異世界転生『 チ キ ン 』
――その日彼らは、人生を変える出会いがあった。
さて。オレの話をするとしよう。
平たく言ってオレは、享年魔法使いのチェリーボーイ、俗にいう社畜だ。
分かる奴だけ泣いてくれればそれで良い。死因――は、そうだな。
二股、浮気、キープ。…………そして、美人局のヤクザ。
強いて言うなら、初めて本気になった火遊びだったんだそうだ。
知るかよ、だったらオレは何でチェリーボーイだったんだ?
そう、爆死さ。被弾でも良い。知らなかったのは、オレだけさ。
そして気が付いたら、此処に居た。はっきりといつからかはカウントしてない。
というか、日付を確認する物がココには無いんだ。何せ見渡す限りの森だ。
そしてココにはオレの故郷では見た事も無い敵が、怪物が。そう、魔物がいた。
そしてオレは気付いたのさ。これは異世界転生だと。俗に云う剣と魔法の世界に流れ着いたんだってな。
何、何故その組み合わせなんだって?さて、多分オレ達の故郷じゃ遠い昔、過去の物語にしか出てこないからじゃないか?どうせ、もう戻れない場所の話だ。
分かるか小僧。オレの味わった恐怖を、苦悩を。世界に対する嘆きを。
オレは君よりもずっと、この世の理不尽を嘆く資格があると思うぜ。
「分かった分かった。先に君の質問に答えよう。何が聞きたい?」
――じゃあまず、あんた何者だよ?
「今言った通りの者だ。それ以上が聞きたいか?
オレも絶対、お前より切実に聞きたい。」
――俺の知っている常識の中じゃ、あんたの事を化け物って言うんだけどな?
「オレの知ってる世界じゃ、食べ物って言うな。」
――???? え?…………え?
「おいおい、ちゃんと見ろよ。現実逃避したくなる気持ちも分かるがな。
この首から斬り落とされた様な頭部、両手の様な手羽先に、全身の羽を毟られた様なつるっつるの玉肌だ。腿肉はあっても足は無い。
どっからどう見ても、内臓を「中抜き」した「丸鳥」だろう?」
――ん。……んん。ま、まあ確かに。見た目は間違いないよね。
「そうだろ?川で水を飲もうとした時のオレの戦慄を想像してくれよ。」
――いや。正直理解したくないかな。
「はっきり言って、理解が追い付いた時の絶望感はヤバいぜ……。
だがまあこの体にも利点はある。フォークやナイフなんかの食卓に合っておかしくない小物は何処かからか取り出せるしな。」
――えっと。その煙管は、食器じゃないよな?
「ん?勿論。というかオレが取り出せるものって食器限定じゃ無いぞ。
序でに言うと、この煙管も煙草じゃなくてハーブの様だな。
どんな気分になりたいかで好きな香りを何となく選べるんだ。」
――そ、そうか。ん?じゃあまさかアンタ、食事が出来るのか?
「ああ出来る。と言っても必須じゃないみたいだ。
水さえ飲んでれば普段は日向ぼっこで空腹感は抜ける。それに夜は普通に眠くなるから多分生きているのは間違いないな。」
――ぇえ……。本日一番の驚きだよ……。
まあ、この身体は今でも不思議だらけさ。
それで少年、アンタは何故この森に来た?自殺にしてはちぃと人里から離れ過ぎているしな。本当は他に何かあったんだろ。
ああ勿論何も分からんよ。だがそれがどうした。
何、自分には何も無い?その有様でか?いやいや適当じゃねぇよ、オレなんて首も内臓も、オスかメスかを確かめる手段だって無い。
そもそもオレはどうやって心臓が無いのにこの、熱い血潮を維持してるんだ?
首から上が無いのにどうやって喋って、どうやって物を考えているんだ?
いや、だってそれは反則とか言われてもなぁ。アンタがオレの立場だったら絶対知りたくなるだろう?
アンタの悩みってそもそもオレより深刻かい?
お、おう。ゴメン、そこまで膝を折られると当事者も傷付くんだ。だから、ホラ悪かったって。頭を上げて、一緒にこれからの事を考えようじゃねぇか。
……ふむ、お家騒動か。で、妾腹だから命狙われてると。じゃあ名前捨てて平民として生きるのは無しか?いやいやホラ、この森で食料は何とかなるじゃん。
なるよ?何なら教えてやっても良いぜ。ただ、その場合な、オレもちょ~~と、人里に行きたいんだけど……。そこまで拒否らんでも。
何だい?使い魔とかそういう魔法的なのは無いのかい。あ、ある?
じゃあ何がって、見た目?いざとなったらホラ、こうやって両手両足?縛って肩に担がれりゃ良いじゃん。
そういや君魔法って使えるの?オレが今使えるのと違う?
あ、うん。魔術ってそんな感じで火を吹くのね。じゃあこんな感じに小道具で着火とか……。お、おう。そんなに。魔力の間の字も無い?
