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第16話(累計・第97話) クーリャ89:ゴブリンに襲われた村。絶対に許せないの!

「何か変ですわね。牧草地なのに、牛や羊が居ませんの」


 わたし達は、通行止めの橋を迂回すべく元の街道から北に分岐した道を進み、別の橋を渡った。

 そこから中間目的地のアエリアへと進む。


 しかし、途中にあった小さな村を通過する際に、違和感があった。

 放牧地なのに、一切羊や馬がいない。

 また、村の中心部に近づくのに、一切人の動きが見られない。

 夕日が徐々に沈む中、無人の村を進むわたし達。


「気配が周囲にありません。これは異常です。ここを急いで通過するのも手ですが、既に夕方です。夜間街道を進むのは危険ですし、一端村内を偵察して、ここでの野営を意見具申致します」


「クーリャ様。わたくしも違和感が多いですが、これ以上先に進むのは危険でございます。わたくしが先行偵察致しますので、一時停車を!」


 マスカーから、危険を感じるから迂闊に動くなとの意見がくる。

 また、後方の馬車からアデーレさんが偵察をしてくれるとの事だ。


 ……もしかしたら、ここもゴブリンに襲われたのかも。警戒してもしすぎじゃないわね。


「了解しました。では、一旦ここで停車。アデーレさんは偵察をお願いしますの。マスカーは周囲の警戒、他の皆もいつでも動ける準備をしながら待機です!」


 わたしは、皆に命令を送った。


「姫様。ここ、血の匂いがしますぅ。ですが、待ち伏せの気配はないかもですぅ」


 わたしの横に来て、鼻をひくひくさせて戦闘準備中のカティ。

 確かに妙な違和感がどんどん増してくる。


 ……村が静かすぎるの! 絶対おかしいの!


「皆様、銃の準備もお願いしますの。緊急時にはテストゥード号で敵を跳ね飛ばしながら逃げます!」


 テストゥード号、どうしてもわたしの運転が荒いのと戦闘になることが多いので、メインフレームを鋼製に換装している。

 また後ろの牽引馬車も魔力モーターが無い以外は、基本的にテストゥード号と同じ仕様になっているので、少々の荒事では大丈夫だ。


 ……敵しかいないのなら、アレぶっぱなすのも良いけど……。


 しばらくして偵察をしていたアデーレさんが帰ってきた。


「この村は既に襲われた跡でした。おそらくはゴブリンでしょう。血痕の乾き具合からして数日前。小さな血染めの足跡が残っていました。村人は、もう……」


 アデーレさんは、手遅れだったのが苦しそうな顔だ。

 そして周囲を見回っていたマスカーも同様な跡を見つけてきた。


「……そうですか。では、どうしましょうか? 今、ゴブリンが居なくて既に襲われた後なら、ここを再度襲う危険性は低いでしょう。夜行性で夜目が効くゴブリンに勝負を今から挑むのは危険過ぎます。今日は水も確保できます村跡で警戒しながら野営が正解でしょう。それに、……。亡くなっていらっしゃるなら弔ってあげて欲しいです……」


 魔法で視力を強化すると、村の建物に血痕が見えた。


 ……悲しいの。でも、ゴブリンの動きが大きすぎるかもなの。


「わたくしはクーリャ姫様の意見の同意です。現状の戦力で追撃は時間的にも難しいでしょう。やるにしても明日の日中です」


「同じくアデーレ殿に同意です。夜間戦闘はゴブリン相手には危険。それに悲惨な亡骸を放置したままには出来ません」


「戦闘に詳しくないわたくしですが、わたくしの知るゴブリンの習性からして、今この場所はしばらく安全と思います。明日以降の戦闘を考えれば、ここで準備をした方がよろしいでしょう」


「俺も無茶は辞めておいた方が良いと思うぞ。夜中動くのも危険だ」


 アデーレさん、マスカー、先生、ゲッツの大人組が動くべきではないと言う。


「クーリャ。アタイ、ゴブリンは絶対許せないけど、今から攻めても危ないよ」


「ボクの感知だと、悪意のあるものは周囲には居ないよ。今晩はここで待機だね」


 ダニエラ、エル君も待機を希望する。


「姫様、危ないのぉ!」


「ええ、カティ。わたくし、無茶は致しませんわ。全員意見一致で今日は、こちらに野営ですの。では、皆様作業を開始しますわ。マスカー、ゲッツはすいませんが埋葬をお願いします。アデーレさん、カティは警戒しながら夕食の準備を、先生とわたし達3人で就寝具やテントの準備をしましょう!」


「はい!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「どのくらいのゴブリンに襲われたのか、分かりましたか、マスカー?」


「足跡からして、20匹以上の集団だと思われます。また、傷跡から一体以上の大型種、ホブゴブリンクラスがいると予想されます」


「でしたら、集団のリーダー格が居ますわね、クーリャ様。複数の村がほぼ無抵抗で殲滅されている様子から知能が高い種、ゴブリンシャーマンもしくはキングやロードクラスが居てもおかしくはないです」


 モンスターに関しては一般的なファンタジーRPGと同じ世界観のこの世界。

 ゴブリンも上位種が存在して、それが群れを率いている場合がある。


 夕食を交代でしながら、わたし達は作戦会議をしている。

 マスカーによる犠牲者の損傷状態からの判断、更には先生による知識から、敵集団はかなり手ごわいものだと思われる。


「残された遺体ですが、成人男性が殆ど。女性や子供は少ないです。しかし、家屋内の残されている衣服などの数から、若い女性や子供は連れ去られた可能性が……」


 念の為に屋内偵察をしてきたアデーレさんから、聞きたくはないが予想された状況が知らされる。

 家畜達は、納屋の中で食い散らかされていた。

 もちろん、男性遺体にも多数の歯形が残されていた。


「既に襲われて数日、連れ去られた方が生きている可能性は微妙ですね。ですが……」


 わたしが、今後の事を言い出す前に先生達が苦笑しながら話し出した。


「このまま見捨てるのが出来るクーリャ様では無いですわね。では、皆様、ゴブリン討伐の策を練りましょうか」


「しょうがねぇなぁ。じゃあ、秘密兵器も早速使う準備しておくぜ」


「このマスカー。クーリャ姫様の命に従います!」


「まったく無茶言いますわね。ですが、義を見てせざるは勇無きなり! まだ生きている方がいるのなら救いに行くのも、ドワーフ戦士の生きざまです!」


 わたしが意見を言う前に、続々と戦闘準備をし始める皆。


「あ、ありがとう存じますぅ。絶対に勝てる勝負をしましょう。では、情報収集ですぅ。先生はご存じのゴブリンについての情報をお願い致します。アデーレさん、マスカーは周囲状況から敵の数や戦力、及び敵の本拠地についてお願いします。ダニエラ、エル君、わたくし達で作戦方針を決めましょう! カティ、皆様にお茶をお願いしますの!」


「はい!」


 ……わたし、とっても嬉しいの。わたしの思いを皆が大事にしてくれるんだもん。今度も絶対に完全勝利するの!


「なんと、ゴブリンの集団発生なのじゃ! これは放置できないのじゃが、どうするのじゃ? クーリャ殿はゴブリンスレイヤーでは無いのじゃ」


 大公国との国境周辺で暴れまわるゴブリン。

 このまま放置は出来ないクーリャちゃん。

 明日からのゴブリン殲滅作戦を、お待ちくださいませ、チエちゃん。


「秘密兵器もあるようじゃが、人質も居るかもしれぬ。どう攻めるか難しいのじゃぁ!」


 では、明日の更新をお楽しみに!


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