのだ
どうしようもない人間に与えられた人ならざる能力
この能力がなければとうの昔に死んでいただろう
しかし、与えられた能力には代償がある
決して自分の願いは叶わないのだ
愛を願えば願うほど遠ざかる
君は私に何を求める?
何も求められない。愛想尽かれているからだ
私は求められない限りただの屍に過ぎない
何もない
恋をしても絶対に叶わないのだ
愛されることも決してない
愛されてはならない
私は全て傷付けるだけである
死んでいるから死ぬこともできない
どうすればいい? どうにもできない
漆黒の海に佇みながら、悩める人間を誘惑に陥れるだけ……