えっと、一応それ、油の一種で着火するライターって小道具かな。そだね。オレが知ってる小道具は幾つか出せるけど……。マジか、全部魔力無しか。
で。種族固有能力か、魔法になる、と。オレ本物の魔法使いになっちまったぃ。
まああれだ。アンタこの森で一人で暮らせるのか?一応オレはこの森でハントや家造りを試す程度には生活出来てるぜ。
アンタが自分を見つめ直す間生き延びるために、オレを使い魔にしてみないか?
◆◇◆◇◆◇◆
……そしてオレは少年と契約を結び、使い魔としての日々が始まった。
少年は時々オレを恐怖の眼差しで見る事がある点を除けば、概ね良好な、お互い助け合える関係を築けるようになっていた。
オレは狩猟のコツや料理の手際、水浴び程度でも風呂の楽しさを教え、しかし男同士の裸の付き合いは流石に遠慮というか抵抗があるらしい。
まあ別に男の裸に興味は無いのでその間は野生動物の警戒をして過ごした。
「ねぇ。その芳ばしい匂い何とかならないの?」
う~ん。前の時は半日何処かで寝たら治ったんだが。見た目的には少しパリパリする程度なんだよな。正直動くのにも支障無いし……。
「いや。野生動物とか寄って来るんじゃない?」
その辺は適当な草の汁を塗り付けておいたから大丈夫だぜ。
そうそう、洞窟だって干し肉作ってても大丈夫だろ。多分それと同じだ。
……しかしこの知識は前世には無かったよなぁ。やっぱりオイラ、アンデッドの類なんかねぇ。正直、この少年の鑑定魔術が未熟なだけって言うのが一番納得が行く仮説なのがどうもね。
おっと。焚火の火が小さくなって来てるか。
ま、子供の前で弱気は見せられんよなぁ。って、無い頭を掻いてどうすんだ。
取り敢えず現状の方針として、金に換えられそうな食料と薬草を拾っておいて、不審者が現れるか野外生活に少年が慣れるまでを目安にしとくか。
「ステータス、何て遊んでた頃が懐かしい……ぜ?」
『名前:未設定。種族:チキン。性別:チキン。
HP:49、MP:チキン、体力:チキン。
スキル:チキン武術LV5、チキン学多才LV∞、サバイバルLV3。
チート:【チキン】。』
チラリとオレは少年を見て振り返る。
『名前:マリアン(マイケル)。種族:ヒューマン。性別:女。
HP:29、MP:893、体力:13。
スキル:魔術LV3、武芸LV1、礼儀作法LV2、サバイバルLV1。』
おふこーす。オレは冷静。
そうか。そういや少年の使い魔になってから初めて試したのか。
これは少年の使い魔になった影響か、それとも魔術という概念を知った所為か。
森の小動物を見ても、ステータスの一言で確認出来るのはオレと少年だけ……。
もう一度マイケル少年のステータスを確認する。焚火に視線を戻す。もう一度。
……いやいやいや。レディの寝顔を三度見は失礼だぜ?
そしてオレは冷静に頭を巡らせた結果、結論付けた。
……そうか。厄ネタか。
考えて見れば、身分を証明するものの無い少年をお貴族様が追い回すというのも不自然だった。もしかしたら血統証明出来る何かがあるのかも知れない。
そりゃ風呂を一緒に入りたがりませんよね。相手男だし。
……よし。見なかった事にしよう。オレは自分の事で手一杯。
だってそうだよね。オレの雑過ぎるステータスを見ろよ。
MPチキン、体力チキンって何?
チキン武術はギリ分かる。だって我流で獲物倒すしか無かったもん。
でもチキン学多才LV∞は理解できねーわ。
もうこの際、抱える頭が切実に欲しいぜ。
◆◇◆◇◆◇◆
そして数日。名前呼び間違った。
「分かった分かった分かった、ステータスだよ。アンタも使ってたろ?
アンタと契約してからオレも使える様になったみたいだ。」
すっかりオレの扱いに慣れたマイケル少年ことマリアン嬢ちゃん曰く、自分は現国王の娘かも知れないらしい。母はこの小国の貴族で、誰の子かも分からない娘を産んだせいで最近まで自分と幽閉されていたのだとか。
ただ教育だけは塔に仕える侍女と母の教育のお陰でそれなりの教養は人と比べる機会こそ無いものの、身に付ける事が出来ていた。
しかししばらく前。この辺は少し嬢ちゃんの常識不足が災いして聞き出すのに苦労をしたが。
まとめるとこうだ。
国王が一月前後前。放蕩三昧の息子に愛想を尽かし廃嫡宣言、自分には娘が居た事を明かす。
現王妃が無理矢理婚姻を結んだ結果の皺寄せで城を出すしか無かった娘で、現王妃は教育能力の責任を取らされ、強引に息子共々失脚、幽閉。
結婚秒読みのまま追放同然に追い出された母の侍女が、どうも王の側近っぽい。
多分王は血統を証明する魔術を娘に施しており、自分の娘の話だと気付いたマリアンの祖父は大分前に現王妃に寝返り母と娘を幽閉していた裏切者。
慌てて我が子の殺害に踏み切るが侍女の機転により娘だけは脱出成功。
ぶっちゃけ母親と侍女は今どうなったか不明。
色々心細かった様で、わんわんと話の最中無きに泣かれたぜ。
つまりアレだ。暗殺者の派遣と王様の調査団は絶対動いているぞっと。
うん!迷子とか言ってられんな。絶対その内山狩りが入るから、その前に逃走経路とかを把握しないと。
しゃーない。少し危険度が上がるけど、森の小高い方で町の方角を探ってみますかね。ぜぇったいこのままじゃ詰むからな!
嬢ちゃんにその話をすると、少し悩んだ上で賛成した。現状生活が整うにつれ、本人も不安を感じ始めていたらしい。
それにLVの上昇もそろそろ頭打ちになって来た。LV上昇ペースが速いのかは分からないが、多分底辺というのは小動物相手にしか勝てない辺りで分かる。
暗殺者が来て一発詰みしない様に、今度は先ずあの猪から狩ってみよう。
なぁに、最初に戦うのはオレさ。
勝利を祈っててくれよな。
「いくぞ必殺の、ギロチン・ザ・チキン・サイ(鶏モモ斬首台)!」
おおっと、ふら付いてるふら付いてる。
おお?!スゲェな異世界の猪、筋肉と牙が膨らんで二足歩行しそうだ!
「だが意外に効いてるな!
ならば止めの、ホウル・ウィング・ヘッド・ハンティング(首狩り手羽)!!」
ううん、立ち上がった瞬間を狙って喉笛を切り飛ばしてやったぞ!やべぇぜオレのラリアット手羽!まるで刃物の様だ!
しかし思った以上に効果があったな、技名を叫びながらの攻撃って。魔法が精神力を体外に引き出す現象だって聞いて試したら、思った以上に強かった。
え?二足歩行する猪も牙が膨らむ猪も居ない?
ででで、でもこの猪、え?魔石?心臓の一部が結晶化していれば魔物?
「……これの事かい?」
……そうか。今まで見た中で一番デカいか。となると今迄討伐隊を見なかった理由が案外準備不足か死んだ扱いなのかな?ヘケケうへへ。
だだだ、大丈夫。だからそんなに強く叩くな、オレ骨無いんだぞ。
「あ!ううう腕が取れたぁ?!」
いやこの場合千切れたと言うべきか?いやいやとにかく拾わないとくっつく物もくっつく……。チャキーン。しゅばっ。くるくるくる~~~。ぱし。
「どどど、どうやらオレの手羽、着脱式らしいぜ?」
あ。力尽きたら生えた。
取り敢えず、一応思った以上に戦える事が分かったので、慎重に獲物を見定めながら嬢ちゃんと一緒にLVを上げながら丘を目指す。
オレ、LVが上がる毎に出来る幅が増えていくんだぜ。
後骨付き肉にするかどうかも選べるみたい。とは言え骨が付いて来るのはあくまで翼と脚部分。うん、食用として骨が残ってる部分なんだ。
「甘いぜ必殺の、ササミ・キャノン(胸中肉大砲)!」
オレはコートを開く変態じゃない!特撮ロボだ!
突き刺さる笹身はドリルの様に、二本では止まらず次々と突き刺さる。
だが如何に体力チキンと言えど。いや意外に無尽蔵にあるなとは思っているが、笹身の場合は息を止めていられる間だけばら撒けるらしい。肺は無いけどな?
今日の魔物は中々に手強い。だがお嬢ちゃんの電撃が遂にミノタウルスを倒し、オレ達は奴の胸肉と腹肉、そして手足肉を回収してその場を離れた。
魔石も意外な使い道が発覚した。それはオレの外付け体力だ。どうもこの石を地面に叩き付けると、オレが使った時だけ割れてMPとして吸収されるらしい。
今のオレのMPと体力はメーター式だ。黙ってても自動回復するが、チキンの歌やダンス等でチキンを強調し続けると回復速度が速まる。
これに気付いて以来、嬢ちゃんは魔石だけは絶対捨てないと言って聞かない。
だがまあ二人のLVは既に30近い。間違いなく異常だろう。
え?高台へ上るのにそこまで敵が沢山?いいかい、ぶっちゃけオレらには地図が無い。後は分かるな?
◆◇◆◇◆◇◆
絶対に森を出る方が簡単だった多分半月が経過して、オレ達は遂に辿り着いた。
――火の手、上がってるね。
「ああ。多分あれは城だな。
……心当たりはあるか?」
子供の足でそこまで遠くへ来れたとは思えない。丘の上から見た最初の景色は、落城寸前の城だった。
――そっちこそせめて旗とか分かんない?わたしじゃ無理だよ。
「いいかいレディ、鷹の眼はチキンの眼じゃ無いんだよ。」
あぁん?誰だ今、何も気にする必要は在りませんよお嬢様、等とテンプレな発言で背後に降り立った奴は。
そして驚愕の悲鳴、そんなに喋るチキンが珍しいか。
――あの、類似種族、いるの?
「オレが会いたい。」
うぅん、どうやら君の葛藤を待ってくれない様だよ嬢ちゃん。ホラ目の前の連中が構うこたぁねぇとオレ諸共殺そうと武器を構えてるんだ。
「攻撃は嬢ちゃんに任せた!
鉄壁の守り、オーロラ・チキン・ブレスト(極光鶏胸肉)ォ!!!」
つまり?ホログラム鶏胸肉シールドさ!フハハハ!見ろ!飛び道具では手も足も出なくて短剣で必死に足掻いておる!こちらは魔法でバリバリだがな!
とは言え効果時間は胸を張り続けていられる時間、流石にお嬢ちゃんでは全員を倒し切れなかったので、残りはオレの出番かな?
「さぁ平伏せ悪党ども!
スパイシー・チキン・リブズ・ボム(刺激的な鳥肋骨肉の爆発)ッ!!」
あ。爆発物持ってたのか連鎖爆破した。
最後に残った暗殺者君が腰を抜かしておる。
「まぁまぁ、そっちが諦めたなら悪いようにはしねぇよ。」
え?今何を食べさせたかって?チキン・リブ。そうそう、最後に君らを吹き飛ばした奴が、今君の体の中。
んん~~~~?聞こえんなぁ、心配しなくても三日三晩残るけどそれ以降は只の鶏肉さ(本当だとは言ってない)。
分かるだろ?胃袋が破裂したって致命傷じゃないぜ?そのうち死ぬだけで。今の戦況と王様の居場所を答えてくれたら自由にしていいさ。
君の腹の中にはオレの分身がいる訳だしな(何か出来るとは言ってない)。
ふむむ成る程。え?何者かって?そりゃお前、恋人同士の記念日に振られて捨てられた、鶏肉達の恨み辛みが籠った勿体無いお化けさ(適当)。
ぉおぅ、まさかリアルに膝から崩れ落ちるとは。さ、いくぞお嬢ちゃん。
見てやるな。あの日の鶏肉に謝罪してる時点で察して差し上げろ。
刺客達の持ち物からコンパス含めちょっとした私物と通過を没収したお陰で町へ行く準備は概ね整った。
子供の足でもたった一日で森を抜ける事が出来た辺り、予想以上に森の浅い部分で迷っていた様だ。
ここからは使い魔らしく、嬢ちゃんの肩に乗って国王軍の陣地を目指す。
というのも現状、とち狂った嬢ちゃんの祖父こと伯爵様は、王に元妻と娘の今を問われた際、自分を公的に親戚として優遇する事を条件に娘か妻のどちらか一方を差し出すと返答したらしい。
無論元々裏切者だった伯爵の対応に王様激怒し、解放されない妻子を王族として迎え入れて何の意味があると伯爵に無条件降伏を要求。
即座に自ら軍を率い、領主貴族達には他国の警戒を命じて伯爵領へ親征したのだという。ふむ、予想以上に冷静な王様だね。
いやいや、今迄王妃を排除出来なかったんだ、後ろ盾に他国がいるのは確実さ。
寝返るかも知れない貴族を集めるより日和見出来る口実を与えて自分達だけで解決するのは間違ってないよ。勝てる兵力が揃ってる時は特にな。
で。実際平地では勝って伯爵を籠城に追い込んだが、母親の現状は不明、と。
暗殺者達は、可能なら捕えて無理なら殺す様に言われてたらしい。
という訳で、君が父親の所に行って、身分が証明出来れば君の母さんは助かると思うぜ。何せ君が見つかったと王様が宣言した時点で、君の母親を人質にする意味が無くなる。
ん、それは違う。娘がいるから母親が大事なんだ、娘が死んでたら君の母さんを諦める方が王様としては正しい。
けど娘に免じて母親を理由に伯爵を助命する事だけは出来る。伯爵も助命を条件に母親を差し出せるという訳さ。
伯爵が逆らい続ける限り何処かで母親を諦めて城攻めする必要がある。君は王様が君の母さんを諦める前に、王様に会わなきゃいけない。
方針が決まったので森を降りて来た訳だが、生憎こちらに都合良く話は進まないご様子。王様の陣地が思ったより遠い。
いやまぁ。そんな事はどうでも良いんだ。
それ以上に今。オレ等は半眼で城を眺めるしか出来ないでいるんだ。
――城が落城しちゃった場合、どうなるの?
「そりゃ、伯爵を倒すしかないさ。」
そう。国王様は頑張ったんだ。とてもな。
脅迫に屈しなかった御父上は、どうやらオレ達が辿り着く前に城門の突破に成功してしまった。しかもたった今、門を見つけた目の前で。
――お母様は、どうなるの?
「国王軍が見つけるんなら無事さ。何せ一番大事なのが妻と娘の身柄なんだ。
乱暴狼藉だって絶対許可なんてしないさ。だって自分の妻子の扱いが分からないのに好き放題略奪させる訳が無い。」
そこでオレはお嬢ちゃんに城を見つめていた半眼をこちらに向けられた。
――伯爵はお母様をどうするの?
「さあ。ぶっちゃけ人質にして失敗した後だ。
盾にしても助からないからな。」
妻子の犠牲止む無しで攻め込んだんだ、むしろ差し出さなかったら楽には殺さんなのは間違いないよね。伯爵は初手を間違えたんだよ。
――鶏肉さん鶏肉さん。今からお母様を助けに突入します。良いですね?
オゥケイ、分かってる。皆まで言うな。
「落ちるなよ嬢ちゃん!今からオレ達は、奇跡を起こす魔法使いだ!」
ひゃははははは!!!やっべぇ、超絶間に合わねぇかも知んねぇ!!
嬢ちゃんの両膝を担ぎ上げ、オレは全力で城門に向けて走り出した。
「ぅうおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!煌めけオレの黄金の足!
ゴールデン・ダッシュ・チキン・サイ(疾走する金色の鶏腿肉)ッ!!」
超振動の様に上下する鶏モモが金色に輝き、自分の倍以上の身長がある少女を背に担いだ丸鶏が土煙を上げて城門に迫れば、気付いた兵士達は誰もが目を擦って二度見しながらオレ達を見送る。
凄いよオイラ達、見る者全てに正気を疑わせる幻惑魔術付きだね!
「ちょっと少女~~~?羞恥心に顔赤くしてる場合じゃなくってよ~?」
可愛らしくプルプル震えたって駄目だからね~。兵士達が我を忘れてくれてる内に目的地を探さないとっと、意外と小さいなこの城塞。
只今制圧中の城壁は放置するとして、問題は中央の城郭だ。正直言って大きめのホテル程度で城としては小規模?いや中世基準なら中堅かな?
走りながら軽く迷っている内に少し小高い程度の正面玄関はあっさり破壊され、すかさず人波の背中を駆け上って中に飛び込む。
少し嬢ちゃんの頭が扉の縁を掠って悲鳴が上がったけど、当たらなかった様だし簡便な?ま、ま、ま。正直他の出入口はちょっと無理だし。
おおっと其処彼処で悲鳴が上がり始めたぞ?化け物扱いとは失礼な。
「オレは世界最強にイカしたクリーチャーだぜぇぇぇ!!!
はっはぁ!当たらん当たらん、我は最っ高に素早いのだぁ!!」
こいつら毛皮に包まってるお陰で嬢ちゃんの正体に気付いて無いな?ならば逆に好都合!必殺、侍女の隠れて良そうな部屋に避難!
「おぉっと、大人しくして貰おうかぁ。
もし逆らうって言うなら、オレをお前達に食わせる。」
悲鳴を上げようとしたんで近付く振りをして牽制!即座に侍女三名は口を塞ぐ!
「伯爵の娘とその侍女は何処だぁ、正直に答えないとお前の上の口から無尽蔵に増えるチキンが放り込まれるぜ。例えばこんな風にな!
アンリミテッド・チキン・ナゲット(無尽蔵の一口揚げ鶏肉)!!」
素晴らしい!我が胸の内からナゲットがポコポコとテーブルの上に山積みに!
あ、落ちたら汚いからこの辺でね。因みに純食用なので害はない!
ふむふむ、母親は上で侍女さんは地下牢ね。で、どうする?ぶっちゃけ君の母親はもうちょっと持つかもというか今なんつった?
ちょ!どうする嬢ちゃん、分かった任せろ!地下への扉は全部壊すぞ!ていうか既に開いてるじゃねぇか!
益々緊急性が増した地下階段を駆け下り、すると牢屋階に降りたところで数人の兵士達が驚いて振り返ったので出オチ殲滅させておく。
ぶっちゃけ閉所で出会った時点でこっちが奇襲する時間は十分だからね!
何せ一目見ただけで初見の相手はビビるプリティボディだから!
「さあ助けに来たぜ侍女のお姉さん!」
だから死に物狂いで飛び掛かる前に話を聞いてくれ!というかお嬢ちゃん今直ぐ説得プリーズ、え?高速回避中は無理?喋れない?しょうがねぇなぁ!
「へぶらくらっ!ぐぼら!」
へ、へへへ。尊い犠牲だぜ死にぞこないの癖によぉ。
ようやく止まってくれたかいやだからスタンプキック止めて。流石にそれは逃げるでしょ?ほらほら先ずはお嬢ちゃんの話を聞いてよ。
◆◇◆◇◆◇◆
てれりてってれ~れ~!仲間が一人増えたぞ!
凄いやヒール、お嬢ちゃんの回復魔法!そして我が一部達。餓死寸前の人がもう普通に歩けるようになっちゃうとは。そんな体で良くあそこまで暴れたよね。
いや、体力回復したんだから勘弁してくれ。オレは今からチキン・ダンスを踊るから君達は持って来た服に着替えるんだ。
実はさっき屋敷の侍女さんの方の部屋に駆け込んだ際、貰っておいたのさ!
で~れっれ、た~るら~りら。すったたたったら~(くぃ、くぃ)。
あ、駄目?魔石ある?しょうがないにゃあ、早速パリーン!おおお、漲る漲る。
さあ、準備は出来たかい?お姉さんそんな警戒しないで。
あ、出来ればお嬢ちゃんを背中に担いで頂けると。え?先に言え?
そいつぁ失敬。オイラ嬢ちゃん担いでいると使えない技があるんだ。
「後嬢ちゃんの母さんの居場所は三階って以外分かって無いから。
なんで手当たり次第行っきま~す!!」
ふはははは!反論は聞きませ~ン。さあ割と切羽詰まっているから急ぐぜ!
「狂い咲けオレの手羽!
デイジーチェーン・ウィング・ティップ(数珠繋ぎの手羽先)!!」
流石に十数個の手羽先カッターが回転する様は壮観だね。まるで城兵達がゴミの様だなんて言わないぜ!
むむ!あれは城内兵では無いな、王国軍か!
さては嬢ちゃんの正体に気付いたな!こっちだ、急ぐぞ!
んん?良い質問だお姉さん!我々が王様の元に駆け込むという事は、全部国王様に任せるという事だ。
だが王様は伯爵が母ちゃんを盾に取られたくらいじゃ手を緩められない。つまり追い詰められた伯爵は母ちゃんを殺す以外に嫌がらせが出来ない。
逆に言えば、王様が伯爵の前に到着して無ければ母ちゃんは未だ生きているかも知れない!であればワンチャンあると良いな!
あ、こら!ていうかお姉さんが先に助け出された理由も分かったでしょ?無駄に体力消耗しない!もうとっくに運を天に任せるしか無いんだから!
「邪魔はさせんぞ!
ミステリアス・チキン・レバー(神秘的な鶏肝臓)!」
すっとお仲間を脇に逃せば、次々と階段の脇へとお帰りはあちらです城兵君達!
階段で顔面を塞がれるという事は、我々を邪魔出来ないという事だ!
あ、怖い?でも嬢ちゃんは目開けちゃ駄目だよ。階段を先に上がろうね?
何かな保護者さん、言っておくけど教育場云々はこれでもそれなりに気を遣っていたのだよ。人手不足が割と限界なのは認めるがね。おっと。
壁に耳あり障子にメアリー、廊下の先から口論っぽい声が聞こえて来たぞ?
――この声、お母様!
ほぅほぅ!それは素晴らしい、最悪の事態は免れたという訳だ。それじゃあ張り切って感動の再会と行こうか!
「さあさあ其処退け敗残騎士諸君!
弾け飛べ、砂肝ガトリンクッ(微妙にネタ切れマシンガン)!!
からの!オーロラ・チキン・ブレスト(極光鶏胸肉)ォ!!!」
はぁ~~!はっはっは!良いぞお嬢、良く分かってる!そしてお姉さんも魔法を使えるなら協力お願いします!
「おっとさせぬわ!
ブリザード・ラッシュ・チキン・ナゲット(吹き荒ぶ一口揚げ鶏肉の殺到)!!」
秘技、剣を防げないなら手数で封じれば良いじゃない!
ふっふっふ、流石に疲れて来たが、邪魔者はこれで蹴散らした。
後はこの螺旋階段を昇り、親玉に追い付くのみよっっぅッッぅ!
「こ、こここ、股関節が、股関節が裂けたぁぁぁ~~~~ッ。」
――いや、飛ぼうよ。君普通に浮かべるでしょ。
あ。そうか、着脱。
裂けた丸鶏から離脱し、新しい丸鶏の体で飛び出して宙に浮かぶ。
いやコレ普通に疲れるからね?単にオレの固有魔法として古い身体を放出してるだけだから。いうて気軽に出来る程楽じゃないのよ。
ふよふよ浮かびながら螺旋階段を進み、しかしギリギリのところで追い付けずに屋上に逃げられる。
く、誤魔化しちゃいるが、流石に怪我と表面的な体力が回復しただけのお姉さんとお嬢を置いて先に進む気にはなれない。
「悪いな、君達を置いていけないんじゃない。
単純にさっきの痔が響いて未だちょっと速度が出ないんだ。」
ちょ、お姉さん無駄な体力使わないで?今未だ階段なんですよ?
思い付かなかったとは言えちょいと言い訳が下品だったかなと反省したぜ。
扉を開いて屋上に出ると、此方を振り向いてぎょっとした豪勢な服を着た初老の爺さんと、首元を爺さんの腕で抑えられた美女がいた。
どうやら先程下で蹴散らした連中で、伯爵に従っていた兵士達は全てなご様子。追加の増援が来るには暫しの時間がかかるだろう。つまり母親を救うとしたら今、この瞬間しかないだろう。
「ふはははは!見つけたぞ売国奴の悪党め!
さあ尋常にお縄につくが良い!」
伯爵は鶏肉から出たテンションの高い声に我に返ったか、お嬢さん似の美女の首を抱えながら小剣を突き付けてこちらを威嚇する。
『だ、黙れ化け物肉風情が!貴様に人の道理の何が分かる!』
「パイ乙の素晴らしさと美女の貴重さだ!」
背後を蹴撃が通り過ぎ、危うく挽肉になる危機を逃れながら伯爵から目を反らさない。決して漲る殺気を自制した背後を振り返りたくない訳では無いんだよ?
『あ、うん。そこ分かるのか。
……いや、そうか貴様!鶏肉に憑依した人間霊だな!悪霊たる貴様が善悪を語るなど片腹痛いわ!
まさか貴様、善人を語っておいて人質を見捨てはすまいな!』
むむぅ、何と冷静な考察。このまま有耶無耶の内に正義の裁きと称し人質を気にしない振りして殴り掛かろうと思ったのに。
――お母様を返して!
お嬢様の怒りの声も、伯爵が勝ち誇る勢いを増長するのみだ。
『ふはははは、そうか。ならお前が代わりに人質になると良い。
さすれば我が娘の命だけは助けてやっても良いぞ?』
「くはははははは!馬鹿め!もしお嬢さんが人質になればお前達親子全員を陛下が諦める理由になる事は既に懇切丁寧に解説済みだ!
お嬢さんを見捨てた時点でそこのお母様を罪人の娘として処罰するしか出来ない国王陛下の御立場も含めてな!」
『き、貴様!何という事を!』
ああ、お姉さんの視線がオレの命を狙い始めていてとても痛い!
お嬢さんが思わず冷静に宥めるくらいお姉さんがキレてるよ!
「そして貴様が娘に興味が無いのと同様、オレにちょっと欲しくなった人妻属性と寝取り趣味は無い!よって貴様を倒すのに何ら支障は無いという事だ!」
安心出来ないと叫ぶお母さん、大丈夫流石にお嬢さんの目が怖いから!
だが生憎オレの挑発はちょっと伯爵の心に響かなかったらしい。伯爵は空いた手で隠し持っていた黒い杖を使って黒い火の玉を飛ばした。
『馬鹿め!これでもワシは魔法使いとしては一流なのだ!
貴様らが手を出せぬうちに、一方的に焼き尽くしてくれる!』
「ふ!甘いぜオーロラ・チキン・ブレスト(極光鶏胸肉)ォ!!!」
なんと、と叫ぶ伯爵の声が心地良いぜ!
『お、おのれ!だがワシが最も得意とするのは闇魔法!
貴様に眠る恐怖心に、殺されるがいい!』
「ふははは!鶏肉に生まれ変わったオレに、今更恐怖心があるとでも!?」
勝ち誇りながらドサクサ紛れに他の二人を狙った、極光をすり抜ける黒い球体を全て一身で受け止めると。
(いくぞ必殺の、ギロチン・ザ・チキン・サイ(鶏モモ斬首台)!)
(平伏せ悪党ども!
スパイシー・チキン・リブズ・ボム(刺激的な鳥肋骨肉の爆発)ッ!!)
(アンリミテッド・チキン・ナゲット(無尽蔵の一口揚げ鶏肉)!!)
「ぐ、ぐぁあああああ!!!!!の、脳裏を羞恥心が木霊する~~~~ッッッッ!
や、止めろぉ!オレの、オレの理性よ、未だ目覚めるなぁ!!」
――あ。やっぱりあの叫びは恥ずかしかったんだ。
(狂い咲けオレの手羽!
デイジーチェーン・ウィング・ティップ(数珠繋ぎの手羽先)!!)
(邪魔はさせんぞ!ミステリアス・チキン・レバー(神秘的な鶏肝臓)!)
「お嬢ちゃんの冷静さが一番痛ぁいッッッッッ!!!!
あ、あかん。オレの中のチキンソウルが、真っ白に燃え尽きてる。そ、そうか。オレの全身を動かしていたのもまた、チキンソウルだったんだな……。
脳裏を木魂する魔法よりもキツイ一言に、既にオレは陸に上がった魚同然にビチビチのたうつしか出来ない。というか羞恥心が体内で弾け続けてる。
『ふ、ふふふふふふふふ。わ、我が孫ながら恐ろしい奴よ。
だがこれで貴様らを庇う盾も無くなった!だがワシは貴様らの攻撃を躊躇無く娘で防ぐぞ!』
微妙にグロッキーになって来たお母様の後ろで勝ち誇る伯爵に、お姉さんが下種めと罵っている。
一方で使い魔契約をしているお嬢さんが、未だオレに希望を信じる内心が、魔力パスを通して伝わって来る。
『さあ、耐えて見せよ我が最強の炎!闇魔法、フレアフロッ!!』
「うぉおおお!負けるなオレの黄金ソウル!
ドラゴン・ソウル・チキン・ホゥル(竜如き鉄心の丸鶏)ッ!!」
い、言えた!そして物凄い勢いで燃える、芳ばしいオレ!
『な!き、貴様!まだそれ程の羞恥心に耐えられるというのか!』
さては共感しているな伯爵ぅ!そしてオレの魂は未だ燃え尽きちゃいないぜ!
「躊躇うなお嬢ちゃん!君の母親もオレが守る!君が武器で、オレが盾だ!
ボディダブル・ドールズ・チキン・ハーツ(身代わり人形な鶏心臓肉)ぅ!!」
――分かった!ファイア・ボール!!
『躊躇無し?!ぐ、ぐああああ!く、くそ!本当に諸共焼きおった……!』
「ぎぃやああああ!」
――今の内にお母様を!
伯爵と一緒に炎に包まれた母親の炎が全てオレの体を焦がし、火傷に耐え切れずよろめく伯爵とは裏腹に思わず周りを見回す程に母親は元気だった。
慌てて侍女が母親と伯爵の間に割って入り、咄嗟に炎を飛ばした伯爵へ嬢ちゃんの追撃が侍女諸共吹き飛ばす。
「ほげろろろろおおおお!!!」
勿論伯爵以外のダメージは全てオレだ。母親に限らずお嬢ちゃんとお姉さんにもハツの魔法は余さず賭けてある。内側から弾けそうなほど痛い。
誰が見ても長く持ちそうにないオレの有り様に、お姉さんも急いで嬢ちゃんの元へと戻って来た。
そこへ屋上の事態に気付いた王国騎士達を引き連れた王様が、続々と現れて妻と娘の前に立ち塞がり、無事を確かめ合う。
『ぐぐぐ、おのれぇぇぇぇ………!
こうなれば、貴様ら諸共全てを焼き尽くしてくれる!』
「させるかジジイ!
デラックス・フェニックス・チキン・ホウル(豪華に不死鳥な丸鶏焼き)ッ!」
『な、何ぃ!ま、未だだぁッ!!サンシャインスキンヘッド!』
両手では止めきれぬ勢いに頭突きを添えて、闇の光が激しく頭部を中心に揺らめき額を焼く炎を圧し返す。だがその程度では止まれないぜ!
「弾けろオレの羞恥心!
咲き誇れレッド・チキン・シザード(赤く燃える鶏モミジ)!
打ち貫けクリムゾン・ミニ・ブレスト・フィレ(深紅に染まる鶏ササミ)!」
至近距離で放たれる無数の鶏肉の嵐が先程の炎を纏ったまま突き刺さり、必死で耐える伯爵を縁に追い詰め、止まらず宙へと突き飛ばす。当然体当たりをかましたオレも数階建ての中庭の上空にて漸く勢いが止まった。
『ききき、貴様、よくもぉ!』
「ジジイと心中なんて御免だぜ!
ブレスト・フィレ・キャノン(鶏胸肉大砲)!」
爺を地面に吹き飛ばす反動で宙を舞い、放物線を描いて屋上へと叩き付けられるオレ。ぱぁん!と物凄い良い音を響かせて、同時に中庭で凄い音が響く。
慌てて騎士の一人が屋上から庭を覗き込むと、振り向いて頭上で両腕を交差させながら首を横に振る。
むっちゃバラバラですとの一言は要らない。
というか今オレ死にそう。超死にそう。
――いや。多分死なないよ君。
躊躇無く魔石を直ぐ傍で叩き付けるお嬢ちゃんのお陰で、オレは感傷に浸る間も無く体を起こす。
「あ~、痛かった。あ、もう二個三個割ってくんない?
オイラ痛みが気持ち良くなる体質じゃないから。」
むしろ痛みに弱いのよね。こう、注射と歯医者は絶対駄目なの。
そうこう言っている内に、妻の無事を確認し、序でに娘が本物である事を証明し終えた王様が慎重な顔でオレの方を見て声をかける。
え?オレは一体何者かって?
思わずオレは嬢ちゃんと顔を見合わせて。
「「――それはオレ―私―達が一番知りたい――。」」
◆◇◆◇◆◇◆
この後凡そ十年の後に。
とある辺境の国で女王が即位する。
後にチキンランドと呼ばれる様になるその国は。
女王の傍らには常に使い魔の鶏肉が歩いていたと言われ。
女王と鶏肉はとても複雑な顔で当時の経緯を歴史書に残したと記録されている。
辛い事があってこのテンションでは連載作品を進められないと、勢いに任せて三時間、寝る前に完結せず翌日に持ち越し。つい興が乗って丸一日潰しながら完成。
勿論プロット等は無く、流石に鶏肉について調べながら進めるしか無く、時々正気に戻ってしまう事が多々。
楽しかったですけど正気に戻る時がとても辛い作品です。でした。
投稿しないと、何かに負けた気がするんだ!